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本HP関連ニュース2003

登山事故裁判関連ニュース2003

精度については努力していますが、正確な事実関係については自己責任でお確かめ下さるようお願いいたします。より正確な事実関係や詳しい情報がありましたらお知らせ下さい。

なお、整理の関係上、掲載順は「ニュースと情報の発生」の時系列に沿わない場合があります。乞御海容。
No.
本頁掲載日
内容
情報源
001 2003.01.27 弘前大学医学部山岳部訴訟控訴審結審 判決は2003年3月12日

2003年1月15日午後、弘前大学医学部山岳部訴訟控訴審の口頭弁論があった。控訴人側は準備書面(3)を陳述し、甲97-102号の証拠を提出した。さらに、控訴人側は、ある山岳関係者の証人申請を行なった。しかし、裁判所はこの証人申請を認めず裁判は結審した。判決は2003年3月12日である。

この裁判は今後の登山事故訴訟に大きな影響を与えると思料する。また、裁判では山岳関係者の意見書が複数提出された。これらの意見書は今後の我が国における登山事故についての法的責任を考えてゆく上での貴重なデータとなるだろう。事案の公共性に鑑み、本ページでも順次公開して行く予定である。

2003.01.15

法廷で傍聴

002 2003.01.27 スキー場 死亡事故 境界ロープに衝突   

2003年1月21日、秋田県の町営スキー場で、地元のスキースポーツ少年団のメンバーと一緒に、指導資格を持ったボランティアの指導の元でスキーの練習をしていた小学生が意識を失った状態で発見された。警察は、首の損傷の様子からコースの境界用に設置されたロープ(工事用ロープが高さ1メートル程度でスノーボードコースとの境に張られていた)に首を引っかけて転倒したと判断しているようだ。

2003.01.22

読売

003 2003.01.27 盗難通帳 偽印見逃しは銀行の法的責任 名古屋高裁逆転判決

1月21日、名古屋高裁は、盗難預金通帳と偽造印で680万円が引き出されたのは、銀行のミスであると認定して、全額を支払うよう銀行に命じた。

原告は、「行員が印鑑の照合を十分に行わなかった」として提訴していたが、2001年9月の名古屋地裁判決は「届け出印と偽造印の相違はわずかなものであり、一目瞭然に偽造であるとは判断できない」として原告の請求を退けていた。

名古屋高裁の田村洋三裁判長は「当時から盗難通帳による払い戻し請求が多発して社会問題化し、対策が検討されるようになりつつあった」とし、「より慎重に印鑑照合を行えば、偽造印と気づくことができた」などと銀行側のミスを指摘して一審判決を覆した。

2003.01.22

中日

004 2003.02.02 患者の権利法をつくる会 医療事故報告の義務化を提言する意見書を提出 厚生労働省へ 

「患者の権利法をつくる会」は、医療事故の報告を義務化して情報を一元的に管理する第三者機関を設置すべきとの意見書をまとめて厚生労働省に提出した。医師や弁護士からなる同会は、事故の隠ぺい体質を考えれば、報告の義務化は不可欠と指摘する意見書を提出した。

2003.01.30

毎日

005 2003.02.02 箱ブランコ訴訟、「メーカーに責任なし」 最高裁で確定

2003年1月30日、最高裁第1小法廷は、構造に欠陥のあるで遊んでいてケガをしたのは「箱ブランコ」の構造的欠陥によるものとして、女子中学生が、ブランコを製造した遊具メーカーと設置者の同市に計約410万円の損害賠償を求めた訴訟で、中学生側の上告を棄却し、「箱ブランコが安全性を欠いていたとは言えない」と判断した高裁判決が確定した。

中学生側は「地面とブランコの間が狭く、構造上の欠陥がある」と主張していた。1審は「危険性を予見できたのに安全に配慮する注意義務を怠った」として、メーカーと市に約124万円の賠償を命じたが、2審の高裁は「遊具が破損するなどの予測できない事故でない限り、児童本人や保護者が事故の責任を負う」としていた。

読売新聞HPによれば、この最高裁の決定について、中学生の母親は「大変悔しく、残念。ただ、裁判を通じて社会に広く問題提起した意義は大きいと思う」とコメントしたようである。

2003.01.30

読売

006 2003.02.02 書店で万引した中学生 逃走中踏切死亡 書店店長に「人殺し」と非難

2003年1月21日に川崎市の古書店で中学生が万引きした。店長の男性は、生徒が連絡先を話さなかったので、警察に通報した。警察官が生徒を署へ任意同行しようとしたところ、生徒は逃げ出して電車にはねられた。

その後、古書店の店長に対して、「人殺し」「配慮が足りない」などと非難する電話やファクスが寄せられた。ショックを受けた店長は店頭に謝罪文を張り出し、近く閉店する意向を示した。

謝罪文によると、「尊い命が失われたことを重く受け止めております。返す言葉がありません」とした上で、「年間10人以上の万引きの対処に加え、実害がその何倍に及んでいる。捕まえた一人一人に対するきめ細やかな配慮まで行う心の余裕がなく、性格や置かれた環境、背景を的確に洞察する能力はなかった」とのことである。

追記
この問題が新聞などで報道された1月31日以降、1000件を超える激励が古書店に届いた。廃業を宣言した古書店の店長は2月1日記者会見し「いろんな意見を聞いて結論を出したい」とのべた。店を再開し、その後、存続か廃業かを最終的に判断するようだ。

