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本HP関連ニュース2004

登山事故裁判関連ニュース2004

精度については努力していますが、正確な事実関係については自己責任でお確かめ下さるようお願いいたします。より正確な事実関係や詳しい情報がありましたらお知らせ下さい。なお、整理の関係上、掲載順は「ニュースと情報の発生」の時系列に沿わない場合があります。乞御海容。
最終更新日 2004.12.07

No.
本頁掲載日
内容
情報源
001 2004.03.09 おんたけスキー場 スキーヤー同士衝突 1人死亡

2004年2月08日、おんたけスキー場で、スキーヤーの成人男性と小学2年生が衝突した。成人男性は軽傷だったが、小学生は死亡した。事故は初級者用コースと中級者用コースの合流点付近で発生したようだ。

現在では、最高裁判所の判例により、上方から滑走して来たスキーヤーorスノーボーダーの方に高い注意義務があることが確定している(参照SKI ACCIDENT)。

2004.02.09

中日

002 2004.03.09 オーストリアスキー場のケーブルカー火災事故 関係者全員に無罪判決

2004年2月19日、オーストリアの裁判所で、2000年11月のオーストリア・アルプスのケーブルカー火災でスキー客ら155人(10人の日本人を含む)が死亡した事故の刑事裁判の一審判決があった。裁判所は、業務上過失致死罪などに問われた運行会社役員ら被告16人全員に無罪を言い渡した。検察は上級裁判所に上訴するようである。

2004.02.20

共同通信

003 2004.03.09 長野県 山岳救助ヘリの有料化の条例制定を検討 安易な救助要請を防ぐ必要 

長野県は、全国に先駆けて、県のヘリコプターによる山岳救助を有料化する条例の制定をめざしいるようだ。2002年度の長野県消防防災ヘリの山岳救助のための出動は29回。ヘリの維持費や燃料費として年間約1億円が掛かっているとのことである。

維持費の負担については、「山岳救助専用ヘリ」というわけではないので??だが、「燃料費には相応の負担が必要」という論議にはかなりの説得力がある。水難救助費用などとの兼ね合いはどうなるのだろうか。

2004.01.23

共同

004 2004.03.09 大日岳事故訴訟 文科省に事故の謝罪要求署名提出

2004年3月5日、大日岳事故訴訟の原告らは文部科学省にたいして、事故の責任を認めて謝罪するよう求める約6万9000人分の署名を提出した。共同通信ニュースによると、事故で遭難した2名の講習生の家族は「1日も早く責任を認め、亡くなった息子と私たち遺族に心から謝罪し、現在の事故報告書を撤回して国と利害関係のない第三者による調査をしてください」と述べた。

2004.03.05

共同

005 2004.03.09 関西学院大ワンゲル部 大長山遭難事故の調査委員会設置

2004年3月4日、関西学院大学ワンダーフォーゲル部は、大長山での遭難事故の原因を究明する調査委員会を設置した。調査結果は、今月末までに公表する予定

2004.03.05

時事

006 2004.03.09 リクルート接待疑惑の名誉毀損訴訟 一審判決 本多氏らと岩瀬氏の両者に賠償命令

2004年1月21日、元朝日新聞記者の本多勝一氏と疋田桂一郎氏(故人)がリクルート社から接待を受けたという記事に関連して発生した複雑な名誉毀損訴訟の一審判決が東京地裁であった。小野剛裁判長は、「接待があった」という記事を書いた岩瀬達哉氏の名誉棄損を認め、本多氏らに176万円の支払いを命じた。しかし本多氏や疋田氏の反論記事も、表現が「限度を超えている」と認定して岩瀬氏に対する名誉棄損を認め、岩瀬氏に計250万円(本多氏200万、疋田氏50万)を支払うよう言い渡した。

判決には「旅行代金は通常より安く、接待か便宜供与はあったが、『ホテル代を一切払っていない』という記述は誤り」と記載されているようだ。つまり、裁判所は「接待か便宜供与はあった」と認定したということである。なお、本多氏は控訴し、岩瀬氏もこれに応じて控訴したようだ。

