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本HP関連ニュース2005

登山事故の裁判関連ニュース2005

精度については努力していますが、正確な事実関係については自己責任でお確かめ下さるようお願いいたします。より正確な事実関係や詳しい情報がありましたらお知らせ下さい。なお、整理の関係で掲載順は「ニュースと情報の発生」の時系列に沿わない場合があります。乞御海容。
最終更新日 2005.12.31

No.
本頁掲載日
内容
情報源
001
2005.01.06 妻には夫の酒酔い運転を止めるべき法的義務がある 同僚にもある 東京地裁

読売新聞によれば、東京地裁で、酒酔い運転の男性(危険運転致死傷罪などで懲役7年確定)の車にひき逃げされて女性当時19歳)が死傷した事件について、遺族が、この男性だけではなく、男性の妻や勤務先の会社、同僚を相手取り、計約8100万円の損害賠償を求める訴訟が進行中である。

以下は、1月5日の読売新聞HPからの抜粋:

*****

訴えでは「常習的な飲酒運転を知りながら制止せず、助長した」としており、交通事件の過失に詳しい専門家は「飲酒運転ほう助のような積極的な関与が認められるかがポイントだ」と注目している。

男性の妻(38)は、男性が数年前にも酒気帯び運転で罰金刑を受けるなど日ごろから飲酒運転を繰り返し、事件当日も飲んで帰るのを聞かされていたのに、「注意して帰って」としか言わなかった。同僚(52)も当日、飲食店3軒で男性とはしご酒をして、男性が深酔い状態で車に乗るのを見ていたのに、止めなかった。

男性の供述によると、勤務先の安全運転責任者を務める部長(64)は、社有車が居酒屋などに止めてあると立ち寄り、部下らの飲食代を払う一方、代行車を呼ぶなどの措置は取らなかったという。この部長は「『酔いをさましてから行けよ』という程度で、車の鍵を取り上げず手ぬるいところはあったが、黙認していたわけではない。事件以来、飲酒運転をしないよう社内で徹底している」と話している。男性の妻側は「話すことはない」としている。

交通事件の過失論などに詳しい松本誠弁護士は、「飲酒運転への関与は、容認しただけでなく、積極的なかかわりがないと認定するのは難しい。だが、被害者側からすれば、責任は関与した全員にというのは当然の感情だ。危険運転致死傷罪が被害者らの声で出来たことを考えても、周辺者の責任が問われないのは不公平だろう」と話している。

*****

本HPの「先輩には無知な登山計画を変更させる法的責任あり!? 何がなんでもそれはないんじゃないでしょうか。」で「飲酒登山死亡事故 リーダー格の同行者や代表幹事にも法的責任と訴え」を仮想事例として取り上げたが、ついに現実となったようだ。

松本誠弁護士の「被害者側からすれば、責任は関与した全員にというのは当然の感情だ。危険運転致死傷罪が被害者らの声で出来たことを考えても、周辺者の責任が問われないのは不公平だろう」には異論がある。

被害感情は尊重されるべきであるが、法的な責任の認定は、感情に照らしてではなく、法律に照らして合理的に行われるべきと思われる。もし心情にのみ照らして法的な責任の重さが認定されるのであれば、被害感情が大きい場合には法的な責任が重く、被害感情が少ない場合には法的な責任が軽くなるという現象が発生する。これは公正とはいえない。法的な責任と道義的な責任は異なるのである。

例えば、ある大学の受験に失敗した受験生の両親が、担任の教師に対して、「子供の無謀な受験を止める責任があった」と責任を問いたくなる心情や、交通事故の被害者が「この事故の原因は、相手の運転者の技量が低すぎたからだ。国は運転技量の低いドライバーが自動車を運転することをとめるべきだった」という感情は理解できる。しかし、教師の法的責任を問う事には同意できない。後者のケースは、前者のケース程には不合理ではないが、慎重であるべきと思う。

2005.01.05

読売

002 2005.02.17 屋久島沢登りツアー死亡事故 引率山岳ガイド 書類送検

2005年2月15日、鹿児島県警は、2004年5月に屋久島で発生した沢登りツアー中のツアー客3名の死亡事故について、ツアー客をガイドしていた元山岳ガイドの男性を業務上過失致死傷と旅行業法違反(無登録営業)の疑いで鹿児島地検に書類送検した。

2005年2月16日付けの読売新聞HPによると「元山岳ガイドの男性は「下山を急ぎ、判断を誤った」と容疑を認めているという。」とのことである。

本ニュースで、すでに何度か言及しているように、「成人・有料・引率型のツアー登山中の死亡事故は業務上過失致死傷で書類送検」という流れは確実に定着しつつあるようだ。本ページでは成人・有料・引率型のツアー登山中の死亡事故を5件把握しているが、全てのケースが業務上過失致死傷で書類送検されている。書類送検後の経過は、起訴→有罪が3件、未確認が1件、不起訴が1件である。

また、2004年に発生したラフティングツアー中の死亡事故も書類送検され有罪となっている。

2005.02.16

読売新聞

003 2005.02.17 スカイダイビング死亡事故 インストラクター書類送検

2004年8月、埼玉県警と松山署は、2004年1月にスカイダイビングのタンデムジャンプ体験講習中にパラシュートが開かずに、インストラクターと講習生が墜落死亡した事故について、死亡したインストラクターの男性を書類送検した。

容疑は、2004年8月15日付けの毎日新聞によれば「メーンパラシュートを切り離さずに予備用パラシュートを開こうとした結果、予備用と減速用パラシュート同士を絡ませた注意義務違反とされた。」が、「メーンが開かなかった原因は解明できていない。」とのことである。

メーンパラシュートが開かなかったので、予備を開こうとした。この予備を開く時の手順に過失があるということのようだが、メーンパラシュートが正常に開きさえすれば予備を開く必要はなかったと思われるので、問題はなぜメーンが開かなかったのかという点にあるように思った。

つまりは、最大の事故原因は未解明ということのようである。

2004.08.15

毎日新聞

004 2005.03.16 提訴事実の実名報道 プライバシー侵害と認定 東京地裁

2005年3月14日、東京地裁は、診察時にセクハラ行為を受けたとして患者の女性が医師を提訴した事実を、実名で取り上げた毎日新聞の記事について、実名報道は医師は「いわゆる著名人ではなく、不利益の著しい実名使用の必要性には疑問がある」としてプライバシー侵害を認定し、110万円の支払いを毎日新聞に命じた。

さらに、提訴した女性に対しても、「不当提訴」と認定して、この女性に330万円、女性の弁護士が提訴についての記者会見を開いたことについても、「弁護士の業務を逸脱し、名誉棄損に当たる」として、この弁護士に55万円の支払いを命じた。なお、読売新聞HPによれば、この女性が診察時にセクハラ行為を受けたとして医師に1200万円の損害賠償を求めた裁判は、女性の敗訴が東京高裁で確定しているとのことである。

以上の判決は、山岳雑誌や登山関係のHPに遭難事故に関連した損害賠償訴訟のニュースを掲載する時に被告名を実名で掲載した場合に、「いわゆる著名人ではなく、不利益の著しい実名使用の必要性には疑問がある」として、実名掲載という行為がプライバシー侵害と認定され、出版社やHP主催者に賠償金支払の判決が下される可能性があることを示唆するものである。

特に、原告の請求が認められなかった場合は、原告の請求が認められた場合に比べて、(1)元被告による出版社やHP主催者への損害賠償請求訴訟が提訴される頻度が増加する、(2)実名報道によって名誉や名誉感情を毀損されたという元被告の請求を裁判所が認める可能性が高くなると思われる。よって、今後、出版社やHP主催者は、実名掲載に対して損害賠償請求がなされる可能性をも考慮した上で、匿名にするか実名を掲載するかの判断をなす必要があると言わざるをえないようだ。

2005.3.14

毎日

読売

東京

005 2005.03.29 本多勝一氏&故・疋田桂一郎氏VS岩瀬達哉氏の名誉毀損訴訟確定 最高裁

2005年3月22日、最高裁第三小法廷(浜田邦夫裁判長)は、フリーライターの岩瀬達哉氏の「朝日新聞元編集委員などがスキー旅行でリクルート社からの接待を受けた」という記事(月刊誌「Views」(休刊)97年1月号)に起因して、両者が「相手の記事で名誉を傷つけられた」として互いに損害賠償金などを求めあった民事訴訟に対して、双方の上告を退けた。(岩瀬氏の記事では実名ではなくイニシャル表記だった)。

かくて、結果的には、岩瀬氏に本多氏と朝日新聞元編集委員の故・疋田桂一郎氏に対して176万円、本多氏に岩瀬氏に対して200万円の賠償を命じた東京高裁判決(2003年9月)が確定することになった。