2003.01.30

読売

2003.02.01

毎日

007 2003.02.03 サッカー大会中の高校生落雷事故 民事訴訟の和解協議不調 判決言い渡しが決定

2003年1月31日、高知地裁(亀田広美裁判長)で、高校生の時のサッカーの試合中に頭に雷を受け、失明や下半身不随など重度の障害が残った障害を負ったのは主催者らが安全対策を怠ったためとして、元高校生(22)と両親が、学校や主催した体育協会などに、約3億円の支払いを求めている民事訴訟の和解協議が行われた。しかし、協議は決裂となり判決の言い渡しが決った。

原告側は「大会当時は落雷注意報が発令され、雷鳴も聞こえていたのに学校側などは試合を中断するなど事故を未然に防ぐ義務を怠った」と主張し、被告側は「当時は落雷の危険性を予見していた者は誰一人いなかった」と不可抗力を主張しているようだ。

類似事故の判例としてはゴルフ場での落雷事故でキャディーとゴルフ場の法的責任が棄却された事例がある。(see 本ページに関係するニュース2002,No.11)

2003.02.01

毎日・高知ニュース

008 2003.02.03 オーストリアスキー場ケーブルカー火災事故集団訴訟 日本人遺族合流 懲罰的損害賠償金も請求 

2003年1月28日、155人(日本人10人)が死亡した2000年11月のオーストリア・アルプスのスキー場でのケーブルカー火災事故で、日本人遺族9家族14人はニューヨーク南連邦地裁に提訴されている損害賠償集団訴訟(2001年1月、米国人遺族が提訴)に参加すると発表した。

担当弁護士らによると、集団訴訟はケーブルカー運行会社など18社を対象とし、実損害額の5~10倍となる懲罰的損害賠償を求める。現在はまだ訴訟準備段階で、裁判所が集団訴訟の要件を満たすと認定すれば、初夏ごろまでには証拠調べがスタートして、時間を置かずに判決が出る見通しのようだ。

日本でも、原告が懲罰的損害賠償金を請求する訴訟は存在する。しかし、日本の損害賠償制度下ではこの請求が認められた事例はないと認識している。

2003.01.28

毎日

2003.01.29

毎日・福島

009 2003.02.05 大日岳事故訴訟 第3回口頭弁論 原告・被告両者 事故発生時ビデオ上映

2003年1月22日、富山地裁で大日岳事故訴訟の第3回口頭弁論が開かれた。原告側は国側準備書面の不明点について改めて再求釈明書をー陳述したようだ。次回口頭弁論は4月23日午後3時半より富山地裁。

この遭難に関しては、2002年11月に「大日岳遭難事故の真実を究明する会」が発足した。同会は、2003年1月18日、日本国民救援会との共催で「北アルプス大日岳遭難事故の真実を究明するつどい」を開催した。集いでは、本件訴訟の原告側弁護人の中島嘉尚弁護士と登山家の重野たつじ氏が講演を行った。同会では、今後各地での講演会を計画しているとのことである。中島嘉尚弁護士は冬の野外生活研修会中に講習生の高校教諭が雪崩で遭難した「五竜遠見雪崩事故訴訟」でも原告主任弁護人を務めた。

大日岳遭難事故を考えるページ
010 2003.02.05 法廷でのニュース番組録画ビデオ利用 不使用を申し入れ 放送4社 大日岳事故訴訟 

2003年2月3日、NHK富山放送局、チューリップテレビ、北日本放送、富山テレビは、「テレビのニュース番組の録画ビデオが、2003年1月22日の大日岳事故訴訟の第3回口頭弁論における進行協議で資料として用いられたのは遺憾である」として、�@原告・被告にはテープを裁判の証拠として申請しないよう�A同地裁には証拠採用しないよう文書で申し入れた。

いわゆる和歌山カレー事件でも、テレビのインタビュービデオの証拠採用をめぐって、テレビ局から抗議があったように記憶しています。「なぜ報道に使用された映像を裁判の証拠としてはいけないのでしょうか?」。よくわからない点が多いので調べてみたいと思います。御存じの方がいらっしゃったら是非お教え下さい。

2003.02.03

毎日

011 2003.02.13 両親の法的責任を認定 約8900万円の支払い命令 民事訴訟 未成年者によるストーカー殺人事件  

2003年2月4日、名古屋地裁岡崎支部は、1999年夏に登校途中の高校生の女性が元同級生(当事17才で現在5-10年の不定期刑で服役中)に刺殺された事件で、元同級生とその両親に1億円の損害賠償を求めた民事訴訟の判決において、元同級生の両親の監督責任も認め、元同級生と両親に計約8900万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

岩田嘉彦裁判長は元同級生の両親が犯行を予見できたとした根拠として、1.「元同級生が自室に置き、犯行計画をしたためていた日記などを一読すれば、比較的容易に殺害への思いを知り得た」、2.「息子の行動に関心をはらえば、殺害に用いたナイフを所持していたことも早期に気が付けたと推測できる」、3.「犯行に用いたナイフを購入するなどの行動を見逃した」などの認定事実を述べた。

2003.02.04

中日HP

012 2003.02.13 新歓コンパ飲酒死亡事故 同席の教授と上級生を不起訴処分 熊本地検

2002年12月27日、熊本地検は、99年6月の熊本大医学部漕艇部の新入生歓迎会で、新入部員の男子学生(当時20歳)が飲酒後に死亡した事故で、死亡した学生の家族が告訴し、熊本北署が2001年5月に保護責任者遺棄致死などの疑いで書類送検していた部長の教授と上級生ら16人全員(共に新入生歓迎会に同席)を嫌疑不十分として不起訴処分とした。「酔いつぶして意識混濁にしようなどといった上級生らの悪意の共謀は認定できなかった。故意犯としての立証は困難」とのことである。