昨年の東京地裁での本多氏の証言傍聴記はいずれ掲載するつもりですが・・・

2004.01.21

毎日

007 2004.03.09 カーレース事故  過失相殺5割 主催者側に144万円の支払い判決

2004年3月4日、新潟地裁で、アマチュアカーレースの事故で重傷(他車の接触事故に巻き込まれ、直線コースの左側にある約2メートル下のくぼ地に車ごと転落した)を負ったのは、設備の安全性に問題があったためと、レースに参加した男性が、レース場を運営・管理する2社に約567万円の損害賠償を求めた訴訟の一審判決があった。片野悟好裁判官は、「コース外の高低差がある場所を放置し防護策を取らなかった」と指摘し、原告の損害額を約290万円と認定した。

しかし、「原告はレースの危険性を十分承知して参加した」として、5割の過失相殺を認め、約290万円の半分の144万6560円の支払いを命じた。

2004.03.05

毎日

008 2004.03.10 松本サリン事件の河野義行さん 推定有罪に異義 刑事事件判決前の手記で

松本サリン事件の河野義行さん(サリンの被害者であると共に深刻な報道被害者でもある)が、2004年2月20日付けの中日新聞朝刊に、麻原被告の判決前に手記を寄稿した。河野さんの冷静で論理的な発言にはいつも深い感銘をうける。本頁に関連すると思われる発言を引用したい。

1.被告の有罪が確定するまでは、彼は無罪が推定されているはず

2.市民が疑惑に巻き込まれた時、警察やマスコミ、世間に対抗する術は「真実」と「法律」のみである。その法ですら市民感情という大きな流れに対抗しきれないことがある。「法の規定ではそうなっているが、我々は認めない」という現象である。これらの現象は法的責任と道義的責任が一緒に議論された場合に起こる。疑惑に巻き込まれた者として、どのような事件に対しても、市民の冷静な判断を強く望み続けてやまない。

登山事故の法的責任を考える上でも、法的責任と道義的責任はしっかりと論理的に区別されるべきである。また、冤罪被害の深刻さを考えれば「推定無罪」という知恵は必ず尊重しなければならない。

法的責任については、「法の規定でそうなっているのなら今はやむおえない」という立場を甘受し、どうしても承服し難い場合は、法の改正を指向すべきと思う。

2004.02.20

中日

009 2004.03.10 登山事故訴訟 裁判以外の紛争解決を 朝日新聞署名記事 山田新さん

2004年2月23日朝日新聞朝刊に「登山事故訴訟 裁判以外の解決策を」という見出しで、スポーツ部兼総合研究本部所属の山田新さんのオピニオンが掲載された。

記事では、本頁掲載の弘前大学医学部山岳部遭難事故訴訟と神崎川事故訴訟への言及の後、成人の自主登山では「被害者救済に重点を置いた不法行為責任(過失)の適用は合理性を欠くとの指摘が、スポーツ法学の研究者からなされるようになった」とし、アウトドア事故の紛争解決については「その分野の専門家も参加するADR(裁判外の紛争解決手段)」を推奨している。

ADRは良い手段と思う。ただし、弘前大学医学部山岳部遭難事故訴訟で、本多勝一さんらの意見書に憤慨した経験に照らすと、その分野の専門家の精度が保証されれば、という限定条件が必要である。

2004.02.23

朝日

本頁掲示板

情報提供ありがとうございました。

010 2004.03.18 羊蹄山ツアー ツアー客遭難死事故 添乗員に有罪判決 札幌地裁

2004年3月17日、1999年秋に羊蹄山の登山ツアーで客二人が凍死した遭難事故で、ツアーに添乗したツアー会社の添乗員が業務上過失致死の罪に問われた一審判決が、札幌地裁であった。遠藤和正裁判長はツアー添乗員に禁固二年、執行猶予三年(求刑・禁固三年)を言い渡した。

北海道新聞によると、遠藤裁判長は「被告は、ツアー客が悪天候の中、適切な引率を受けずに山頂に向かえば迷走の上凍死すると予見できた。しかし、遅れてついてくると軽信し注意義務を怠った」と述べたようだ。

また、ツアーを企画した会社については 「被告が単独添乗した背景には利益優先の企業体質がある。被告のみに責任を帰するのは酷過ぎる」と言及した。被告は判決を不服として即日控訴した。

2004.03.18

北海道新聞

011 2004.05.09 おんたけスキー場の衝突死 会社員を過失致死容疑で書類送検

2004年4月14日、警察は、おんたけスキー場で、上方から滑走して来た成人のスキーヤーが、小学2年の児童と衝突し、児童が死亡した事故で、この成人男性を、事故が発生したのはこの男性が前方をよく見ずにスピードを出しすぎたためだとして、過失致死の疑いで長野地検松本支部に書類送検した。