本多氏は、岩瀬氏の記事はねつ造であり、接待はなかったと雑誌で反論し、岩瀬氏に対して「人類最低の、真の意味で卑しい職業の連中」と書いていた。

なお、接待についての高裁判決は「旅行代金は通常より安く、リ社から接待か便宜供与はあった」と特別扱いがあったと事実認定していた。ただし、岩瀬氏の『ホテル代を一切払っていない』という記述は誤り」と岩瀬氏の本多氏に対する名誉棄損を認定していた。また、表現については、本多氏の「人類最低の、真の意味で卑しい職業の連中」などの表現は「限度を超えている」として本多氏の岩瀬氏に対する名誉毀損を認定していた。一方、疋田氏の岩瀬氏に対する「岩瀬氏が自分の発言として引用した部分にはうそがある」という反論については「批判・論評として許される範囲」と名誉棄損を否定していた。

2005.03.22

朝日

毎日

読売

006 2005.04.08 救助者転落死 救助を求めた?側の法的責任を認定 埼玉地方裁

2005年3月29日、埼玉地裁 (小林正明裁判長)は、栃木県の岩場で面識のない他者を助けようとして男性が転落死した事故で、救助を求めた側の注意義務違反を認めて遺族に対して4800万円を支払うよう救助を求めた側に命じた。(請求額は約8700万円とのことなので過失相殺がなされたと思われる。)

共同通信によると:

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「小林正明裁判長は「岩場に上れば自分たちだけでなく、救助に応じた第三者が危険な目に遭うことは予見可能だった」として、男性の注意義務違反を認めた。判決によると、被告の男性は2001年6月、同県栗山村の女夫渕温泉で顔見知りの女性と露天風呂に入り、体を冷やそうと近くの岩場に上ったところ、足を滑らせて鬼怒川に落ち、女性も転落しそうになった。助けを求める声を聞いた藤原町の男性が女性を救助しようとしたが、足を滑らせて転落、水死した。男性と女性は無事だったが、女性はその後、所在が分からなくなっている。」

*****
この記事の文脈を一般化すると、救助に応じた第三者がケガをした時に、「救助に応じた第三者が危険な目に遭うことは予見可能だった」として賠償金を支払わねばならないケースがあるということになる。もし本当にそうなのであれば、我々は救助を求める時にすらかなり慎重にならざるをえなくなってしまう。例えば、生死の境に置かれた時に、おもわず相手を危険にさらすことなど失念して、本能的に「HELP!」と叫んでしまうことは十分ありうるはずだ。しかし、「そのようなケースでも、救助者に損害が発生すれば、法的責任が発生することがありますよ」というのは理不尽な気がする。

この判決は、個人的には納得しずらいので、事故の経緯や法的判断について詳細を知るために判決文を読んでみたいと考えている。しかし、今のところ埼玉地裁のHPには判決は掲載されていない(2005.4.8現在)。

2005.03.29

共同通信

007 2005.04.08 「法的責任がなくても補償を!」と提言 厚労省研究班 医療事故

厚生労働省の研究班は、医療事故時に、医療者側に法的な責任がある場合とない場合を区別せずに、患者に損害が発生した時には常に患者や家族に金銭補償する「無過失補償制度」の導入を国に求めるよう提言した。

毎日新聞記事によれば「スウェーデンやフィンランドでは「無過失補償制度」が社会保障制度として確立している。英国では重い障害が起きた事故、仏では国立病院での医療事故を対象にこの制度が導入されている。」とのことである。

アウトドア事故についても、注意義務を尽しても100パーセントの安全を保証できないのは事実である。よって、ガイドやリーダーあるいは山仲間に法的責任があってもなくても、その山行中に損害が発生した事さえ確かならば、ケガを負ったり死亡した参加者やその家族が補償をうけられる「無過失補償制度」を導入すべきである。

財源をどうするのかという問題はあるので、すべての登山に導入するのは困難と思われるが、引率型登山については速やかな導入が望まれる。現在の賠償責任保険だけでは全く不十分である。

なぜなら、賠償責任保険は、法的責任がある場合に限って、はじめて損害の補償が受けられる制度である。言い換えると、法的責任が全くないと認定された場合は保険金は一切支払われることのないシステムなのである。

このため、「法的責任はあるのかないのか。もしあるとしたらそれはどの程度か」をめぐった争いが発生してしまう。

具体的には、被告側はとにもかくにも法的責任はないと主張し、一方、原告側はなにがなんでも法的責任があったと主張する。そして、どちらも自分に有利な証拠と主張しか法廷には提出しないだろう。

従って、ある事故を、たとえば民事裁判に持ち込んだ時、持ち込まなかった時に比べて、常に必ず「精度の高い事実関係」が明らかになるわけではないと言う事にならざるをえないのである。

実際、裁判の過程で、不利な事実が隠されたり、逆に、理不尽な理由で不当な請求がなされたりするケースはかなりあると感じる。これらのケースではそれまでは良好だった人間関係が破壊されことも多い。

「無過失補償制度」があれば、登山事故の経済的な補償はこの制度で自動的に受けられるのであるから、引率者や主催者に補償を請求しなくともよくなるので、多くのケースが話し合いで円満に解決されると予想できる。

さらに、この制度があれば、引率者側に一種の免責を与える事と等しいので、現在の民事裁判による紛争解決という選択に比べて、事故について得られる情報の量と質も格段に向上するだろう。この制度は、事故の経緯や原因について真に納得するための強力な手段となりうるとはずである。

2005.04.02

毎日

008 2005.04.25 高校山岳部死亡事故 第一回口頭弁論 静岡地裁

2005年4月13日、静岡地裁(男沢聡子裁判官)で、02年6月に県立高校山岳部の訓練の休憩中に富士川で遊んでいた山岳部員の高校生が水死したのは、顧問の教師2人に責任があるとして、生徒の両親が県に約6200万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論があった。県側は請求棄却を求める答弁書を提出した

2005.04.14
毎日
009 2005.04.25 高校野球部事故 事故は予見可能 県に損害賠償命令 練習方法の危険性認定

2005年4月21日、福岡地裁小倉支部の杉本正樹裁判長は、県立高校の野球部の練習中に打撃フォーム改善のため教諭に指示され、部員がスイング途中でバットを手放す練習方法を初めて試み、この時に飛ばしたバットが約7メートル離れた場所で練習中の部員の左目に当たり失明したのは指導教諭が安全管理を怠ったためとして、県に約6200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、約5800万円の支払いを命じた。

共同によれば:

杉本裁判長は「練習方法の危険性は明らか。バットが勢い余って飛ぶことも十分予想された」と指摘。教諭には「原告に声を掛けず、練習場所も移動させなかった過失がある」と述べた。

2005.04.21

共同

010 2005.04.25 “懲罰的損害賠償制度”の導入提案 プライバシー権侵害に 衆院憲法調査会

2005.04.15付け共同通信によれば、「衆院憲法調査会で議決された最終報告書に、プライバシー権侵害などへの“懲罰的損害賠償制度”の導入などが提案された。」とのことである。

“懲罰的損害賠償制度”とは、「また同じような権利侵害をしないためのこらしめとして〇〇〇円を請求すること」であるから、このシステムが民事裁判に導入されると、かなり高額な賠償額を請求する事が可能になる。

例えば、私の神崎川事故裁判では、請求金額は約1億4000万円で、生涯賃金、精神的慰謝料、葬儀費用、弁護士費用の合計だった。もし、“懲罰的損害賠償制度”があれば、この約1億4000万円に1億円の懲罰的損害賠償金をプラスして、計2億4000万円を請求するということが可能となる。

もし出版社の記事に権利侵害があったと主張する場合は、相手へのインパクトを大きくするべく、10億円の懲罰的損害賠償金をプラスするという戦略をとる人も増えるだろう。

2005.04.15

共同

011 2005.04.25 男児死亡 幼稚園長ら 逮捕 業務上過失致死容疑

2005年4月23日、新潟県警は、2002年1月に私立稚園で男児が遊具のひもを首に絡ませ死亡した事故で、園長、主任教諭、元助教諭の3容疑者を業務上過失致死容疑で逮捕した。園3人は容疑を否認している。

書類送検ではなく、なぜ逮捕なのだろう?