教授と上級生に対する民事訴訟の訴状によると、新入部員の男子学生は新入生歓迎会の2次会で、上級生らから焼酎をストレートで大量に飲まされ、こん睡状態に陥った。新入生は急性アルコール中毒となり、翌朝6時ごろ、上級生らによつて運ばれていたアパートで嘔吐物をのどにつまらせて窒息死した。上級生らは飲酒を強要して泥酔させ、かつ救急車を呼んで病院に運ぶなどの適切な救護をしなかったと原告は主張している。

一方、被告側は飲酒の強要はなかったと反論し、それ以外の点についても争っている。

2002.12.27

毎日

時事

013 2003.02.13 新入生飲酒死亡事故 同席教授とクラブ員不起訴処分で 遺族、検察審査会に不服申し立てへ

2003年2月5日、1999年に熊本大医学部漕艇部の新入生歓迎会で飲酒後に死亡した新入生(当時20歳)の家族は、同席していたクラブ顧問の教授と漕艇部の部員16人を不起訴処分とした熊本地検に対し、1.飲酒を自己責任と判断した理由、2.教授と漕艇部員らの行為に違法性がないと判断した理由などを文書で回答するよう求めた。また、福岡高等検察庁・最高検察庁・法務省に対しても、熊本地検の不起訴裁定書や捜査関係書類を調査し、不起訴処分が適当だったかを調査するように求める抗議文も提出した。さらに、検察審査会にも不服を申し立てる予定のようだ。

2003.02.05

毎日

014 2003.02.13 4000人の公務員賠償責任保険加入 アウトドアでもぜひ個人賠償責任保険加入を!!

2003年2月7日のasahi.comのMYTOWN大阪によれば

1.自治体の枠を超えた職員組織「公務員個人賠償責任問題地域ネットワーク」が2002年7月発足し、自治体職員に賠償責任が生じた場合に備える損害保険加入の受け皿を提供した。

2.保険料を含めた1人あたりの負担額は年12000円。現在、加入者は120人を超えている。訴訟費用の補償額は300万円、損害賠償は3000万円まで。

3.保険商品を売り出している日新火災海上保険は「安いコストで保険補償することで、安心して公務に携わって頂く」と説明する。犯罪行為や医療過誤などは補償から除かれ、市長など特別職も契約対象から外されている。99年11月の販売開始後、100自治体の約4000人と加入契約を結んでいるという。

4.ネットワーク参加者は、管理職が大半を占めている。その1人は数年前に、産廃業者に違法施設の撤去を求めたところ、逆に1億円の賠償を求める文書を4回送りつけられた。「個人では払いきれない額で、その時は恐怖心でいっぱいになった。しかし、保険があれば安心な面もあるし、相手への不安もふっしょくできる」と話す。ネットワーク発起人の堺市幹部は「個人の責任を問われる時代になった。公務員も自己責任を自覚すべきだ」と受け止めている。

幸い、アウトドア活動に関しても、いわゆる”個人賠償責任保険”に加入しておけば、年間1000円程度で1億円程度までの賠償に応じることができる。加入していない方が多いようにも思うが、「登山でのケガと事故は自己責任で法的責任にはなじまない」というかつての”共通認識”は存在しない。よって個人賠償責任保険には必ず加入するべきである。この保険は傷害保険や火災保険などのオプションとしての契約となる。弁護士費用や訴訟費用もカバーしている。ただし、金銭のやり取りのある講習会などの場合はこの保険では対応できない。その場合は別途の契約が必要である。

なお、この記事は「公務員に『住民訴訟保険』必要? 」という見出しで「・・・やましいところがないのなら、保険に入る必要はないでしょう。つい、勘ぐってしまいます。」という市民の声、あるいは「・・・『保険があるから委縮せずに仕事ができる』というのであれば、考え違いも甚だしい。まじめに仕事をした上でのミスに市民や裁判所が責任を問うことはない」との弁護士のコメントも掲載されているが、この認識はもはや通用しない。

故意はもちろんであるが、ミス(過失)に対しても必ず個人の法的責任が追求される(具体的には民法に基づいて損害賠償金が請求されるという形となる)可能性をこそリアルタイムの「現実」と考えておくべきである。ネットワーク発起人の危惧は正確な時代認識であって、この弁護士の見解の方こそが「非現実的」と言わざるをえない。例えば、「なぜ自動車保険に加入するのですか。やましいところがない(安全運転をしているという)のなら、保険に入る必要はないでしょう。」、あるいは「・・・『保険があるから委縮せずに運転ができる』というのであれば、考え違いも甚だしい。まじめに運転をした上でのミスに市民や裁判所が責任を問うことはない」と置き換えてみてほしい。万一の事故に備えた自賠責保険加入がドライバーの常識、かつ、他者への事前の誠意であるように、アウトドア活動時の個人賠償責任保険加入は必要不可欠な行為であると思料する。

2003.02.07

asahi.com大阪

015 2003.02.13 弁護士による着服事件 「被害者の会」会員 奈良弁護士会と日本弁護士連合会の監督責任を問い提訴 

2003年1月29日、依頼弁護士による依頼金着服事件の「被害者の会」会員が、「被害拡大を防げなかったのは弁護士に対する適切な指導監督を怠ったため」として、会社名で奈良弁護士会と日本弁護士連合会を相手取り約1100万円の損害賠償を求める訴訟を奈良地裁に起した。弁護士個人の不祥事で弁護士会側が監督責任を問われる初のケースとして注目される。