2004.04.15

毎日

012 2004.05.09 三重県登山ガイドツアー 参加者の女性と山岳ガイドの2人遭難

2004年04月22日、三重県の宮の谷渓谷の登山道で、ガイド登山に参加していたツアー客2人のうちの一人が滑落し、このツア-客を助けようとした引率者の山岳ガイドの男性も転落した。転落した2人は防災ヘリコプターで病院に搬送されたが死亡した。

2004.04.23

神戸新聞

013 2004.05.09 屋久島沢登りガイドツアー 参加者4名のうち3名遭難 ガイドは業務上過失致死容疑

2004年05月04日、屋久島の屋久町麦生の千尋滝上流(鯛ノ川)で、山岳ガイドの男性が募集した3泊4日沢登りツアーに参加していた4名の参加者のうち3名が遭難した (1名の参加者と山岳ガイドは救助された)。

3人の死因は、司法解剖の結果、水死の可能性が高いことがわかった。

県警は5月8日にこの山岳ガイドの事務所兼自宅など2カ所を業務上過失致死容疑で家宅捜索し、顧客名簿など二十数点を押収した。

2004.05.05

南日本新聞

2004.05.06

ニュース鹿児島読売テレビHP

2004.05.08

asahi.com

014 2004.05.23 山と渓谷04年6月号「裁かれた添乗員―羊蹄山ツアー登山裁判の行方」 事故と裁判ルポ

2004年5月15日発売の山と渓谷04年6月号に、一審で添乗員が有罪となった羊蹄山ツアー登山刑事裁判(控訴中)の遭難の概要と裁判についてのルポが掲載された。

最も注目すべき点は、被告側が、凍死した2名の女性と下山とビバークを共にした男性(同じツアー参加者の一人)が「2名の女性を連れ回した」ことが遭難の直接原因であると陳述したことにある。また、記事によれば、ツアー会社は、この男性に相応の請求をする場合があることを通知したようだ。

2004.05.15

「山と渓谷」04年6月号

015 2004.05.23 羊蹄山ツアー登山刑事裁判の判決文アップロード 札幌地裁HP 主要判決速報

2004年3月17日に札幌地裁で判決のあった、いわゆる「羊蹄山ツアー登山裁判」(札幌地方裁判所 平成14年(わ)第184号 業務上過失致死被告事件)の判決文要旨図面が、札幌地裁HPの「主要判決速報」に掲載中である(2004.5.23現在)。

判決文では、遭難したツアー客と行動を共にした男性Mの証言は信用できないとする被告側の主張について、「Mは,ともすればB及びCの死亡について何らかの責任を追及されかねない立場にあるが,自己に不利ともいえる混乱迷走状態を含めて率直かつ迫真的な供述を真摯に展開するなど殊更虚偽を述べる姿勢は窺われず,その供述内容にしても,核心的部分で一貫している上,・・・客観的状況又はこれから合理的に推認できる事実とも整合した自然かつ合理的なものであって,十分に信用できる。」と判示した。

2004.05.23確認

札幌地方・家庭裁判所HP

016 2004.05.23 エベレスト登山公募隊 参加日本女性遭難 登頂後に8500mで

2004年5月20日、山岳ガイド事務所「アドベンチャーガイズ」主催のエベレスト登山ツアーに参加した日本人女性が登頂に成功後、下山中に8500m付近で意識を失った。この登山ガイドの男性が心肺蘇生を行ったが効を奏さなかった。

5月21日付けの共同通信によれば、「遺族は、『2次災害は避けたいので遺体の収容は要請しない。形見があれば持ち帰りたい』と話し『できれば自分が登って連れて帰りたいが…』とのべ、今回の登山ツアーについて「『母は訓練を積んで挑戦したが自然の脅威に負けた。ガイドとの信頼関係は良好で、誰の責任でもない』と述べた。」