2005.04.23

共同

012 2005.04.29 日岳事故のご家族 追悼登山 約2年間訓練を経て 登山家らと

2005年3月20日、北アルプスの大日岳に、大日岳事故のご家族のうちのお二人(お父上)が無事に登頂した。

「挑戦しようとした一昨年はガイドに「技術面で冬山登山は無理」と反対され、昨年から富士山などで冬山登山の訓練を重ね」(3/19付け東京新聞富山版) た上での今回の挑戦だった。

管理人は、ここ数年、3月の事故現場を確認したいと思ってはいるのだが、室堂まで入山が容易になる5月以降ならまだしも、3月の北アルプスに向かうには十分な準備が必要なのでまだ目的を果せていない。

2005.03.19

東京新聞富山版

2005.0328

毎日

013 2005.04.29 大日岳事故第11回口頭弁論 講師の証人尋問日決る 6月15日に 

2005年4月20日、富山地方裁判所で大日岳事故の第11回口頭弁論があり、次回の6月15日に引率講師の証人尋問を行うことがきまった。

この日には、富山地裁に「早期の公正判決を求める署名」46788筆が大日岳事故のご家族らによって提出された。3年間の累計は15万897筆とのことである。

提訴が2002年なので、3年目で証人尋問(しかもはじめての)というペースでは、結審までには、まだ、かなりの歳月が必要かもしれない。

2005.04.20

KNBニュース

2005.04.22

大日岳遭難事故を考えるHP

014 2005.05.05 尼崎JR事故でのJR西日本らが取るべき姿勢を指摘 信楽高原鉄道事故の弁護士

2005年4月27日付けの中日新聞朝刊によると、中日新聞社は信楽高原鉄道事故の遺族側代理人だった佐藤健宗弁護士に尼崎JR事故の事故調査のポイントを取材し、JR西日本や事故調査委員会が取るべき姿勢として以下のような指摘を受けたとのことだ。

1.遺族が誰にも邪魔されることなく静かに家族を失った悲しみに暮れる環境を整備する。

2.遺族に対して事故の原因や背景事情について十分な説明を尽す

3.遺族同士の連係が密になるように積極的に支援する。

4.事故調査委員会に対しては、「なぜ家族が死ななければならなかったかを十分に説明し、自分たちがかやの外に置かれていない」と遺族が心から実感できるような配慮が求められる。

事故調査には少なくとも二つの目的があると思われる。一つは、少しでも正確なデータを集めて、これを科学的な手法によって分析して事故原因を究明し、直因はもちろん間接的な原因をも含めた考え得るすべての原因を除去することによって、今後の同様な事故の防止に資することである。これは、言わば「社会全体のための調査」と言えるかもしれない。

もう一つは、中日新聞記事が指摘しているように、「遺族のための調査」である。なぜそのような事態が発生してしまったのかを、それを知る事を望むご家族に対して、ご家族が納得のゆくまで説明することである。この目的については、あまり言及されないけれども、もし自分がその立場にあったらと考えてみれば、その重要性は容易に理解できるはずだ。

本当は、もう一歩進んで、ご家族が事故調査委員会へ参加する権利や全ての事故関連データにアクセスして、自ら事故を調査できる権利などについての検討されるべきと思う。少なくとも、公表前におけるご家族による査読は必要ではないだろうか。

ただし、説明責任を果すということは、何の根拠も示さずに、ただひたすらに「すべては主催者の責任です」と認めて謝罪する事などではないことは強調しておきたい。

真に誠意ある態度とは、事故情報の透明性と正確性の確保に努めた上で、この点については責任があると認識したものについては、科学的根拠を示してこれを率直に認め、「この点については責任はない」と判断したものについては、「言い訳をするのか」などという非論理的な非難にひるむことなく、何度でもデータと科学的根拠を示して、これを否定する姿勢にあると思う。

2005.04.27

中日新聞

015 2005.05.09 判例タイムズ1172 本多氏&故・疋田氏VS岩瀬氏の一審判決掲載 

判例タイムズ1172(2005.4.15)に、2005年3月に最高裁で確定した本多勝一さん&故・疋田桂一郎さんVS岩瀬達哉さんの名誉毀損訴訟の一審判決が掲載された。

表題の一つは「新聞記者のした旅行について,リクルートによる接待であるとの内容の雑誌記事が,重要な部分において真実性の証明がないとして,名誉毀損が成立するとされた事例」である。

「重要な部分において真実性の証明がない」という重要な部分のひとつは、岩瀬さんの記事の中で、岩瀬さんが本多さんたちは「旅行最終日に1人当たり約3万5000円を支払ったが, ホテル代とリフト代は一切払っていない」と書いた部分である。判決は本多さんたちは「1人当たり約4万5000円の旅行費用を支払っており,被告本多及び亡疋田が ホテル代とリフト代を一切払っていないとは認められない」と判示した。

ここで、あなたはこう思うかも知れない。「ということは、接待を受けていないってことなんじゃないの?」

この疑問が思い浮かぶのはは当然なのだけれど、しかし、そうではない。

なぜなら、判決は、次のようにものべているからである。

「リクルートが、本件スキーツアーに要した費用の一部を負担していることが認められ、これをリクルートによる接待ないし便宜的供与と言う言葉で表現することは、一般読者の読み方に照らし、何ら異とするに足りない」。

「本件スキーツアーは、1人当たり約7万円に上記の2日分の夕食代を加えた約9万円ないし10万円の費用を要したところ、本件スキーグループは、1人当たり約4万5000円を支払ったのみであるから、本件スキーツアーに要した費用のほぼ半額で済ませたといえる。」

要は、接待ないし便宜的供与を受けたのは事実だが、岩瀬さんの記事は、本多さんたちが受けた接待の明細についての記載に間違いがあるということなのだ。

半額分をリクルートに出してもらったことを本多さんたちは知らなかったことは本当らしいけれど、結果的には、1人当たり約4万5000円おごられてしまったわけなのだから、「特別扱いをしてもらったと言われても、やっぱり、それはやむおえないですよ」と言うのが一般市民としての管理人の感想である。

にもかかわらず、本多さんはご自分の記事で岩瀬さんを名指しで「カネで雇われた番犬・狂犬」「売春婦よりも本質的に下等な、人類最低の、真の意味で卑しい職業の連中」「捏造記事を書いた文筆業者」「飼い犬」と非難して、岩瀬さんの記事をねつ造とまで断定してしまったのだ・・・

よって、裁判所が、本多さんの記事は岩瀬さんに対する「人身攻撃」であると認定して賠償金の支払いを本多さんに命じたことは、「妥当としかいいようがないなあ」と管理人は考えている。

判例タイムズ

1172

016 2005.05.10 市が4千万円の支払いで和解へ 野外学習中の中学生死亡の落石事故

2005年5月10日、関市 (旧板取村) は、2001年6月、愛知県春日井市の中学2年の男子生徒が野外学習中に落石で死亡した事故で、春日井市と関市に対して、ご家族が計約5300万円の損害賠償を求めた訴訟で、和解する方針を決め、解決金4000万円を支払うとする議案を市議会に提出して可決された。

ご遺族もこの解決案を涼とする方針のようである。

なお、この学校事故については、引率教諭ら7人が業務上過失致死容疑で岐阜地検に書類送検されたが不起訴処分(2003年3月)となった。これを不服としたご遺族は、岐阜検察審査会に審査申し立てを行ったが、岐阜検察審査会は「不起訴処分としたことは相当である」と議決していた。

この理由は、「教諭らが現場を調査していたとしても、落石の危険を予測できたかについては疑問が残る。当時の小雨と風が落石を誘発したと推定はできるが、実際に小雨が落石を誘発したとは断定できず、教諭らの過失を問うことは困難と判断した。」とのことだった。

刑事責任があれば、民事責任を免れることはほとんど困難と思われる。しかし、刑事責任がなければ、必ず民事責任もないか、というとそうはならない。これは刑事裁判と民事裁判にはかなりの相違点があるからである。

紛争においては、判決ではなく和解を選択した方が、より良い解決が得られるケースが存在するという点には留意が必要である。

2005/05/20

共同通信

017 2005.06.19 大日岳遭難事故の真実を究明するつどい開催 かながわ県民センター

2005年5月8日、横浜駅近くのかながわ県民センターで、第2回「北アルプス大日岳遭難事故の真実を究明するつどい」が開催された。当サイト管理人は、かねてから、原告側の主張を直接聞いてみたいと考えていたので、このつどいに参加した。

第1部では、大日岳遭難訴訟主任代理人の中島嘉尚さんが、ビデオを交えて、裁判における争点や裁判の見通し等について講演し、続いて、登山家の重野たつじさんによる「大日岳遭難事故の考察」という演目の講演があった。第2部では、朗読とご遺族の訴えの後、全国勤労者山岳連盟理事長の斉藤義孝さん、神奈川勤労者山岳連盟の中山建夫さん、遭難した二君が所属する東京都立大学WVOBや神戸大学元WV顧問の方などが「つどいに寄せる言葉」を述べた。

