管理人の論考

五竜遠見尾根雪崩訴訟について

-大日岳事故訴訟の参考判例として-

2002.07.19

宗宮誠祐

六月のある日。

2000年春に発生した大日岳落事故に関する裁判がはじまり、その第一回口頭弁論において、ご家族による意見陳述が行なわれたということを、インターネットで知った。この意見陳述書などは、キーワード検索から拝読することが可能だった。文部科学省の事故報告書を、もう一度、読み返した。今月に入って判例時報で1989年春の「五竜遠見尾根雪崩訴訟」の判決文を見つけた。原告支援グループの編纂した裁判記録を読み返し、大日岳雪庇崩落事故の追悼集の案内をダウンロードした。

十三年前と二年前の春からの、これまで、今、そして、これから。

さまざまな思いを禁じ得ない。登山事故におけるいくつもの慟哭に立ち会った人間として。フリークライミグ教室を開催し高い注意義務を負う側として。岩場での死亡事故の救助活動に参加したことのあるフリークライマーとして。登山を生業とする誇り高き人たちの友人として。雪崩で遭難した会員の事故報告書と追悼集作成にかかわる社会人山岳会の会員として。バックカントリースノーボードを続ける愛好者として。ある山岳部訴訟の傍聴人として。沢登り事故裁判の元被告として。

本稿では、大日岳事故訴訟の参考判例であるところの、「五竜遠見尾根雪崩訴訟」、すなわち、長野県山岳総合センター主催の「冬の野外生活研修会」に講習生として参加した高校教諭(当時24才)が受講中に雪崩で遭難した事故につき、研修会の主催者である県に対して賠償請求が認められた訴訟を紹介する(判例時報1585号参照)。

五竜遠見尾根における雪崩事故概況とその後の経緯
今から約十三年前の1989年の春。3月17-19日の予定で、長野県山岳総合センター主催による高校生及び高校教諭を対象とした「冬の野外生活研修会」が企画され、講師5名の指導の元、高校生24名と引率教諭7名が参加した。この研修会は昭和61年から開催されており、この時が3回目であった。

研修会2日目の3月18日午後、五竜岳遠見尾根で、ワカンジキによる積雪斜面登高訓練中に、斜面上方からの雪崩により、第1班の7名の内、講師1名と講習を受けていた高校教諭4名が埋没し、そのうちの1名が死亡した。

事故後約一年八ヶ月後の1990年11月22日に、受講中に遭難した高校教諭の家族が、長野地方裁判所松本支部に、主催者の県に対して、主に「雪崩に関する調査、検討等を尽し、雪崩遭難を回避すべき義務」を怠ったとして、国家賠償法第1条に基づいて損害賠償請求訴訟を提訴した。

提訴に至った経緯として、支援団体の編纂した『雪崩-人災への怒りと警告-』では、以下のように説明されている。

この事故をめぐって県側は、「雪崩は自然発生したもので、発生の予見は不可能であった。また講師は経験豊かな登山家であり、なすべき事はやっており過失はなかった」と、遺族に対し当時の状況を十分に説明しないまま、これを解決しようとした。この県側の態度はとても納得できるものではない。・・・(3頁より)

裁判は25回 (1992年3月16日の現場検証を含む) 行なわれ、1995年11月21日に判決が言い渡された。判決は、「雪崩事故は不可抗力だった」という県の主張を認めず、約8400万円の支払いを命じた。県は控訴せず判決は確定した。なお、証人として出廷したのは日本勤労者山岳連盟理事長=当時=の中山建生氏と文部省登山研究所=当時=の柳沢昭夫の両氏だった。

以下に、雪崩事故の詳細、事故斜面及び気象のデータ、研修会の目的および参加者の登山歴、原告の主張、被告の反論、裁判所の判断等を紹介する。

雪崩事故の詳細
まず第一に、発生した雪崩事故の状況を、事故報告書と判決などから再現する。

研修会二日目にあたる1989年3月18日の午後、五竜岳小遠見山の支尾根東側斜面の谷側(標高1610m)で、5つの班に分かれてのワカンジキによる積雪斜面登高訓練が行なわれた。

15:30頃、訓練を開始した第1班の7名は、B講師が斜面上部を進み、その下約5メートルを講習を受けていた高校教諭6名が、幅約10メートル内にほぼ横一列になり、上部に向かって登り始めた。

約10メートルを登った時、「ピシ」という小さな音が聞こえ、上部斜面(登高開始地点から約50メートル上方)から幅約10メートル長さ約50メートルの規模の表層雪崩が発生し(雪崩発生時刻15:45頃)、B講師と6名の講習生のうちの4名が巻き込まれ、結局第1班の7名中の5名が埋まった。