2004.05.21

共同通信

017 2004.05.29 羊蹄山ツアー登山刑事裁判 判決確定 元添乗員の男性の控訴取り下げで 

「羊蹄山ツアー登山裁判」で、禁固2年、執行猶予3年の有罪判決を受けたツアー添乗員の男性が控訴を取り下げていたことが分かった。

5月28日付けの東奥日報によると、この男性は、ツアー会社「を依願退職後の4月9日に控訴を取り下げ」たとのことである。

2004.05.28

東奥日報

018 2004.06.09 大日岳事故の引率講師 不起訴処分との方針 富山地検 嫌疑不十分

2004年6月8日、富山地検は、『業務上過失致死容疑で書類送検されていた大日岳事故の引率講師2名を、『吹き溜り』崩落は予見不可能であったとして、嫌疑不十分で不起訴処分とする方針を示した。

2004.06.08

共同通信

019 2004.06.09 弘前大学医学部山岳部遭難訴訟 上告棄却 国・リーダー・先輩に法的責任なし判決確定

2004年6月8日、最高裁第三小法廷(浜田邦夫裁判長)は、上告中だった弘前大学医学部山岳部訴訟について、遺族の上告を退ける決定をした。これにより「事故は本人の不注意が原因」として国・リーダーの学生・計画に関与した先輩の法的責任を否定した一、二審判決が確定した。

2004.06/09

中日

020 2004.06.11

2004.06.14一部改変

大日岳事故不起訴処分 遺族は検察審査会への不服申し立てを協議へ

2004年6月10日付のasahi.com : MYTOWN : 富山によると、6月8日の富山地検の不起訴処分をうけて、ご遺族は、「検察審査会への不服申し立てを弁護士と協議する」とのことであり、ご遺族のお一人は「「起訴してほしかったが、真実を知りたいという気持ちは変わらない。なぜ嫌疑不十分なのかを説明してもらいたい」と話している。」とのことである。

同ニュースによると、今回の不起訴決定にあたって、富山地検は「研修に参加した講師や研修生、登山家らから事情聴取したほか、昨年5月には山頂付近で現場検証を実施。事故当時の雪庇は40メートル以上と予想以上の大きさで、講師らの安全確認は登山の常識にのっとっていたなどとして、「雪庇の上にいたと認識することは難しく刑事責任までは追及できない」と判断した。送検から処分まで約1年半かかったことについて吉浦邦彦次席検事は「巨大な雪庇が崩れた事故は過去に類例がなく、関係者も全国に散らばっていた」と話した。」とのことである。

なお、今回の不起訴処分に先立って、日本山岳会京都支部HPには04年02月06日付で「大日岳遭難事件で書類送検された山本一夫・高村真司両君をご支援いただいている皆様へ」が掲載されていた。

2004.06.10

asahi.com : MYTOWN : 富山

2004.06.14

日本山岳会京都支部HP

021 2004.06.19 ピット・シューベルト著『続・生と死の分岐点』発売中 法的責任問題にも言及

山と渓谷社から黒沢孝夫訳/ピット・シューベルト著『生と死の分岐点』の続刊である『続・生と死の分岐点』が出版された。特に、ロープクライミングに携わる人は必読と思われる。確保中の事故についての損害賠償請求訴訟の事例も数例紹介されている。日本と欧米間には関連法における相違があることには留意しなければならないが、考え方そのものは非常に参考になる。

また、「危なっかしい」他者に対してアドバイスしたり(口を出したり)、実際に助けたり(手を出したり)すべき法的責任が存在するかどうかについての言及については、いろいろと考えさせられる。

2004.06.19

山と渓谷社刊

022 2004.07.08 ダイビング死亡事故 インストラクター 業務上過失致死罪で50万円の罰金

2004年7月6日、東京簡易裁判所は、2003年4月に八丈島付近でダイビング中に女性が死亡した事故で、事故原因はインストラクター役の男性ダイバーが「ダイビング開始前に入念な打ち合わせをせず、開始後も女性の行動を十分に確認する義務を怠った」ことにあるとする検察側の主張を認め、求刑通り罰金50万円の略式命令を出した。 

2004.07.06

共同通信

023 2004.07.26 元登山ガイド在宅起訴 2002年夏の大雪山凍死事故 業務上過失致死罪で

2004年7月23日、旭川地検は、2002年夏に有料登山ツアーに参加した女性が大雪山系トムラウシ山で凍死した遭難事故について、このツアーを主催し引率していた元登山ガイドの男性を旭川地裁に業務上過失致死の罪で在宅起訴した。