公開の場で述べられた大日岳事故とその法的責任についての当サイト管理人の見解は変わらなかったけれども、東京都立大学WVの現役&OBの方々の両君への心からのエールと会場で購入して帰名中に読んだ「君のいない星にて」―内藤三恭司追悼文集―には深い感動を禁じ得ない。

本ニュース007などでもすでに言及したように、やはり、国や地方公共団体主催の講習会や研修会では、講習や研修中に損害が発生した場合には、たとえ主催者が無過失であっても損害の補償を可能にする無過失補償制度の創設が必要であると思う。

なぜなら、この制度下では、法的過失が存在しても不存在でも、補償金の支払いが可能になる。よって、少なくとも、国家賠償法1条1項に該当するかどうかをめぐっての国and/or地方公共団体VS原告の法的過失の有無についての争いは不発生となるはずだからである。

国家賠償法1条1項は以下のようである全文は例えば、ここを参照)。

国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失 によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ず る。

なお、昭和22年の衆参両院での国家賠償法案審議においても、すでに無過失責任主義の原理を採用すべきとの主張がなされている(西村宏一他編「国家補償法大系1」日本評論社, 1987, 172p)。

2005/05/08

参加

018 2005.06.19 大日岳の風下側雪構造の掘削調査実施 形成と崩落メカニズム解明に向けて

2005年4月17日から27日にかけて、北アルプスの大日岳の山頂付近で、雪氷学者と登山家ら約50人が、高さや長さが数十メートルに発達した風下側雪構造の掘削調査を実施した。

調査を行ったのは大日岳積雪地形研究会(代表幹事、斎藤惇生・元日本山岳会長)で、川田邦夫・富山大教授や飯田肇・立山カルデラ砂防博物館学芸課長、横山宏太郎・中央農業総合研究センター室長ら専門家をプロの山岳ガイドや日本山岳会員らが現地でサポートして行われた。

毎日新聞の2005年5月18日付朝刊(斎藤清明・総合地球環境学研究所教授(元毎日新聞専門編集委員)によると:

川田教授は「日本では雪庇の調査研究の実例は数少なく、巨大雪庇を手術するように内部調査したのは初めてだ。雪庇の形成過程などについて研究者、山岳関係者でも考え方が一致していないのが実情。こうした調査を通じて今後、雪庇の特性を明らかにしたい」と意気込んでいる。

2005/05/18

毎日

019 2005.06.19 大日岳遭難事故裁判 第12回口頭弁論 研修会主任講師の証人尋問 富山地裁

2005年6月15日午後1時半過ぎから午後5時過ぎ頃にかけて、富山地方裁判所第1号法廷で、大日岳遭難事故裁判の第12回口頭弁論があり、研修会の元主任講師山本一夫さんの証人尋問が行われた。

当日、富山地方裁判所には「傍聴券所持者に限り傍聴をすることができます。傍聴希望者は、当日午後0時45分までに庁舎西側ゲート前から掘りにそって・・お並びください。傍聴希望者が多数のときは抽選によって傍聴券を交付します。」という掲示がなされていた。

午後1時頃、傍聴券を求めて並んだ傍聴希望者は何度数えても100人を下らなかった。傍聴券は46席と聞いていたので、倍率は2倍を確実に上回り、もしかしたら3倍弱に達していたかもしれない。壷に入った30センチくらいの竹の棒を一本引く。先が赤の場合が「当たり」ということだった。

下記Blog「いつか晴れた日に」の6/18日付日記には、証言についての傍聴メモが掲載されている(当サイト管理人は反対尋問しか傍聴できなかった・・・)。

http://snowsense.blog9.fc2.com/blog-entry-26.html

また、この証人尋問についてのコメントが、HP「YASUHIROのマウンテンワールド」の下記「YASUHIROの独り言」の6/17日付日記にも掲載されている。

http://p2222.nsk.ne.jp/~turu/1hitori.html

次回の証人尋問は7月13日。午後1時半から、原告側証人の重野たつじさんと中山建夫さんの証人尋問が予定されている。傍聴券の抽選は必至だろう。

2005/06/15

傍聴

2005/06/16

毎日新聞

20 2005.06.21 過失と法的過失(民法709条の『過失』)の相違 ある登山事故報告書とその報道記事

2005年4月18日付の朝日新聞朝刊 (宮城版)に、「自ら省みて追悼集 リーダーのAさん出版 3年前、登山事故で女性死亡 」という見出しの記事が掲載された。(管理人註: Aさんは記事では実名表示だがAさんとした)。以下に、抜粋して引用すると:

1、「判断に過失があった。」リーダーは自分で自分の罪を認定した。引率した女性が仙台市の面白山 (標高1264メートル) で沢登りの途中、落石事故で亡くなった。事故から3年。追悼集をつくり、事故報告を書いた。刑事責任を問われたわけでも、遺族の非難を浴びたわけでもない。「逃げずに事実と向き合って生きる」と思い定めたことの表明だ。

2、警察は不可抗力の事故として処理した。

3、Aさんは当時の状況を振り返り「現場において、滝を登る組と (滝を迂回して登る) 高巻き組の2グループに別れて行動したことが今回の事故の誘因であり、これらを実行させたリーダーAの判断に過失があったと結論する」と書いた。

この記事を読んで二つのことが頭に浮かんだ。

第1は、「自分で自分の罪を認定した」あるいは「判断に過失があった」とAさん自身が認めているのだから、Aさんは賠償金を支払ったということかな、ということである。

なぜなら、例えば、車を運転していたぼくたちが、うっかり、停止している友達の車に追突し、友達の車を廃車にしてまったら、ぼくたちは支払いを申し出て、賠償金を支払うはずだと思うからである。(もちろん、友達が「賠償金はいらないよ」と言ってくれれば支払いは発生しないけれど、そのようなケースは稀なはずである。)

第2は、もしAさんが個人賠償責任保険に加入していて、その保険で賠償金を支払おうとしたと仮定して、「この事故の原因は私に過失があったからです。保険で賠償したいので保険金支払いの手続きをお願いします」と保険会社に頼んでも、保険会社がAさんの言い分を認めるとは限らない、「当社の判断ではAさんには法的過失はありません。つまり、法的責任がないということですから保険金はお支払いできません」となって、Aさんは自分の預貯金から支払うことになる可能性はかなりあるだろうな、ということだった。このケ-スでは、Aさんは、自らに課した道義的責任に基づいて支払いをなしたということになる。

ある登山者Xさんが「この登山事故の責任はリーダーの自分にある。保険で○○円相手側に支払ってほしい。」と保険会社に請求すれば、保険会社が「承知しました」と、二つ返事で、○○円全額を相手に支払ってくれるという考えを持っている人がいるとしたら、それは間違いである。

いくらXさんが「事故の全責任は自分にある」と判断しても、保険会社が「Xさんの過失は法的責任の領域にまで達している」と判断しない限り、保険会社は支払いに応じない。さらに、応じたとしても、保険会社による損害額の認定が○○円全額となるとは限らない。例えば、Xさんが1億円まで賠償できる保険に入っていて、相手からの請求が1000万円だったとする。しかし、保険会社が、Xさんの法的過失によって発生した損害の負担分は200万円と判断した場合は、200万円が相手側に支払われるだけである。もしこれに不服であれば、裁判所の判断を仰ぐ事になるだろう。

法的責任が認定されるためには、まず、Xさんの過失の程度が、その当時の引率登山のリーダーに要求される平均的な水準と比較して、「これはひどい」というレペルに達している、と裁判所が判断する必要がある。ここで、はじめて、Xさんの過失は民法709条の『過失』として認定されたことになる。しかし、まだ、「Xさんに法的責任あり」とはならない。もう一つ必要な要件がある。それは、この『過失』と発生した損害の間のそれ相応の因果関係である。この二つを裁判所が認定してはじめて「Xさんに法的責任あり」となるのだ。(本当はもう少しややこしいが省略する)。

当サイト管理人は、Aさんはもちろんだが、この記事を書いた記者は、日常用語の過失と法律用語の『過失』(法的過失)の相違についての認識が不十分であると思料するものである。

なお、国家賠償法一条一項の『過失』は、もちろん、民法709条の『過失』と同じく、法的過失のことである。よって、国又は公共団体が、損害を賠償する責に任じられるためには、少なくとも公務員の『過失』、つまり、法的過失が認定されなければならない。

2005/04/18

朝日宮城版

21 2005.07.18 大日岳遭難事故 第13回口頭弁論 原告側証人の証人尋問 富山地裁

2005年7月13日、富山地方裁判所で、大日岳遭難事故の第13回口頭弁論があり、原告側証人の中山建夫さんの証人尋問があった。当サイト管理人は傍聴券の当たりくじを引いて、午後一時半から行なわれたこの証人尋問を傍聴した。