雪崩停止直後から、A講師らの他の参加者による救出活動が行なわれ、3名の講習生(X、Y、Z)及びB講師は蘇生した。しかし、講習生Sは、呼吸・脈拍が停止し、瞳孔は散大しており、直ちに人工呼吸等が試みられたが、効を奏さなかった。

救出時刻は、XとY(15:50)、Z(16:10)、B講師(16:15)、S(16:50)であった。

事故斜面及び気象のデータ
雪崩の発生した斜面はどんな状態だったのだろうか。また、事前の気象状態はどのように推移していたのだろうか。この点については原告と被告の間にかなりの争いがある。よって、裁判所の認定によって再現する。

事故斜面は、

1.尾根の近くから下方に向かう幅約10メートル長さ35から50メートルの樹木のない積雪斜面であった。2.その上部を含め全体として、山の谷筋・沢筋にあり、中央が凹状を呈していた。3.斜面の新雪は30-50cm。4.斜度は、登高開始地点から雪崩遭遇地点までが、約30-35度、それより上部の雪崩発生地点までは35度、部分的には40度以上であった。5.吹きだまりができやすい地形であったとは言い難い。

事故当日と直前の約一週間の気象概況は、事故報告書や気象台によれば、以下のようだった。

1.事故当時は快晴。
2.事故現場の積雪は1-1.5メートル。
3.五竜とおみスキー場付近は10日-15日にかけて小雨の日もあり。気温はやや高め、15日夜から16日朝にかけて最低気温が氷点下10度となり、17日から18日午前にかけて降雪が続き、この間の新雪は30センチメートル。
4.雪崩注意報が発令中。

研修会の目的および参加者の登山歴
研修会の目的は、「冬期での野外生活を経験し、冬山の気象、生活知識、雪上技術等についての基礎実技の習得」することであり、実技として、アイゼン歩行、ピッケル歩行、幕営技術、ルートファインディング技術、天気図の作成、ザイルワーク技術の研修が予定されていた。

講師5名と講習生達の経歴は以下のようだった。

A講師(中学教諭)
海外遠征を含む20年の登山歴。山岳総合センター専門主事。

B講師(高校教諭)
海外遠征を含む20年の登山歴。当時長野県山岳協会理事長。日本山岳協会2種指導員。事故発生研修会の主任講師。

他の3名の講師
積雪期を含む登山歴のある長野県山岳協会地区指導員等の有資格者。

講習生
冬山初心者、講習を受けた教諭7名については、少なくとも遭難した講習生Sは夏山の経験はあったが、冬山は初めて。証人(A講師)の証言によれば「高校の一年生で初めて登山部に入った生徒が多いんですけど、そういうような生徒」であった。

原告の主張
原告の主張の骨子は以下のようであった。

その1、そもそも「文部省体育局長の通達により、高等学校の生徒の冬山登山は原則として行なわないように指導されているのであるから」、高校生やその引率教諭である講習生Sらをこの研修会に参加させてはならない法的義務を負っていたのに、この注意義務を怠って、参加させてしまった過失がある。

その2、この研修会が、仮に冬山登山に該当しないとして、高度な法的義務があったのに

1.斜面の調査が不足だった。弱層テストなどを行なうべきだった。
2.斜面は雪崩の危険性が高かった。
3.現場周辺でも過去に雪崩が発生しており、現場での発生を疑うべきだった。
4.7名が雪面に刺激を与えるワカンジキによる積雪斜面登高訓練方法は間違っていた。
5.救出方法と装備に問題があった(ゾンデを持参していなかった)。

被告の反論
原告の主張に対して、被告側は、まず、その1の「そもそも研修会をすべきではなかった」という点については以下のように主張した。

研修会は3月に開催されているので春山であり、また、初心者のための雪上歩行訓練であるから登山にはあたらない。よって、原告主張の冬山登山を避けるべき法的責任を怠った過失はない。

さらに、その2の主張については、法的義務は認めた上で、

1.雪崩の発生がいささかなりとも論理的に疑われる状況が認められればその予見可能性があると判断すべきではない。

2.研修会を実施すべき山岳会の指導者一般に認識された雪崩の発生原因や機構に関する知識を前提にして、予見可能性や結果回避義務などの法的義務の程度が定められるべきだ。