7月24日付けの北海道新聞HPによると、起訴状には「被告は同年七月十一日、この主婦ら七人を引率して十勝管内新得町側からトムラウシ山に入山。台風接近で風雨が強まる中、登山を続行し、主婦は同十二日午前零時ごろ、疲労のため山頂付近で歩けなくなり凍死。冨永被告は気象情報を十分に確認しなかった上、一時避難のための大型テントも持参していなかった。」と記載されているようだ。また、地検は「『行程途中の増水した川を渡らなければ遭難は防げた。登山の専門家として判断ミスがあった』としている。」とのことである。

あくまで私見ではあるが、特に、営利目的の引率型登山の死亡事故については、主催者が刑事責任を問われる傾向がますます強くなっていくだろう。

2004.07.24

北海道新聞

024 2004.07.30 ダイビング事故民事訴訟 ガイドと主催会社に賠償命令 約7200万円

2004年7月30日、東京地裁は、2000年6月に静岡県西伊豆町沖でダイビングツアー中に水死した講習生(成人)の遺族が、同行した男性ガイドとツアー主催者などに注意義務違反があったとして計約9500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、ガイドらに計約7200万円の支払いを命じた。

佐藤陽一裁判長は「ガイドは潮に流された参加者を見失い、適切な指導監視を怠った」とし、主催会社についても「参加者の安全に配慮する義務は主催者にもある」と賠償責任も認めた。

2004.07.30

共同通信

025 2004.07.30 日航機事故裁判 機長無罪 事故報告書の刑事裁判への利用は制限されない 名古屋地裁

2004年7月30日、名古屋地裁で、1997年に日航機が乱高下して乗員乗客14名が死傷した事故で業務上過失致死傷罪に問われた機長の判決があった。石山容示裁判長は「乱高下は機長の操縦が一因だが、人身事故につながるとまで予見することはできなかった」などとして無罪(求刑・禁固一年六月)を言い渡した。

この裁判の大きな論点は、旧運輸省(現・国土交通省)航空事故調査委員会の事故報告書の証拠採用の是非だった。7月30日付け中日新聞HPによれば、この争点についての裁判所の判断は以下の通りである。

A. 既に公表された事故調査報告書の刑事裁判への利用は制限されない

B. 報告書は準鑑定書として証拠能力がある

名古屋地裁は、事故調の事故報告書を「準鑑定書」として証拠採用した。このことは、少なくとも日本では、「証言が刑事裁判には利用されることはない」という大前提が崩れたことを意味する。よって、この国際的な大前提の元に、これまでは航空事故調査委員会の調査に協力していたパイロット側から「刑事裁判の証拠とされるのであれば事故調査には協力しない。何もしゃべらない。黙秘する権利がある。」という意見が出ることは必定である。

登山界では、これまでは、少なくない事故当事者が、道義的責任に基づいて事故報告書を自主的に作成し、同種の登山事故を防ぐために自ら進んで公表してきた。もちろん、これらの報告書作成にあたっては正確な事実の記載に最大の努力が傾けられ、リーダーなどのミスについても正直に隠すことなく真摯な態度で報告されてきたと思われる。

しかし、今後、登山事故についての訴訟が増加し、登山事故報告書が、登山仲間への損害賠償請求訴訟や山岳ガイドの業務過失致死罪裁判の証拠として頻繁に使用されるようになると、1、最初から登山事故報告書の作成そのものを行わなかったり、2、作成しても不利なことは一切記載しない、あるいは、3、あらかじめ、裁判になった場合には有利な証拠となるような「事故報告書」を作成するなどの事象が発生する可能性を否定できないだろう。

2004.07.30

中日新聞HP

026 2004.08.03 北鎌尾根 登山ツアーに参加の男性 滑落遭難

2004年7月31日、槍ケ岳登頂ツアーに参加し、山岳ガイドを含めて7人パーティで槍ケ岳を目指して登山中の男性が、北鎌尾根の通称「北鎌のコル」付近で、約百五十メートル滑落し死亡した。

2004.07.31

毎日

2004.08.01

山のニュース@岳人

027 2004.08.03 検察審査会への不服申し立て行わず 大日岳事故 講師の不起訴処分に対して

2004年7月31日、大日岳事故で、引率の元講師2人が不起訴になったことを受けて、検察審査会への不服申し立てを検討していたご遺族は、富山市で記者会見し、検察審査会への不服申し立ては行わないことを明らかにした。

8月2日付けの毎日新聞によると、ご遺族は「『不起訴は到底承服できないが、審査は検察の書類などだけで判断され、遺族側が立証を尽くせる場ではない。民事裁判で真相究明に全力を尽くし、国の責任を明らかにしたい』と話した」とのことである。