毎日新聞によれば、この弁護士は、土地トラブルを巡る訴訟で弁護を引き受け裁判費用名目で1200万円を受け取ったにもかかわらず、依頼者に対し実際には提訴していない訴訟を「提訴した」とウソをついて依頼金を着服したようだ。原告は「詐欺行為の再犯を十分に予見できるのに放置したため計128人、約10億2000万円にまで被害が拡大した」として、奈良弁護士会とその上部団体の日弁連の法的責任を追求している。なお、原告側は大阪、京都など約20人の弁護士に訴訟代理人を依頼したが、すべて断られたらしい。

統計的なデータはないが、因果関係の証明が困難と思われる相手をも「被告」として訴え、損害賠償金を請求する訴訟が増加していると少なくとも私は感じている。例えば、1.ロープ不携帯の後輩の登山計画を漫然と放置したとして、山岳部のOBに損害賠償金を請求したケース、2.立ち入り禁止区域を滑走して死亡した大学医学部教授の家族が、「立ち入り禁止の看板だけでは不十分」としてスキー場にも損害賠償金を請求したケース、3.詐欺被害にあったのは、詐欺会社の会員向け雑誌に東大教授がコラムを書くような会社なので信用して詐欺にあったとして、詐欺商品とは無関係の歴史教科書問題を執筆した教授に損害賠償を請求したケースが報道されている。さらに、4.英語の成績が上がらないのは大学教官の教え方が悪いとした民事訴訟もあったようだ。今後、この傾向は指数関数的に強くなると予想すべきである。もちろん、訴訟に負けたのは弁護士の過失であったとして依頼弁護士に対して損害賠償請求をする「弁護過誤訴訟」のケースも増加するだろう。

2003.01.29

毎日

016 2003.02.18 JRに賠償命令 車いすにブレーキ掛けず危険な目にあわせた 16万円

2003年2月5日、東京地裁の菅野博之裁判長は、駅のホームで、駅員が車いすのブレーキを掛けずに離れたため線路に落ちそうになったことについて、車いすに乗っていた重度の身体障害の男性がJRに110万円の損害賠償を求めた裁判で、「駅員はブレーキを掛けておく義務があった」として16万円の支払いを命じた。毎日新聞によれば、裁判所は、対応したのが介助の専門職員だったことを挙げ「必要な介助は鉄道会社としての契約上の義務」と指摘したとのことである。

この訴訟の特徴としては、ケガなどの実質的な「損害」ではなく、線路に落ちそうになったという危険な状態にしたことをも「損害」として認定したことにあるように思う。また、介助はサービスではなく法的義務としたことも注目に値する。なぜなら、対応した駅員が介助の専門職員ではなくて車いすの構造に詳しくなくとも、「必要な介助は鉄道会社としての契約上の義務」であるのならば、全ての駅員に介助のための知識を身につけておくべき法的義務があったのにこれを怠ったという主張が可能になると思料するからである。

2003.02.05

時事通信

毎日

017 2003.02.18 民宿風呂場転倒事故訴訟 原告の請求を棄却 名古屋地裁

2002年10月23日、名古屋地方裁判所の野田弘明裁判官は、民宿の風呂場(ラドン温泉)で、木製の洗い場の床に生えていた苔ないし苔状のもので足が滑り転倒して骨折及びねんざしたのは民宿の経営者が、浴室の床が滑りやすい状態のまま放置したためであるとして、民法415条または709条に基づいて、約1240万円を請求した原告の請求を棄却した。

民事裁判における損害賠償請求の法的根拠には、民法709条と民法415条がある。登山事故は民法709条不法行為に基づいて請求される場合がほとんどである。理由はまたいつか・・・。

2003.10.23

名古屋地方裁判所判決速報

018 2003.02.18 犬に驚き転倒訴訟 飼い主に賠償命令 657万円 大阪地裁

2003年02月17日、大阪地方裁判所の飛沢知行裁判官は、女性が病院で肺炎で死亡したのは、そもそも路上で飛び出してきた小型犬(ミニチュアダックスフント)に驚いて転倒して骨折し入院を余儀なくされたことに原因があるとして、飼い主に約2400万円の支払いを求めた訴訟で、「飼い主側が引き綱を固定するのを忘れ、犬がじゃれついたのが転倒の原因」であり「骨折や入院で抵抗力が弱まり院内感染した」として因果関係の存在を認定して、飼い主の男性に657万円の支払いを命じた。

2003.02.17

毎日

019 2003.02.18 ニューヨーク連邦地裁 肥ったのはハンバーガーのせい訴訟 論拠不十分で棄却

2003年01月22日、ニューヨーク連邦地裁は、肥満になったのはハンバーガーを食べ続けたせいたとして、米ニューヨークの少女らがマクドナルドに起こした訴訟で「訴えの論拠が不十分」などとして訴えを棄却した。ロバート・スイート判事は「マクドナルドの製品が健康に悪いかもしれないと知っているのに、それを過剰に食べることを選んだなら、マクドナルドを責めることはできない」と述べた。 しかし、原告側は、「地裁の判断には原告側主張への支持が含まれている」として、30日以内に再度、提訴する意向を表明した。