この日の証言の中で、当サイト管理人が最も関心を持っていたのは以下の2点であった。

・雪庇と言う言葉をどのように定義されるのか。

・「雪庇の上に進入しないようにルートを選定することは最も基本的かつ重要な注意義務 である。」という原告側主張を、中山証人が一切の例外なしでYESと証言されるのか、あるいは、限定条件をつけてYESと証言されるのか。

なお、原告側は、雪庇とは、稜線から風下側の雪地形と定義している。また、注意義務とは、法律上の義務、つまり法的責任のことである。(当サイト管理人は、雪庇とは、稜線から風下側の雪地形の中のひさし部分のみを指し、吹き溜まり部分は雪庇とは呼称しないと考えていた。この用語の定義は未統一ということなのだろう。)

閑話休題。

中山証言は以下のようだった。

1、 雪庇とは「稜線から風下側に積もった雪地形全体」と認識している。

2、 風下側の雪地形への進入について、昭和43年の時点で、雪庇 (稜線から風下側に積もった雪地形全体) には進入してはならないと教えてもらった。昭和60年以降、講師の立場で参加している日本勤労者山岳連盟主催の雪崩講習会でも、「稜線から風下側には進入してはならない」と講習生に教えている。

3、 吹き溜まり部分にも進入しても近寄ってもならない。一切の例外はない。

ここで、雪山登山者の方にぜひ注目してほしい点がある。それは、「稜線から風下側の雪地形には進入してはならない」という中山証言に、なに一つ、限定条件がついていなかった点である。

つまり、中山証言は、「原則として稜線から風下側の雪地形には進入してはならないがこれこれの例外はある」という内容ではないし、「普通の冬山登山ならいざ知らず、研修会なのだから稜線から風下側の雪地形には進入してはならない」でもないのだ。つまり、中山証言は「冬山登山においては、何人たりとも、稜線から風下側の雪地形の上に進入しないようにルートを選定しなければならない」と解釈せざるをえないのである。

この中山証言についての当サイト管理人の解釈が間違っていない事は、国側代理人が、雪山登山者が吹き溜まりに乗っている写真が掲載された山岳雑誌やガイドブックのコピーを数枚示して、「これらの登山者の行為は登山界の経験則に反しているのか」と尋問したところ、間違っている、と証言されたことからも裏付けられるだろう。

なにしろ、中山証人に示された写真の一枚は、廣川健太郎著「チャレンジ!アルパインクライミング北アルプス編」東京新聞出版局のp27に掲載されている写真で、ここには白馬岳主稜の頂上直下の雪壁を登るクライマーと頂上付近の吹き溜まりに乗っている少なくとも二人の登山者が写っているのである。

今回の中山証言は、冬山登山の将来に対して重大な証言であるので、当サイト管理人の解釈による中山証人のご持論を以下に、もう一度、整理しておく。

その1、稜線から風下側の雪地形には進入してはならない。一切の例外はない。

その2、「その1」の対象は、研修会だけではなく、すべての冬山登山者である。

当サイト管理人は心底驚愕した。特に、「その2」については、今も信じ難い。「たしかに、一般登山者は、これらの写真のように雪庇に乗る事もしばしばあります。しかしながら、大日岳研修会は普通の冬山登山などではなく、安全第一の研修会なのですから、絶対に雪庇に進入してはならないのです」とご証言されると思っていた。

もちろん、中山証言に承服することは不可能である。なにしろ、積雪期の白馬岳主稜というコース自体が間違っている、というご証言なのだ。

「冬山登山においては、いかなる場合も、稜線から風下側の雪地形に進入しないようにすべきである、などという登山の経験則は不存在である」と当サイト管理人は強く主張する。

しかるべく対応してゆきたい。

追記

この日予定されていたもう一人の原告側証人の尋問は時間切れのため次回に延期された。次回は8月31日午後一時半からである。

2005/07/17

富山地裁で傍聴

22 2005.07.21 大日岳遭難事故 裁判所の証人調書とBlogの証言メモの相違 少なくとも4カ所

2005年7月14日、当サイト管理人は、富山地方裁判所で大日岳遭難事故の民事訴訟記録を閲覧した。この理由の一つは、前回の口頭弁論期日に当サイト管理人が傍聴してメモした反対尋問とBlog「いつか晴れた日に」公開中の【反対尋問】メモとの間の大意を比較してみたところ不整合部分がいくつかあったからだ。しかし、当サイト管理人は、自分の性格をよく知っているだけに、自分のメモには今一つ自信がなかった。それで、裁判所作成の証人調書で確かめたかったのである。

最初は、「利害関係の存在を疎明して、証人調書を謄写か複写を」と願っていたので、その旨それとなく申し出てみたが、法律上の利害関係はやはり不存在だった。それで、結局、かなり古ぼけてきた当サイト管理人の頭にメモする次第となった。

以下に、閲覧した当サイト管理人の記憶等に照らし、上記Blog中の証言メモと裁判所作成の証人調書記載の証言内容が、その大意においても明らかに異なる部分4点を示す。(もちろん、一言一句まで同じではない、あくまでも大意を示した)。

その1
まず、上記Blogの「~雪庇と吹きだまりの認識~」から、「雪庇に進入しないのは、冬山登山一般ではなく、研修会においては、という意味だ」という「研修会においては」という言葉が抜けていた。以下はその欠落部分の一部。

原告側弁護士A: 陳述書に、雪庇に乗る事はしないとあるが、これはどこでしょうか? 「吹き溜まり部分も含めた部分に入る事は山に登るものとして絶対にしない」と、そう言う意味でお書きになっている、それでよろしいのですね。
証人: いや、違います。

原告側弁護士A: では、どう言う意味なのですか?
証人: これは、研修会においては、と言う意味です。

原告側弁護士A: 「山に登るものが・・・」と書いてあるでしょう!・・
証人:違います。

原告側弁護士A: どう違うのですか?
証人:研修会の性格上、吹き溜まりも含めた雪庇の上には進入しないということです。

その1についての管理人による註:

この尋問で原告側弁護士A氏は「研修会だけではなく冬山登山一般においても、稜線から風下側の雪地形に進入することは、山に登るものとして絶対にしない」との証言を証人から引き出そうとした。しかし、証人がハッキリ否定したように、そもそも、冬山登山一般に、そのような法的義務は不存在である。この点は、当サイト管理人も強く主張するところだし、冬山登山や雪山滑走を実戦する者なら誰しも絶対に譲れない一線のはずだ。

仮に、「冬山では稜線から風下側の雪地形に進入しないようにする注意義務」という不当な法的義務がすべての冬山入山者に課せられたら、稜線から風下側を通過する登山者、山スキーヤー&スノーボーダーは、それがガイドツアーや講習会ではない自主登山であったとしても全員が違法行為をしていることになってしまう。また、この法的義務を厳密に適用すると、稜線から風下側の雪地形を通過する冬山コース、例えば、白馬主稜はコース自体が「違法コース」となりかねないのだ。

「冬山において、すべての登山者は稜線から風下側の雪地形に進入しない法律上の義務が課せられている」というような主張には絶対に服従できない。この不当な法的義務があたかも存在しているかのように唱える方々に対しては全力でインティファ-ダしてゆきたい。

その2
2つ目の相違点は、上記Blogの【反対尋問】中の「~雪庇の認識~」の第4パラグラフにあった。まず、上記Blogでは以下のようである。

山頂付近にある三角点を見たことありますか?
「ありません」

事故の翌年の3月の調査でも三角点は雪面に出ているのですが、それを見たことがないのですか?
「ありません」

しかし、ここは、正しくは以下のようである。

原告側弁護士A: この時、三角点はどうやって特定しましたか?
証人: 出ていました。

原告側弁護士A: 事故の翌年の3月の調査でも三角点は見えていたということでよろしいか?
証人: はい。

その3
第3の相違点は、上記Blogの【反対尋問】中の「~その他~」で、マスコミに対して、証人が雪庇は「2~3mでした」と答えたというところだった。Blogでは、以下のようになっている。

これまで、雪庇の大きさについて10数mという言葉がたくさん出てくるのですが、事故後のマスコミのインタビュー等を見ていきますと「2~3mでした」という言葉ばかりで「10数m」という言葉は、一切出てこないのですが、事故当時は、雪庇の大きさについて、その程度の規模の認識しかなかったのではないですか?
「なにをどのように話をしたのかよく覚えていないのでわかりませんが、経験則の中で10数mという認識にいたのは確かです」