3.本件研修会は、高校山岳部の雪上技術学習に対する要望が強いことから開催されており、その社会的必要性が高い。雪崩発生機構は十分解明されておらず、雪崩予測の試行錯誤的な研究段階にある法則や情報を前提として予見可能性などを判断すべきではなく、研修会の実施が困難になるような内容の法的義務を課すべきではない。

等の反論を行ない、また、以下のように主張した。

1.研修の場所や時期は相当であった。

2.地形等については十分把握しており、気象条件についても十分な事前の調査を行なっていた。

3.雪の状態についても観察したり、気を配っていた。

4.弱層テストは、雪崩予知方法としては、山岳界一般に認知されておらず、雪崩予知の決定的要素とはなりえないものであって、.弱層テストをすべき義務はなかった。

5.雪崩の予知は難しく事故は不可抗力だった。

6.現場周辺で起こった雪崩は、事故現場とは距離も離れ、地形等の条件も異なるので本件現場での危険の有無を判断する材料にはならない。

7.講師は斜面が安定した状態であることを確認した上で、先頭に立ち、周囲を確認しながら歩行訓練をした。ワカンジキによる積雪斜面登高訓練は、横1列に並んで歩行するのが一般的で、特に危険な方法とされているわけではない。斜面を横切るよりは、直登降の方が安全と一般に考えられている。

両者の主張は、専門的な内容も含むので、本稿ではその詳しい解説は省略する。

雪崩に関しての参考書籍として、北海道雪崩事故防止研究会編「最新雪崩学入門」(山と渓谷社)、中山建生著「雪山に入る101のコツ」 (えい出版社)、新田隆三著「雪崩の世界から改訂増補版 」(古今書院)、Jennie McDonald, Bruce Jamieson 著・ 日本雪崩ネットワーク 訳「Free Riding in Avalanche Terrain」(えい出版社) などがある。

また、信州大学演習林研究室日本雪崩ネットワークのホームページでも、この分野についての多くを学ぶことができる。

もちろん、実際に雪崩講習会に参加して実感すれば、これにまさる方法はない。講習会としては。例えば、CAA、つまりカナダ雪崩協会(Canadian Avalanche Association )主催のレクレーショナル・ アバランチ・コース(註1)などを推薦する ( 私は2001年に、日本で開催されたCanadian Outdoor Adventure Club Hakuba =現在=の講習会に参加した ) 。

裁判所の判断
裁判所の判断を判例時報1585号から以下に紹介する。

原告主張その1の「そもそも研修会をすべきではなかった」という点については

文部省通達は、初心者のための雪上歩行訓練等により基礎的な雪上技術を習得させることを目的とする研修等をも禁止する主旨とは認められない。

と判示した。

原告主張その2の注意義務違反については、まず、以下のように述べて注意義務の存在を認めた。

1.本件研修会は、冬の野外生活を経験し、冬山の生活知識、雪上技術等についての基礎実技の習得をはかることを目的としており、参加者である高校生や引率教諭は、冬期の野外生活については初歩的段階にあり、雪崩回避の知識も不十分な初心者であった。講習生Sらは、純然たる私事ではなく、学校行事の一貫として参加した。講師らは、冬山に関する十分な知識や経験を有していた。

2.よって、講習生Sらは、一般の冬山登山とは異なり、万一の場合には雪崩等による生命身体に対する危険をも覚悟して、本件研修会に参加したのではない。雪崩等の危険性の判断については全面的に講師らにその判断を委ねていたもので、本件研修会が安全に実施されるものと期待していた。よって、講師らは、このような参加者の安全を確保することが要求されていた。

3.雪崩発生のメカニズムが完全に解明されているとは言えず、最終的には経験等で判断される場合も多いが、雪崩の発生原因は相当程度明らかで、専門書にとどまらず、登山者向け雑誌、研修会等を通じても雪崩回避のためにその発生の危険性を示す種々の客観的条件や判断方法が指摘されているのであるから、山岳界の指導的立場にある講師らとしては、右条件を事前に十分調査、検討することにより雪崩を回避することが、相当程度可能だった。

4,本件研修会における雪上歩行訓練は、当初から本件現場付近で行われることが予定されていたのであるから、雪崩の危険性の調査は、本件現場付近に限定して行えば足りるものである。そうすると、講師らに対して、事前に調査検討を尽くすことを要求することが困難とは言えない。

5.以上を総合すると、講師らは、訓練実施場所の地形、積雪状況や現場付近の天候などについて十分調査し、雪上歩行訓練を実施した場合の雪崩発生可能性について十分な検討協議を尽くした上、雪崩による遭難事故を回避すべき法的義務を負っていた。