上記の報道をした産経ウエブによると、厳しい家庭環境にある子供達は、ファストフードで食事をするしかないという社会問題も背景にあるようである。しかしながら、この主張はあまりに無理があるように思うし、巨額の懲罰的賠償金の4割程度が弁護士の収入になるというのは全く納得できない。仮に、懲罰的賠償金を企業に支払わせるとしても、それを原告や原告側弁護士の所得にするのではなく、その全額を公共のために使うべきである。

2003.1.23

産経

020 2003.02.18 医療過誤訴訟 複数の専門医による「討論方式」実施される 東京地裁

2003年01月08日、東京地方裁判所で係争中の医療過誤訴訟(前田順司裁判長)で、鑑定人である複数の専門医が法廷で意見を戦わせ、て裁判所・原告、被告が質問する「カンファレンス(討論)方式」が初めて実施された。討論は、全員が丸テーブルを囲むラウンドテーブル法廷で行われ、循環器や麻酔を専門とする3人の鑑定人が出廷し、裁判長の質問・鑑定人同士の討論・原告と被告の代理人弁護士による尋問が行なわれた。

登山事故裁判についても、この形式の導入が検討されるべきと思う。その場合は、ラウンドテーブル法廷に従来のビデオ設備だけでなく、スライド映写機やホワイトボードなどの設備を用意してほしい。また、ラウンドテーブル法廷(会議室と思ってもらえば良い)はかなり狭いで傍聴に支障が出るようにも思う。法廷にこれらの機器を設置して行なった方が良いのではないか。

1回の討論で鑑定を終えるのが原則という点については若干の危惧を感じるが、長期化する 医療過誤訴訟の審理迅速化という目的は良く理解できる。

2003/01/08

産経

021 2003.02.21 メール導入の方針決定 民事訴訟の書面とやりとり 法務省 

2003年2月17日、法務省は、民事訴訟での書面(訴状・答弁書・準備書面)のやりとりについて、電子メールを使用可とする方針を固めたようだ。

法務省は「証拠文書など現物の提出が必要な手続きとは違い、準備書面の交換や訴状、答弁書は電子メールで行っても支障が少ない」と判断した。基本的には裁判所と関係者とのやり取りとなる。主張が対立する訴訟では、準備書面の交換だけに何度も法廷に足を運ぶ必要があるが、電子メールでやり取りできれば関係者の負担軽減や審理の迅速化にもつながるとしている。次回の裁判期日の通知など、郵送で行っていた裁判所からの連絡も、電子メールで行えるようにする。・・・・法務省は、最高裁の検討を踏まえ、来月下旬に予定される法制審議会(法相の諮問機関)に諮問し、来年の通常国会に民事訴訟法改正案を提出する考えだ。(読売新聞)

裁判の長期化は極めて深刻な問題である。政府は、全ての判決を2年以内にと言う目標を設定している。その意義は大きいが一律にこれを義務づけることには危険である。なぜなら、裁判官たちが「締めきり」に間に合わせようとするあまり、事実認定が不正確になったりして、裁判の質が低下する可能性があるからである。しかし、メール導入などによるIT化にはこのような懸念はない。正確かつ迅速な裁判のために、きわめて有効な手段である。セキュリティ問題の留意が必要だが。

書面がすべて電子化されれば、いちいち書面をOCRで読み込み、誤植を訂正し、やっとアップロードという作業から解放される。大歓迎である。

2003/02/18

読売

022 2003.02.21 当て逃げ逃走 スノーボード 過失傷害 蔵王温泉スキー場
2003年2月16日、蔵王温泉スキー場で、上方から滑走して転倒したスノーボーダーの男(20代?)が、下方でスキーをしていた幼稚園児に衝突した。男は逃走してしまった。警察が過失傷害の疑いで、男の行方を追っている。ボードが頭にあたったようでは男児は重傷。山形署は過失傷害の疑いで男の行方をおっている。スキー場での衝突事故については多くの裁判が争われ、裁判所の判断も蓄積されている。最高裁判所は「上方から滑ってくるものに注意義務がある」との判断を示した。これは、「自動車の追突事故では後方から来た車により高い注意義務がある」という考え方を援用したものと思われる。最高裁判所の判断は真の「判例」であり拘束力がある。
2003.02.17

毎日

023 2003.02.21 購入猫の早死 ペットショップにも責任 21万円の損害賠償請求 

2003年01月23日、神戸市の女性(30代)は、ペットショップで買った猫(生後3ヶ月のアメリカンショートヘアー)が、猫伝染性腹膜炎を発症して心不全によりわずか1カ月足らずで死亡したのは、購入時にすでに健康ではなかったためであり、また、店員は「この猫はもともと小柄で食が細いとしか説明しなかった。ペットショップは、猫が販売時には健康だったと証明する義務がある」として、約21万円の損害賠償を求める訴えを神戸簡裁に提訴した。

2003年01月31日の神戸新聞ニュースによれば、ペットショップが飼い主の女性に対して4万円を女性に支払うなどの内容で1月30日に和解が成立したようだ。

・・・店側はこの日の和解協議で謝罪はせず責任も認めなかったが、猫の購入費や治療代として四万円を女性に支払った。女性は「こうしたトラブルでは、飼い主が泣き寝入りするケースが多い。同様の立場に置かれた人に一つの道筋はつけられた」と話している。(神戸新聞ニュース)