しかし、正しくは以下のようだった。

原告側弁護士A: 記者会見で、雪庇の大きさを聞かれましたか?
証人:あまり記憶にありません。

原告側弁護士A: 大きさを間違えて、2-3mと答えたのではないですか?
証人:ひさしは2-3mと言いました。

原告側弁護士A: 雪庇の大きさはどのくらいかと聞かれて、あなたは、ひさしのことを答えたわけですか?
証人: そうだと思います。

原告側弁護士A: そうすると、あなたのその時の認識は、雪庇はひさし部分だけとしか思っていなかったということになるのですか?
証人: いや、そんなことはありません。

原告側弁護士A: 10mと言う話はどこにも出てこないんですけど
証人: ですから、(2-3mと答えたのは) たぶん、ひさしの部分だと思います。

その4
最後の相違点は、以下の部分である。上記Blogの【反対尋問】中の「~その他~」では:

今後、語り部となるとおっしゃっていますが、事故の反省をどのように考えていますか?「自分は一線を退いた身なので、反省は文登研が主体でやるべきの(ママ)ことと思います」

しかし、実際は:

原告側弁護士B: 今後、大日岳で厳冬期の研修会をする時はどうやって行なうべきとお考えですか?
証人: 私は引退した身ですので、再開するかどうか、もし再開したらどうするのか、そういったことは文登研や講師の人たちが考えて行くことかな、と思います。

なお、当サイト管理人は、最初、上記Blog「いつか晴れた日に」に直接問い合わせようとしたが上記Blogはメール先が未記載のようだった。また、コメントとトラックパックも、操作ミスのせいか、ここ数日間、何度も試みたがエラーとなってしまった、涙。マンガ喫茶やら実家やらからもトライしたがうまくいかなかった (2005.7.19現在)。もしこのニュースを目に止めていただいて、問い合わせ先and/orやり方をお教え願えれば幸甚である。

謝辞: 当サイト管理人の閲覧申請に懇切丁寧に対応して頂いた裁判所の職員の方々に深謝いたします。ありがとうございました。

2005/06/15

富山地裁で傍聴

2005/07/14

富山地裁で閲覧

23 2005.07.23 屋久島沢登り事故の元ガイド 業務上過失致死傷の罪の疑いで起訴 鹿児島地検

2005年7月21日付けのMBCニュースによれば:

2005年7月21日、鹿児島地方検察庁は、昨年の5月に屋久島で沢登りツアーの参加者4人のうち3人が死亡し、一人が重傷を負った事故 (本ニュースN0.13 in 2004参照) で、ツアーを引率していた山岳ガイドの男性を業務上過失致死傷の罪で起訴した。

なお、鹿児島県警によるこの男性の業務上過失致死傷と旅行業法違反の疑いでの書類送検は、2005年2月15日だった(本ニュースN0.02 in 2004参照)。

2005/07/21

MBCニュース

24 2005.09.01 係争中の裁判書面のHP公開に抗議 女性団体がNHKに抗議文 

2005年7月26日付けの共同通信によれば:

2005年7月26日、女性団体「『戦争と女性への暴力』日本ネットワーク」(東京)と弁護団 (NHKの従軍慰安婦の番組の改編について、NHKなどに損害賠償を求め裁判中)は
NHKが控訴審での準備書面をホームページ(HP)に掲載したのは一方的で不当として、削除などを求める抗議文をNHKに提出した。

西野瑠美子・同ネットワーク共同代表は「これから裁判で審理される書面を掲載するのは、既成事実化するもので問題がある」と指摘した。

裁判官と傍聴人のいる公開された法廷で、お互いの言い分を思う存分言い合って、裁判官に判断してもらいましょう、は裁判の原則です。しかし、一切の例外なし、とまではなりませんから、抗議することも一つの選択と思います。

ただし、この「抗議」が報道されることで、その準備書面の存在が、それまでよりも多くの人の目に触れるという問題があります。例えば、当サイト管理人も、この女性団体が抗議したという報道がなければ、知らないままでしたし・・・

2005/07/26

共同通信

25 2005.09.01 大日岳遭難事故 第14回口頭弁論 原告&被告双方の登山家証人尋問 富山地裁

2005年8月31日13時30分頃から、富山地方裁判所で、大日岳遭難事故の第14回口頭弁論があり、原告側証人の登山家の証人尋問と国側証人の登山家の証人尋問があった。終了したのは17時12分頃。

尋問内容は、雪庇の定義、主稜線の風下側への進入、大日岳への登頂方法、主稜線の確保方法、大日岳山頂付近にできる(吹き溜まり+ひさし)の規模、研修会の性質などだった(内容については今日中に本ニュースで一部掲載予定、あくまで予定・・)。

次回は、2005年10月12日13時30分からとなった。国側が申請していたもう一人の登山家と原告のお二人の証人尋問が行なわれる。

なお、講習生の証人(原告側申請)と雪氷学の専門家(国側申請)の証人は採用されないことになった。私見では、次回で証人尋問は終了と思われる。

次回以後については、例えば、神崎川裁判は、証人尋問終了後に、すぐ結審となった。一方、弘前大学医学部山岳部訴訟は、証人尋問終了後に、裁判所から和解勧告があって、数回、話し合いがもたれた (和解勧告は新しい裁判長)。しかし、結果的にこの和解は不調となった。その後は、双方から最終準備書面提出→結審→判決となった。

2005/08/31

富山地裁で傍聴

26 2005.09.01 雪庇の定義と雪庇の進入の是非 証人間での認識に相違 大日岳遭難事故裁判 

本ニュースNo.21にも書きましたが、当サイト管理人が、大日岳事故訴訟での登山家への証人尋問で最も関心を持っているのは以下の2点です。

1、そもそも、雪地形における雪庇とは、厳密には、どの部位を示すと認識しているのか?

2、雪庇へ進入することの是非についてはどう認識しているのか?

2について、もう少し具体的に説明します。

これは、雪庇について正確に定義した後に、もし雪庇に進入してはならない雪山登山の形態があると仮定し、雪山登山を自主登山 (例えば社会人山岳会や大学山岳部)と引率登山 (例えば、経験者が初心者を引率する登山や有料のガイド登山や講習会)に分類した場合に、どのタイプの登山においては雪庇へ進入してはならないと認識しているのか? ということです。

ここで、引率登山の中で、大日岳研修会を別格として扱う可能性もあることを考慮すると、雪庇へ進入することの是非についての代表的な認識は以下のようになります (もちろん他の認識もあります、あくまで代表例として紹介します)。

A. すべての雪山登山においては、雪庇に進入してはならない、例外はない。

B. 自主登山においては、雪庇に進入してはならないとは認識していない。雪庇に進入することはある。しかし、引率登山においては雪庇に進入してはならない、例外はない。

C. 自主登山においては、雪庇に進入してはならないとは認識していない。雪庇に進入することはある。また、すべての引率登山においては、雪庇に進入してはならない、例外はない、とまでは認識していない。引率登山でも雪庇に進入することはあり得る。しかし、大日岳研修会においては、その性格を考慮すると、一切雪庇に進入してはならない登山に該当する。

D. 自主登山においても引率登山においても、雪庇に進入してはならない、一切の例外はないとは認識していない。言い換えれば、どちらでも、雪庇に進入することはありうるということである。また、大日岳研修会においても、その性格を考慮したとしても、雪庇に進入してはならないとまでは認識していない。

大日岳事故裁判における原告の主張は上記Aで、中山証人の証言の主旨も上記Aであったと言うのが当サイト管理人の理解です。(原告&中山証人の雪庇認識は、雪庇 = 稜線の風下側の雪地形全体)。

さて、本ニュースにおいては、上記に関連する部分についてのみ、8/31日の証人尋問のやりとりを要約して掲載します。まず、原告側証人の重野太肚二さんの証言の主旨から紹介します。

1について
稜線に風が吹いて風下側に雪の構造物ができます。この全体を雪庇と認識しています。形状はひさしと付け根に分けることができますが、付け根が大きく発達すると吹き溜まりという呼称になります。ひさしと吹き溜まりを含めて雪庇であるということです。風下側にできた雪の構造物の全てのことを雪庇と言います。

つまり、重野さんの雪庇の定義は、雪庇 = 稜線の風下側の雪地形全体 = 吹き溜まり (主稜線直近の吹き溜まり) + ひさし ということになります。以下、この雪地形は「雪庇」と書きます。

2について
「雪庇」に入ってはいけない、稜線から風下側にできる雪の構造物に入ってはいけない、これらは、昭和3?年(昭和30年代後半と思われます) に、社会人山岳会に入り、そこで、先輩から「「雪庇」は壊れやすいので入ってはいけない」と教えられ、それを実行し、後輩にも指導しました。原則として「雪庇」に入ってはいけません。ひさしはダメだが吹き溜まりは乗っても良い、ということはではありません。吹き溜まりが乗っても良い所とは考えられません。「雪庇」の上には入らない、乗らない、が原則です。