そして、講師らがその注意義務を怠ったか、否かについては以下のように判断した。

講師らは、本件研修会以前に現地調査をしたり、あるいは地形図を検討する等して、本件斜面について、その斜度、その凹凸や谷筋地形の有無等を正確に把握すると共に、樹木の粗密、当時の新雪の積雪量等について調査して、十分協議検討して、雪崩による遭難事故を回避すべき法的義務を怠り、十分な調査を尽くさず、その結果雪崩発生の危険性についての判断を誤り、本件斜面で雪上歩行訓練を行った過失がある。

さらに、両者の主な具体的な争いについては以下のように判断した。

1.原告主張の場所で過去に雪崩が発生したからといってそれが本件斜面での雪崩発生の危険性判断の要素になるとは言い難い。

2.初心者が多人数で一度に狭い斜面に入り、ワカンジキによる登高訓練を行なった場合、雪面への刺激で雪崩が発生する危険があった。

3.弱層テストは、雪崩回避のための有効な方法であるとはいえるものの、これにより雪崩を的確に判断しうるとは認めがたい。したがって、雪上歩行訓練にあたって弱層テストをすべき義務があったとまではいえない。

そして、裁判所は、最後に、以下のような結論を示して、県に対して約8400万円の賠償を命じた。

本研修会の講師選任は、適切に行なわれており、また、前年等にも研修会が本件テント場付近で行なわれた等の事情も存し、また、A講師、B講師らは、本件研修会の責任者として、本件研修地付近における積雪状況について相応の注意を払っていたことが認められる。(また、本件研修会が、県内の高校山岳部の技術水準の向上を図るため、これを開催する社会的必要性が高かったことは前記認定のとおりである。)。
しかしながら、A講師、B講師らは、本件斜面の斜度(特にその上方の本件当時及び無雪期の斜度)、凹凸や谷筋地形の有無、積雪量等を判断するための十分な調査を行ったとは言い難く、したがって、本件雪崩事故が不可抗力である旨の被告の主張を採用できない。

補足 -当時の事故防止技術水準を考慮する必要性について-
本稿を終わるにあたって、注意義務違反を計量する基準の時代性について補足しておきたい。

五竜遠見尾根雪崩事故は1989年に発生した。したがって、医療過誤訴訟が、事故当時の医療水準をもとに注意義務違反が計量されるように、登山事故訴訟も、当時の登山技術水準を基準として読み解かなければならないのは、論理的必然である。

例えば、2002年現在の知識水準によって、「五竜遠見尾根雪崩訴訟」における原告側の「雪崩予測は経験と勘によるしかない」という主張を批判することは、たやすいことだと思う。しかし、前述した根拠により、日常の一般的な討論においても、そのような立場のみをとることはアンフェアである。

しかし、このことは、裏をかえすと、2002年現在では、「雪崩予測は経験と勘によるしかない」と主張し、かつ、そのような判決を受けることは、この十三年間の関係者の努力による雪崩の予知と防護器具の開発の進捗を鑑みれば、もはや不可能であることを意味する。

さらに、雪崩予見の各論においても、例えば、1995年の段階では、裁判所は「弱層テストの必要性があるとは認められない」という被告側の主張を採用した。しかし、もしこの事故の発生が2002年であったとしたら、少なくともより高い注意義務の課せられている営利・引率型登山においては、このような判断がなされる可能性はきわめて低い。この点については、「そもそも、被告側がこのような主張をすることはあり得ないとも思われるほど弱層テストの必要性の啓蒙は進んでいて、実際、講習会では実施されている」というべきかもしれない。

各論についてもう少し述べると、2002年現在で、初心者対象の営利・引率型の事故が発生した時に、「五竜遠見尾根雪崩訴訟」では明確な判断がなされなかったゾンデの不所持はもちろんのこと、雪崩ビーコンの不所持、あるいは、スコップの数量さえも争点となるであろう。アバラング(註2)やGPSの配備さえも争点として原告側から提出される可能性がある。さらに、事前調査についても、ピット掘りによる弱層チェックや予定コースでの当日の弱層テスト(ハンドテスト、シャベルテスト、スクラムジャンプテスト等)、あるいはアバランチコントロールなどが争点となるであろう。

実例としては、1998年冬、ニセコのスノーシューイングツアー中に参加者の女性が雪崩で死亡した事故いわゆる「ニセコ春の滝雪崩事件」(詳しくは判例時報1727号参照)があげられよう。