日本国憲法は私たち市民に公開の場で裁判を受ける権利を保証してくれている。裁判所の敷居はそれほどには高くないのである。日本は着実に訴訟社会を志向しているようだ。もう何年かしたら、多くの市民が裁判を紛争解決の市民サービスと認識して、コンビニ感覚で裁判所を利用するようになるのかもしれない。この場合、将来の市民は人生で何度も原告と被告を経験することになるだろう。それはそれで一つの選択であるようにも思う。仮に、その道を選択するのだとしても、準備は必要不可欠であろう。

ところで、昨年の愛猫の一匹が飛行機内で行方不明になって航空会社に約6億円請求したアメリカの裁判はどうなっただろう。

2003/01/24

2003/01/31

神戸新聞

024 2003.02.21 マクドナルドハンバーガー また提訴される ニューヨーク

2003年2月20日、ハンバーガーの食べ過ぎが肥満の原因になったとして米マクドナルドを訴え、「論拠が不十分」として訴えを棄却された原告団は、同社に対する訴訟に再チャレンジした。今回の理由は、「マクドナルド製品が健康に有害であるにもかかわらず、事実に反する広告キャンペーンを展開して、消費者に誤解を与えた」と言うことのようである。

タバコ訴訟も、はじめは裁判所に「タバコを吸う吸わないは本人の選択」として棄却されていたが、何度も提訴するうちに次第に形勢が変化して、ついには、タバコ会社の法的責任が認定されるようになっていったという歴史的事実に照らして考えると、将来はあるいは、という可能性を否定できないかもしれない・・・・。

2003/02/21

時事

025 2003.03.01 「人間の盾」に日本人16人も参加 イラクへの武力行使阻止のために 外務省困惑

米国などによるイラクへの武力行使を阻止するために、病院・発電所・製油所などに滞在して、自ら盾となって攻撃を思いとどまらせようとする「人間の盾」作戦に日本人16人が志願している。現地の日本大使館員は国外退避を必死に説得しているが、参加者らの意志を翻させるには、至っていないようだ。2月26日の読売新聞HPによれば、志願したある女性は「私が死んでも次の世代に命は生きる。人間の力を信じたい」と述べたとの事である。困惑した外務省は親などにも依頼して、国外退避を説得してもらっているようだ。

もし、少なくとも自分にとっては、どう考えても無知・無謀で生還の可能性のない登山計画を登山仲間が立案し、なんど説得しても計画の見直しに応じず、「たとえ死んでも悔いはない。人間の可能性を信じたい。遺書も書いた。捜索費用についても自己負担できる。どうかこの計画を認めてほしい。」と語り、家族の必死の説得さえも不調に終わったら、私たちはその登山仲間に「とても責任はもてない」と宣告して、その計画を不許可にし、「どうしても行くなら、うちの会をやめてから行ってほしい」と退会を強く勧告するべきなのだろうか。どのような選択をするにしろ、その時、山岳会の存在意義そのものが根源的に問われることは避けられないだろう。

フランス人権宣言は「自由は他人を害しないすべてのことをなしうることに存する」と高らかに謳う。この思想はたぶん人類の獲得した叡智の一つだ。では、権利とは何なのだろうか?自由とは何なのだろう?あるいは「他人を害しない」とはどのように定義されるのだろうか?

2003/02/26

読売

026 2003.03.01 薬害エイズ事件の安部元副学長逆転勝訴 桜井さんに名誉棄損で400万円の支払い命令

2003年2月26日、東京高等裁判所は、薬害エイズ事件についてジャーナリストの桜井よしこさんの報道が名誉毀損にあたるとして控訴していた元帝京大副学長安部英氏(一審では安部氏の請求は棄却)の主張を認めて、安部氏の請求を棄却した1審判決を変更し、桜井さんに対して1000万円の損害賠償などのうち400万円の支払いを命じた。大藤敏裁判長は「内容は真実と認められない」と述べた。

ちなみに、たとえ相手の名誉を毀損する報道をしたとしても、その報道に公共性があり、真実あるいは真実であったと信じるだけの理由があり、公益目的でなされたのであれば免責されることを最高裁判所は判示しているので、この場合は「真実、あるいは真実と信じるだけの相当の理由がない」と裁判所が判断したということである。

2003/02/26

時事

027 2003.03.04 提訴予告制度導入か 民事裁判の迅速化を目的 提訴前に証拠収集や争点整理を可能に

産経webによれば「・・提訴前に相手方に請求の要旨などを通知し、当事者が早い段階で証拠収集できるようにする「提訴予告通知」制度が新設される見通しになった。・・」とのことである。この制度が導入されると、提訴前でも「当事者は立証準備に必要な事項について相手方に書面で照会できる。自ら収集が困難な場合には、裁判所が(1)文書の送付の嘱託(2)官庁などへの調査の嘱託(3)専門家への意見陳述の嘱託-などの処分ができる。 」らしい。また、「複雑で長期化しそうな訴訟では、裁判所が判決言い渡しの時期など審理計画をあらかじめ定めて当事者に示す「計画審理」の導入を義務付ける。裁判所は当事者双方との協議を踏まえて審理の計画を定める。同計画には(1)争点、証拠の整理期間(2)証人、本人の尋問期間(3)口頭弁論の終結、判決言い渡しの予定時期を盛り込む。 」とのことだ。

政府は、民事、刑事すべての裁判の一審判決を二年以内で出す方針を示しているようだが、民事訴訟の準備書面のやりとりへのメール導入などとあわせれば、迅速かつ正確な裁判実現のための大きな力となると思う。私が傍聴しているある登山事故裁判は、提訴から一審判決までに実に約五年を要し、さらに控訴審判決までに約一年半を必要としている。このような長期に渡る裁判は、訴訟当事者への負担は免れず人権上、見過ごすことのできない問題と思料する。