一方、国側証人の佐伯郁夫さんの証言の主旨は以下のようでした。

1について
雪庇とは雪が尾根からひさし状になったものです。稜線から風下側の雪地形のうちでひさしの所を雪庇といいますから、稜線からひさしの手前までは雪庇とは言わないと認識しています。この認識は、大日岳事故当時、登山界で一般的な認識だったと思います。雪庇 = 吹き溜まり or 雪庇 = 吹き溜まり + ひさしという定義には違和感があります。

つまり、佐伯さんの雪庇の定義は、雪庇 = 稜線の風下側の雪地形中のひさし となり、 稜線からひさしの手前 = 吹き溜まり ということになります。

2について
登山界には雪庇に乗るなという経験則があります。この意味は、ひさしとその付近には乗るなということです。この認識は大日岳事故当時において登山界で一般的だったと思います。稜線からひさしの手前までの吹き溜まりの上を歩くことはよくあることです。稜線から風下側の雪地形に進入してはいけない、とは考えてはいません。ただし、不安定な吹き溜まりは恐ろしいです。

もちろん、当サイト管理人の1と2についての認識は、すでに公表してきたように、佐伯さんとほとんど同じです。

少なくとも、当サイト管理人は、「すべての冬山登山においては、稜線から風下側の雪地形に進入しないようにすべき注意義務がある」という主張は、積雪期登山における登山者の自由を大幅に規制する意見であると思います。今後も全力で反証していかなければならないと思料します。

なお、以下は、上記2の争点に関連する国の代理人による反対尋問に対しての重野さんの証言の大意です(どちらも完全にはメモできませんでした、乞御海容)。

国の代理人: 吹き溜まりには一歩たりとも進入してはだめですか?

重野さん: いいえ。「雪庇」をコースにすることが安全という選択はあり得ます。その場合は「雪庇」に乗ります。崩れるかもしれないと自覚してあえて乗ることもあります。一人一人スピーディに通過します。

国の代理人: (原告側証人の実施した) 白馬主稜でのガイド登山では、稜線を確認する様々な手法 (原告側証人が主張している) を用いて稜線を確認しながら登られたのですか?

重野さん: ここは、両雪庇・・・。稜線をたどっていればそれで良いとは言えません。「雪庇」も含めて登らないとダメです。主稜線をたどることに意味はありません・・・

つまり、この点については、原告側証人の中山さんと重野さんの間においても証言が異なっていたということです。

2005/08/31

富山地裁で傍聴

27 2005.09.07 屋久島の沢登り事故初公判 PC&プロジェクター活用 鹿児島地検

2005年9月1日、鹿児島地裁(大原英雄裁判官)で、鹿児島県・屋久島での沢登りツアーに参加していた参加者が死亡した事故について、この沢登りツアーを企画・実施して、業務上過失致死傷罪に問われた元山岳ガイドの男性の初公判が開かれ、この男性は「間違いありません」と起訴事実を認めたとのことである。

9月1日18時26分付けの共同通信によると、

検察側は冒頭陳述で、パソコンを使って実況見分の写真や事故現場の状況を描いた図を法廷内の大型スクリーンに提示。川が増水して被害者が流される状況などを再現し「被告は危険を認識しながら沢登りを強行した」と指摘した。鹿児島地検によると、裁判員制度の導入を意識し、事故状況をイメージしやすくするための試みだという。

法廷でPC&プロジェクターの使用はとても有効だと思います。

例えば、証人尋問で、「X号証の写真Xを示します、この写真のここに岩がありますね、こちらには樹木がありますね」と、代理人が証人を尋問しても、裁判長の位置からは、その写真Xが手元にあるとはいえ、その写真のどこを示しているのかまでは見えないようです。まして、傍聴席からは、なんのことやらまったくわかりません・・・・

なお、この事故の概要は以下のとおりでした。

2004年05月04日、屋久島の屋久町麦生の千尋滝上流(鯛ノ川)で、山岳ガイドの男性が募集した3泊4日沢登りツアーに参加していた4名の参加者のうち3名が遭難した (1名の参加者と山岳ガイドは救助された)。3人の死因は、司法解剖の結果、水死の可能性が高いことがわかった。

2005/09/01

共同通信

28 2005.09.07 「車を傷つけた猫?の飼い主?は修理代を払え」と訴え 話し合い等は省略

Blog「【実録】ネコ裁判 「猫が訴えられました。」」によると、駐車場に止めてあった自分の車が傷ついたのは、ネコの爪のせいであるとして、このネコの飼い主と判断した男性に対し、(1)会ったり電話したりして善処をお願いする、(2)手紙を出して警告する、(3)内容証明郵便で賠償を請求し、応じなければ法的手段も、という意思を明示する、などの対応を省略して、簡易裁判所に訴えた事案の裁判が、ある地方の簡易裁判所で行なわれているようである。

原告の請求は以下のようらしい。

1原告は平成17年3月始め頃から被告住所地の北側で隣接する駐車場を利用し車を駐車している。

2被告は同人住所地で猫を飼っており、同時期頃からその猫が原告の自動車の上にたびたび登り。その爪で同車に傷をつけた。また被告の子息が無断で駐車場に侵入し猫との遊び場にしている。

3これによって原告は自動車の修理代金として1,100,758円の損害を被った。

4よって民法718条により原告に対し金1,100,758円及び平成17年4月20日から支払済みまで年5分の損害金の支払いを求める。

2004年以前だと、簡易裁判所で取り扱ってもらえる金額90万円までだったので、このケースは、地方裁判所に訴える必要があったのだが、2004年からは、簡易裁判所での取り扱い140万円までに引き上げられた。

簡易裁判所は、比較的単純な事件(民事事件も刑事事件も)を簡易迅速に解決することを目的として作られた裁判所なので、地方裁判所に比べて、弁護士なしの裁判が、かなりしやすい裁判所である (もちろん地方裁判所でも弁護士なしの本人訴訟は可能)。

話し合いでの解決を模索するのではなく、いきなり、裁判所の判断を仰ごうというのも、論理的には、一つの見識ではある・・・当サイト管理人は、話し合い→手紙→内容証明郵便→調停/提訴という手順を踏むけれども・・・

登山事故でも、今後は、”いきなり訴状送達”というケースが増加するかもしれない。

2005/09/07

【実録】ネコ裁判 「猫が訴えられました。」

29 2005.09.09 「試食ラーメンの手渡しで火傷」と訴え 約85万円の支払い命令 高松地裁

2005年9月8日、高松地裁の森実将人裁判官は、「日清食品」(本社・大阪市)とイベント企画会社「ベーシック」(同)が主催したカップラーメンの試食会で、販売宣伝員が当時4才の女児にラーメンを手渡したところ、女児が過って右太ももにラーメンをこぼし、女児が火傷をおった事故について、女児の両親が「日清食品」とイベント企画会社に慰謝料など約170万円を求めた損害賠償訴訟で、「熱湯の入った試食品を幼児に直接手渡すのは、危険性が高い」と宣伝員の過失を認定し、計約85万円の支いを両社に命じた。

9月8日付けの毎日新聞HPによると:

判決では、昨年2月22日午前、高松市十川東町のスーパーであったラーメン試食会で、商品宣伝員が当時4歳の女児にラーメンを手渡した。女児が過って右太ももにこぼし、宣伝員は冷たいタオルで女児の足を冷やした。一緒にいた母親は帰宅後に救急車で女児を病院に搬送したが、女児の右太ももには薄くあざが残った。

日清食品などは、宣伝員に対し、幼児には試食品を手渡さないよう指導。宣伝員は、ベンチに座った母親と女児の妹の間にラーメンを置いたなどと主張していた。森実裁判官は「宣伝員の証言は記憶が混同している可能性を否定できない」などと退けた。日清食品は「判決の内容を確認していないのでコメントは差し控えたい」としている。

たしか、アメリカで、マクドナルドのコーヒー(80度以上)で大火傷をした70代後半の御婦人がマクドナルドを訴えた裁判では、火傷の賠償金は20万ドルだったのですが、20%は御婦人にも責任があるとして20%減額され実際は16万ドルと認定されたようです。しかしながら、アメリカでは懲罰的賠償金も請求できるので、この分もあわせると、陪審員達がマクドナルドに支払うように命じた賠償金の総額は約300万ドルだったようです。