なお、ネットにアップロードされている検察審査法の第6章審査手続の抜粋は以下の通り。

第35条 検察官は、検察審査会の要求があるときは、審査に必要な資料を提出し、又は会議に出席して意見を述べなければならない。
第36条 検察審査会は、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。
第37条 検察審査会は、審査申立人及び証人を呼び出し、これを尋問することができる。

 検察審査会は、証人がその呼出に応じないときは、当該検察審査会の所在地を管轄する簡易裁判所に対し、証人の召喚を請求することができる。

 前項の請求があつたときは、裁判所は、召喚状を発しなければならない。

 前項の召喚については、刑事訴訟法を準用する。
第38条 検察審査会は、相当と認める者の出頭を求め、法律その他の事項に関し専門的助言を徴することができる。
第38条の2
 審査申立人は、検察審査会に意見書又は資料を提出することができる。

2004.08.02

毎日

28 2004.08.09 奥穂高岳と前穂高岳 吊尾根で縦走中の女性転落遭難 登山ツアー参加中

2004年8月7 日早朝、奥穂高岳と前穂高岳の間の吊尾根で、登山ツアーに参加していた女性が転落遭難した。

2004/08/07

毎日

29 2004.09.17 リクルート接待疑惑訴訟2審判決 本多&岩瀬氏のみに賠償命令 疋田氏への命令は取消し

2004年9月16日、元朝日新聞記者の本多勝一氏と疋田桂一郎氏(故人)がリクルート社から接待を受けたという記事に関連して発生した複雑な名誉毀損訴訟の一審判決を不服として、両者が控訴していた控訴審判決が東京高裁であった。

大内俊身裁判長は、一審判決を一部変更した判決を言い渡した。つまり、一審判決の「本多氏に200万円の支払いを命じる一方、岩瀬氏にも計176万円の支払いを命じた」部分は支持したが、疋田氏に対して、岩瀬氏に支払うように命じた部分については、これを取り消したということである。取り消しの理由は「自分(疋田氏:宗宮註)の発言が改ざんされた疑いを指摘したもので、批判・論評として許される範囲の表現だ」とのことのようだ。言い換えると、本多さんの岩瀬氏に対する表現は名誉毀損に該当するが、疋田氏の岩瀬氏に対する記述は名誉毀損ではないと判断したと言うことである。

それにしても、 岩瀬氏が本多氏らに求めた1000万円の損害賠償に対して、本多さんらが岩瀬氏に求めた約1億7800万円という額には驚かされる。これでは、岩瀬氏に請求される弁護士費用は、理論的には、1000万円以上になってしまう。

共同通信

読売

2004/9/16

30 2004.09.22 大雪山遭難死亡事故 刑事事件 結審 元登山ガイド、ミス認め執行猶予を求める

2004年9月21日、旭川地裁(餘多分(よたぶん)亜紀裁判官)で、大雪山系トムラウシ山で2002年夏、有料登山に参加中のツアー客が凍死した遭難事故で、業務上過失致死の罪に問われた元登山ガイドの初公判が開かれた。検察側は、「気象情報の確認を十分せず、台風接近で風雨が強まる中で登山を続行し」たとして禁固八カ月の求刑した。被告人は罪状認否で起訴事実を認め、弁護側は執行猶予を求め結審した。

9/22付の北海道新聞HPによれば、「被告人質問で被告は判断ミスを認めた上で『事故の前年にも土砂降りの中、登った。(事故が起きたツアーでも)十分に安全が保てると思った』などと述べた。」とのことである。(本ニュースNo.23参照)

北海道新聞

2004/9/22

31 2004.10.06 ツアー登山客 下山中に転倒して転落 剣岳早月尾根 

2004年10月2日、剣岳に登頂した後、早月尾根を下山中のツァー登山客の男性が、岩につまづいて転倒滑落した。

中日

読売

2004/10/2

32 2004.10.06 大雪山遭難死亡事故 刑事事件 判決 元登山ガイド、禁固8月、執行猶予3年

2004年10月5日、旭川地裁の餘多分亜紀裁判官は、02年夏、登山ツアーを企画し、男女7人を引率してトムラウシ山に入山し、登山客の女性を遭難死させたとして、業務上過失致死の罪に問われた当時ガイドの男性に対して、禁固8月、執行猶予3年(求刑禁固8月)を言い渡した。