さらに付言すれば、一人の裁判官が年に300件もの事件を抱えるケースもあるらしいという現実は異常と言わざるを得ないだろう(あくまでも伝聞で要確認)。いくら優秀な人材とは言ってもその処理能力には限界がある。よって、司法改革にあたっては弁護士数よりもまず裁判官の増員が果たされるようなシステムを考えてほしい。数年後においては、弁護士数の増加と権利意識の高まりにより訴訟数はかなり増大すると予想される。その時に、裁判官数が十分に増加していないと裁判官一人当りの事件数が現在よりも増加してしまう危険性があるからである。そのような環境下では、迅速化はともかくも正確な裁判など望めまい。

2002/12/28

産経web

028 2003.03.05 文部科学省に謝罪要請書提出  大日岳『吹き溜り』崩落事故訴訟原告 35000人分署名入り

2003年3月5日、大日岳『吹き溜り』崩落事故訴訟の原告は、文部科学省に対して謝罪を求める内容を含む約3万5000人分の署名入り要請書を提出した。

2003/03/05

時事通信

029 2003.03.14 「弘前大学医学部山岳部遭難訴訟控訴審」判決 一審判決を支持 山岳部先輩・リーダー・国の責任否定

2003年3月12日午後、高等裁判所で「弘前大学医学部山岳部遭難訴訟控訴審」の控訴審判決があった。青山邦夫裁判長は「それでは判決を言い渡します」に続けて、次のように宣告した。

主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人らの負担とする。

つまり、控訴審も一審判決を支持し、計画をとめなかった二人の先輩部員・リーダーの学生・国への損害賠償請求は認められなかったということである。

判決主要部分については、本HPに掲載する予定であるが、注目すべき点の一つは以下の判断である。

大学の課外活動の登山パーティのリーダーは、「そのメンバーに対し、たとえば、特定の箇所を通過するには特定の技術が必要であるのに、当該メンバーがその技術を習得していないなど、事故の発生が具体的に予見できる場合は格別、そうでなければ、原則として、山行の計画の策定、装備の決定、事前訓練の実施及び山行中の危険回避措置について、メンバーの安全を確保すべき法律上の注意義務を負うものではなく、」と「登山は自己責任」にある程度理解を示した判示のあとに続けて、「例外的に、メンバーが初心者等である場合に限って、上記の事柄についてメンバーの安全を確保すべき法律上の注意義務を負うものと解するのが相当である。」との判断を示した。

高等裁判所は、大学山岳部のリーダーには、メンバーが初心者等である場合は別として、経験のある仲間に対してまでは法的な責任を負わせないとした。しかし、これはあくまでも「法的責任」、つまり賠償金を支払う責任はないと言うことであって、リーダーのメンバーに対する道義的責任をも免責したわけではない。この点は念のため強調しておきたい。

さらに、「例外的に、メンバーが初心者等である場合に限って、」とはしたものの、大学山岳部のリーダーには初心者メンバーに対して、「メンバーの安全を確保すべき法律上の注意義務を負うものと解するのが相当である。」とした点は極めて重大である。私は、「登山は元々危険なものだ。遭難や事故があってもリーダーの法的責任は追求しない」という登山者の伝統的な理念は、すでに「引率登山」では通用せず、大学山岳部や社会人山岳会の仲間同士の「自主登山」で辛うじて命脈を保っていると認識していた。しかし、この判決によって、たとえ仲間同士の「自主登山」であっても、すべての山行で「遭難や事故があっても、道義的責任はともかくも、リーダーの法的責任は追求されない」という従来の共通認識を維持することは困難となり、「限定条件」が必要となったと思われるからである。

2003/03/12

法廷にて傍聴

030 2003.03.14 成人女性プール水死事故 スイミングクラブ経営会社を提訴 水深1メートル

2003年3月8日、女性(50代)が昨年の夏にスイミングクラブのプール(長さ25メートル、幅12メートル、水深約1メートル)で水泳中に死亡した事故で、遺族は「スイミングクラブには利用者の生命、安全を確保する義務がある。事故が起きればすぐに救助できるよう、プールサイドに監視員を配置するなどの体制を取るべきだったのに怠った」として、スイミングクラブ経営会社に対して、約7000万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。死亡した女性は、数年前からプール通いをしており、クロールが得意だったという。クラブ側は争うとのことだ。

自己責任が問われる成人の事故であるので、小学生などのプール事故訴訟と比較すると、クラブ側の注意義務はかなり低いと思われる。棄却となる可能性も高いのではないだろうか。成人女性であるので身長との関係から、水深が1メートルというのも大きなポイントになると思われる。

2003/03//08

読売

031 2003.03.16 「弘前大学医学部山岳部遭難訴訟」控訴審判決抜粋 平成15年3月12日判決言渡 

控訴審判決書によると「事案の概要」は以下の様です。

本件は、大学の山岳部員として登山中滑落事故により死亡した学生の両親である控訴人らが、山行のリーダーを務めた被控訴人b、緊急連絡先を務めた被控訴人c及び山岳部のOBで登山本部を務めた被控訴人dに対しては、債務不履行叉は不法行為に基づき、大学の設置者である被控訴人国に対しては、安全配慮義務違反に基づき、損害の賠償を求めた事案であるが、原審は、控訴人らの請求をいずれも棄却した。