この話。裁判記録を読むと納得できる話であるというコメントがネットに掲載されていたので調べてみようと考えています。

ここまで書いて来て、テントの中でお湯の入ったコッヘルをひっくり返して火傷する事故がかなりあることを思い出しました。

このケースでは、火傷を負わされた人は、主催者、リーダー、コッヘルをひっくり返した人を相手取って、損害賠償請求をすることが可能と思います。請求額が140万円以下なら、簡易裁判所に訴えて簡易迅速に解決するという選択もあります・・・

2005/09/08

毎日

30 2005.10.16 大日岳遭難事故 第15回口頭弁論 富山地裁 証人尋問終了

2005年10月12日、富山地方裁判所で、大日岳遭難事故の第15回口頭弁論があった。10月13日の毎日新聞と読売新聞によれば、4名の原告のうち、お二人の証人尋問が行なわれたとのことである。

次回の口頭弁論期日は、2006年1月11日に行なわれる。10月13日の読売新聞によれば、この日に、原告・被告双方が最終弁論を行なって結審し、判決が2006年3月29日に言い渡されるとのことである。

なお、どちらの新聞も、国側が申請したもう一人の登山家の証人の証言についてはまったく言及していない。が、この証言については、blog「いつか晴れた日に」の10月16日付けの日記に、傍聴メモとコメントが公開されている。

追記(10.16.17:15、10.16.23:10一部改訂)

上記のblog「いつか晴れた日に」には大日岳遭難事故の第13回口頭弁論での主任講師を務めた登山家の証言メモも掲載されている。ただし、当サイト管理人が、富山地方裁判所で民事訴訟記録を閲覧したところ、「いつか晴れた日に」中の主任講師証言メモと裁判所作成の主任講師の証人調書記載の証言内容が、その大意においても、明らかに異なる部分が4点あった(本ニュースNo.22参照)。

証言の正確なメモはとても困難な作業である。最終的には、やはり、裁判所作成のの証人調書にあたるしかない。機会を見て今回の証言の証人調書にも目を通して報告したいと考えている。

2005/10/13

毎日

読売

31 2005.11.10 厚労省 医療事故の「事故調査委」設置に向け医師法改正案 国会提出 来年

2005年11月9日、厚生労働省の検討会は、医療事故の調査に強制力のある「事故調査委員会」の新設や、処分医師の再教育義務付けなどを盛り込んだ改革案をまとめた。この案は来年の通常国会提出される。

2005/11/09の共同通信ニュースによると:「改革案では、飛行機や列車事故の原因を究明する「事故調」の医療版を新設。迅速な処分のために、調査に強制力を持たせて病院の立ち入り検査や、カルテの提出、関係者の事情聴取ができるようにする。」とのことである。

一方、登山事故の事故調査の現状は以下のようである。

(1)非営利型の自主登山事故では、事故調査は事故当事者による自主的な調査が主流である(山岳雑誌や個人が検証を行なうケースも稀にはある)。したがって、事故調査そのものが行なわれないケースも多々ある。

(2)営利型の登山や引率登山(営利型だけではなく非営利型の場合でも) は、刑事責任の成立の可能性のある重大事故については、警察による強制力のある捜査が実施される。

登山事故においても、事故防止を目的とした強制力ある「事故調査委員会」の新設は有意味であると思う。近い将来、山岳ガイドの国家資格化や処分山岳ガイドの再教育務付けなどを盛り込んだ法的枠組みの形成についての議論が行なわれるようになるものと思われる。

2005/11/09

共同通信

32 2005.11.12 「手術ミス」告発医師に550万円の賠償命令 「手術ミスと信じる理由なし」

2005年11月9日、東京高等裁判所で、手術を受けた女性が死亡したのは執刀医の手術ミスであると読売新聞記者などに内部告発した医師 (手術助手を務めた) に対して、「手術ミスを隠したと虚偽の情報をマスコミに流され、名誉を傷つけられた」と執刀医などが計3000万円の賠償を求めた訴訟の控訴審判決があった。

一審判決は、「手術ミスはなかった」が「内部告発した医師が手術ミスがあったと信じた相応の理由があった」と認定して名誉棄損を認めなかったけれども、控訴審の江見弘武裁判長は、「手術ミスはなかった」し、かつ、「内部告発した医師が手術ミスがあったと信じてしまうようなやむおえない理由もなかった」と認定し、計550万円の賠償金を支払うよう内部告発した医師に命じた。

内部告発した医師 は上告するようなので、最終的な結論は最高裁の判断を待つことになる。

上記と同様のケースは登山事故についても想定可能である。

ある山岳ツアーで事故が発生してツアー客が死亡し、チーフガイドとツアー会社は「注意義務は尽した。事故は予見不可能で不可抗力だった」と主張したとしよう。ここで、このツアーに参加したあるアシスタントガイドが「事故は予見可能だった。事故はチーフガイドの重大な判断ミスによるものだった」とマスコミやHPで告発したとする。

この事故で、遺族がチーフガイドとツアー会社に損害賠償を請求した裁判が行なわれ、裁判所が、「注意義務は尽していた。事故は予見不可能で不可抗力だった。」と判断し、最終的に、この判決が確定したとする。この場合、チーフガイドとツアー会社が、「重大な判断ミスがあったという虚偽の情報をマスコミゃネットに流され、名誉を傷つけられた」としてこのアシスタントガイドに損害賠償を請求する可能性はかなり高いだろう。

この場合、すでに「チーフガイドとツアー会社は注意義務は尽していた。事故は予見不可能で不可抗力だった」とする判決は確定してしまっているので、この認定の逆転はかなり困難だろう。よって、このアシスタントガイドが損害賠償金を支払わずにすむためには、「自分は、事故はチーフガイドの重大な判断ミスによるもので、事故は予見可能だったと判断してしまったが、それにはこれこれのやむおえない事情があった」を証明しなければならないということになる。

かくて、ある事故について、「この事故は予見可能だった。事故は主催者の重大な判断ミスによるものだ」と公の場で告発する場合は、自分の主張を支える根拠と論拠に留意し、名誉毀損裁判に耐え得るかどうかを常に吟味しておかなければならない。もちろん、告発内容中の事実の間違いが判明した場合は速やかに訂正しなければならないし、根拠や論拠に対する質問や反論については真摯な対応が求められる。

2005/11/09

読売新聞

33 2005.12.31 日本の民事訴訟の最大の難点は偽証の多さ 判例タイムズ

「口頭弁論の準備はこのままでよいか」(木川統一郎著)というタイトルの論文が、(上)(下)の2回に分けて判例タイムズ1181号(2005年8月15日刊)と同1185号(2005年10月15日刊)に各々掲載された。

この論文の(下)に「偽証の多い日本の民事訴訟」(64頁)というかなり暗澹たる気持ちになる項目があった。以下に引用してみたい。

日本の民事訴訟の最大の難点は偽証の多いことである。私見によれば、それは訴訟遅延よりもはるかに重大な弱点である。最近、50年間の弁護士生活を終えて引退しようとする友人から, 「お前の最近の研究テーマ (民事鑑定) は間違っている。偽証ができないシステムをまず研究すべきだ。今まで50年間弁護士をやったが, 法廷は嘘の市場となっている。空しい。本人も証人も陳述書に嘘を沢山書いて, 証人尋問はまるで茶番だ。何とかならないのか」と。・・・民事法廷が偽証や嘘の証言によって汚染されていることは, 日本の弁護士の多くが知っているところである。・・・(木川統一郎, 2005)

この記載が、匿名ブログや匿名掲示板の書き込みではなく、日本を代表する法律専門誌の署名記事(著者は弁護士・法学博士)であることの意味は深刻である。

汚染がそれほど大きいのなら、このHPで何度か述べたように、陳述書と証言調書を積極的に情報公開することは汚染防止のための有効な手段の一つとなると思う。なぜなら、次の2つのケースではかなり異なった結果が予想されるからである。(1) 自分の陳述書や証言がインターネット上に公開されて同業者や関係者の眼に触れることがあらかじめわかっていた場合(2) ごく一部の関係者の眼にしか触れないとあらかじめわかっていた場合。

本HPでは、弘前大学医学部山岳部遭難訴訟における本多勝一さんの意見書への批判を行なってきたが、できれば、この意見書全文を本HPで公開したいと考えている。問題は、引用ではなく全文公開となるとご本人の了解が必要かも知れないと言う点である。この点は少し調べたい。もし著作権法や意見書公開についての判例をご存じの方がいたらぜひ御教示をたまわりたい。

また、大日岳遭難事故については、結審の後に、登山家の陳述書と証言をインターネット上で引用し、論評してゆきたいと思う。もちろん、すでに法廷で陳述された私の意見書についてもみなさんのご批評を仰ぎたいと考えている。

判例タイムズ1185号

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