この刑事裁判では、「五竜遠見尾根雪崩訴訟」に比較して、雪崩予見に関して、弱層テスト以外にも、深い論議 ( 例えば、高橋の18度の法則(註3)ゃ風成雪(註4)について言及がなされた) が行なわれ、裁判所は以下のように判示し、ガイド側は業務上過失致死罪で有罪判決を受けた。

現場の地形、積雪状態等、被告人両名の知識・経験・認識のほか右のとおりの被告人両名の業務の性格、冬山関係者の供述等に照らすと、本件の具体的状況の下で、被告人両名は、本件ツアーガイドとして、本件雪崩の発生及びその雪崩が本件休憩地点に到達し遭難の事態となることを当然予見すべきであり、かつ、そのように予見することが十分可能であったと認められる。

この「ニセコ春の滝雪崩事件」については、POWDER VOL.3 1998 (えい出版社)、あるいは、 EX Ski&Snowboard 1999(双葉社)とこの記事を抜粋したネット上のニセコ『春の滝』雪崩事故ドキュメントに詳しい。

なお、この雪崩事故の民事訴訟(ガイド側に対して約7000万円の損害賠償を求めた訴訟)は、2000年8月22日付毎日新聞によれば、ガイド側が約6300万円を支払うことで和解が成立している。


註1 レクレーショナル・ アバランチ・コース

Recreational Avalanche Courseのこと。RAC。カナダではバックカントリー愛好者向けの一般的な雪崩講習会。毎年数千人の規模が受講。

コース内容

雪面チェック
弱層テスト(シャベル断面、コンプレッション、シャベル傾斜テスト、reuch)
地形査定(climb & descent)
セルフレスキュー(ビーコン、ゾンデ、シャベル)
気象観測

第1日 机上講義 終日
-Canadian Avalanche Association(カナダ雪崩協会)とは?HRACコースとは?
-雪崩とは何か、いつ、どのような時発生するか
-セルフレスキューの方法
-雪面チェック
-気象観測
-スライド
-ギヤの種類
-ビーコンの操作

第2日 ツアー実施 終日
-地形判断
-雪面チェック
-レスキューの実践
-報告会等

その他
講師は、カナダ雪崩協会が主催しているプロフェッショナルコースのレベル2資格。レベル2は、レベル1資格を取った後、最低でも2年は現場レベルでの勤務と研修をこなさないと受験できない資格で、スキー場で雪の管理の仕事を志すパトローラーには必須の資格。レベル1講習はカナダとニュージーランドで受講可能。ただし、今シーズン日本でも開催されたようだ。一週間の講習と資格テストに合格すると取得できる。受講にはレクレーショナル・ アバランチ・コース受講が必要と記憶している。

註2 アバラング

雪崩に埋まった場合に呼吸を確保するベスト。雪に埋まった場合、フィルターとマウスピースにより雪崩のデブリから直接空気を確保する。埋没後15-20分といわれる生存限界時間を耐えられる性能がある。ただし、表層雪崩のみに有効で、大規模雪崩で深く埋没して場合やブロック雪崩には効果がない、とのこと。

註3 高橋の18度の法則

高橋晋平さんによる雪崩到達地点に関する判断法則。データから判断して、雪崩は、雪崩発生点を仰ぎ見た角度が20度の地点まで到達する可能性が高い。したがって、現在地が平たんな場所でも、安全を確保するためには、この角度が18度以下になるさらに下方まで後退して行動するのがベストと言うことになる。なぜ、20度ではなく18度かというと、いわゆる安全係数を10パーセント見込んでいるため。

註4 風成雪

風によって吹き飛ばされた雪が、もう一度堆積してできる雪の層。ウインドスラブともいう。この 風成雪によって発生する雪崩は滑走者にとては高い注意を要すると言われている。


本文で言及した文献以外の主な参考文献(順不同)

文部省「高みへのステップ」(東洋館出版社)
辻次郎「登山事故の法的責任(上)」(判例タイムズ997)
辻次郎「登山事故の法的責任(下)」(判例タイムズ998)
武田文男「山で死なないために」(朝日文庫)
武田文男「続・山で死なないために」(朝日文庫)
本多勝一「リーダーは何をしていたか」(朝日文庫)
田中裕之「雪崩とレスキュー最前線」(登山時報274,1997年12月号)
吉原稔「山岳遭難事故をめぐる判例の整理と紹介」(登山時報1997年11月号)
望月礼次郎「スポーツ中の事故・プレイヤーの注意義務 アマチュアスポーツの場合」(ジュリスト1204 )
田中文男「リーダーの法的責任について」(登山年報1983)

以上


 

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