共同通信によれば、餘多分裁判官は判決理由で「台風が接近する中で登山を強行するという、プロとは言い難い軽率な判断をした責任は極めて重い」と指摘、同時に「事件後はガイドを辞め、被害者の遺族に謝罪している」と述べた、とのことである。

共同

2004/10/05

33 2004.10.21 羊蹄山ツアー登山遭難死 民事裁判 旅行会社側 謝罪と7000万円支払いで和解

2004年10月19日までに、北海道の羊蹄山でツアー登山に参加した女性2人が遭難死したのはツアー会社(精算中)が「悪天候なのに登山を決行し、2人がはぐれてからも漫然と登山を続けた」ためであるとして、遺族がツアー会社と元添乗員の男性に、計約1億2000万円の損害賠償を求め、これに対して、「登山は自己責任が基本で、遭難による凍死も予測不能だった」と、被告側が争っていた民事訴訟の和解が大阪地裁(本多俊雄裁判長)が成立した。

和解内容は、ツアー会社側が謝罪して和解金7150万円を支払うというものだった。10月19日付けの時事通信によると、「同社側は遺族に「責任を痛感しております。深く哀悼の意を表し深くおわびします」などと謝罪した。遺族の代理人は「登山ブームに乗った安易なツアーへの警鐘になった」としており、再発防止のため、羊蹄山の道標の整備用に和解金の一部を寄付するという。」とのことである。

時事

2004/10/19

読売

2004/10/19

34 2004.10.22 カヌー転覆の海難審判 ガイドの判断ミスが原因と裁決 ただし、行政処分勧告は見送り

2004年10月22日、函館地方海難審判庁で、北海道・屈斜路湖で2隻のカヌーが転覆し4人が死傷した事故(2003年6月発生)の海難審判裁決があった。

以下は、10/22付けの共同通信ニュース:

黒岩貢審判長は、刑事裁判の被告に相当する指定海難関係人であるガイドの男性に対し、「天候悪化の兆候を認めた際、速やかに湖岸に戻るよう乗組員に指示しなかった。低水温に耐えられる服装も着用させなかった」と述べ、判断の誤りが事故につながったと指摘した。しかし、本人が反省していることなどを考慮、行政処分の勧告を見送った。また、指定海難関係人で、カヌーツアーの客だった会社員の男性に対しても「カヌーの運航を自ら判断できる立場になかった」と述べ、勧告を見送った。

2004/10/22

共同

35 2004.12.06 救助が間に合わなかったのはPHSの誤作動が原因 遺族がサービス提供企業を提訴

2004年12月3日、東京の高尾山に登った男性(位置探索システムを搭載したPHS端末を所持)が遭難した事故で、男性の遺族は、男性の救助が間に合わなかったのは誤差範囲や誤作動する可能性の説明が不十分だったからなどとして、サービスを提供する企業に対して、3200万円の支払いを求め、東京地裁八王子支部に提訴した。

以下は、2004/12/04付け読売新聞HP:

訴えによると、男性は6月20日、登山に行ったまま帰らなくなった。PHSを使った高齢者の居場所を把握する位置探索サービスを受けており、同社から翌朝「八王子市内のコンビニエンスストアから発報がある」と連絡があった。同社社員も「高尾山にはいない」と説明。家族は高尾署員らとコンビニ周辺を捜した。男性は同24日午後になって、コンビニから約500メートル離れた登山コースをはずれた斜面で遺体で見つかった。右大たい骨が折れていた。PHS端末を身につけており、電源も入っていた。

「登山道の標識の不備、記載の不十分性などを理由とした損害賠償請求訴訟の提訴はそれほど珍しいものではない」といった時代が訪れる可能性はどの程度あるのだろう?

2004/12/04

読売新聞HP

36 2004.12.07 高校サッカー部員落雷事故 控訴審も予見不可能と判示 

2004年10月29日、高松高裁で、1996年に高校1年の男性が大阪府高槻市でサッカーの試合中に落雷を受け失明や半身不随の障害を負った事故で、この男性と家族が高槻市や学校側などに約3億円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決があった。松本信弘裁判長は、「教諭が落雷を予見することは困難。また予見するべき義務があったとまでは言えない」として、原告らの請求を退けた高知地裁威信判決を支持して、控訴人である男性らの控訴を棄却した。

2004/10/29

共同通信

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