それでは、高等裁判所がどう判断したかと言う「当裁判所の判断」から、リーダーと先輩部員の法的責任についての判示の抜粋を以下に示します。国の責任については、高等裁判所が明文化した「主体的登山のリーダーの法的責任」という新しいリスクを論理的に処理してゆきたいを書いていたらまにあわなくなってしまいました。明日の朝までには追加できると思います。文字化けや抜けなどが有るかもしれませんので、必ず原本を閲覧下さい。なお、小見出し及び文中の赤字化は私によります。

リーダー(被控訴人b)の法的責任の否定
・・・大学生の課外活動としての登山において,これに参加する者は,その年齢に照らすと,通常,安全に登山をするために必要な体力及ぴ判断力を有するものと認められるから,原則として,自らの責任において,ルートの危険性等を調査して計画を策定し,必要な装備の決定及ぴ事前訓練の実施等をし,かつ,山行中にも危険を回避する措置を講じるべきものといわなけれぱならない。そうすると,大学生の課外活動としての登山におけるパーティーのリーダーは,そのメンバーに対し,たとえぱ,特定の箇所を通過するには特定の技術が必要であるのに,当該メンバーがその技術を習得していないなど,事故の発生が具体的に予見できる場合は格別,そうでなけれぱ,原則として,山行の計画の策定,装備の決定,事前訓練の実施及ぴ山行中の危険回避措置について,メンバーの安全を確保すべき法律上の注意義務を負うものではなく,例外的に,メンバーが初心者等であって,その自律的判断を期待することができないような者である場合に限って,上記の事柄についてメンバーの安全を確保すべき法律上の注意義務を負うものと解するのが相当である。

・・・これを本件についてみるに,まず,被控訴人bにおいて,本件事故の発生が具体的に予見可能であったと認めることはてきない。すなわち,上記認定のとおり,本件事故の直接的な原因は,亡aが下降をする際に足下に対する注意をおろそかにしたことであるが,このような不注意による滑落事故が,本件山行の出発前の段階で具体的に予見可能であったとは認められず,また,本件事故現場において,冬季に滑落事故が度々発生していたことを認めるに足りる証拠はないから,本件山行の出発前に,本件事故現場で滑落事故が発生することが具体的に予見できたともいえない。また,上記認定事実(引用にかかる原判示)によれぱ,本件パーティーが本件事故現場にさしかかった際の天候や付近の斜面の状態からも,亡aの体調からも,具体的に同人の滑落が危倶卒れるような状況ではなかったものというべきであるから,本件事故の直前においても,本件事故の発生が具体的に予見可能であったとは認められない。

・・・次に,亡aが初心者等であってその自律的判断を期待することができないような者であったとも認めることはできない。なぜなら,上記争いのない事実及ぴ認定事実(引用にかかる原判示)によれぱ,亡aは,XX大学医学部専門課程2年生に在籍し,山岳部に入部して3年目であり,夏山合宿に2回,冬山合宿に1回参加した経験があるのであって,冬山の経験は乏しかったものの,山岳部在籍の期間や山行の経験回数等に照らすと,自ら本件山行の危険性等について判断し,その力量に合わせてその計画策定や装備の決定等を行うことが当然であったというべきであって,到底その自律的判断を期待することができない者であったと認めることはできないからである。

以上のとおりであるから,被控訴人bは,亡aに対し,山行の計画の策定,装備の決定,事前訓練の実施及ぴ山行中の危険回避措置について,その安全を確保すべき法的義務を負っていたものということはできない。

・・・次に,控訴人らは,冬山の訓練不十分で,滑落事故を防ぐロープワークを身につけていない本件パーティーが,ロープの使用が必要な箇所のある上級者向きの危険な本件ルートに入るという計画を立てたことそのものに,被控訴人bの「ルート選択上の過失」がある旨主張する・・・。

たしかに,証拠(甲24,29,30,31の1ないし55,甲33,62,63,93の1ないし3,甲102,原審証人B)によれぱ,冬季における本件ルートでは,安全確保等のためにロープの使用が必要となることがあるから,本件ルートに入るには,ロープを携行することが必要であり,また,山行前にロープワークの訓練を実施するのが相当であることが認められ,ロープワークに習熟していない亡a,e及ぴfをメンバーとする本件パーティーが本件ルートに入るという計画は,同人らの力量を超えるもので,安全に対する配慮が乏しいものと評価せざるをえない。

・・・なお,控訴人らは,当審主張(1)のとおり本件ルートの危険性について主張するが,本件ルートが上・中級者向けの冬山ルートであること(甲5,24),冬季における本件ルートでは,安全確保のためにロープの使用が必要となることがあること(上記(5))は,控訴人らの主張するとおりであるが,これらのことは,被控訴人bは,亡aに対し,その安全を確保すべき法律上の注意義務を負うものではないとの上記認定判断を左右するものではない。

計画を止めなかった先輩(被控訴人c,同d)の法的責任の否定
・・・大学生の課外活動としての登山に参加する者は,原則として,自らの責任において,ルートの危険性等を調査して計画を策定し,必要な装備の決定及ぴ事前訓練の実施等をし,かつ,山行中にも危険を回避する措置を講じるべきものであるから,パーティーのメンパー以外でその登山に関与した者は,たとえ,山岳部員の上級生やOBであっても,事故の発生が具体的に予見できた場合は格別,そうでなけれぱ,山行の計画の策定,装備の決定,事前訓練の実施について,メンバーの安全を確保すべき法律上の注意義務を負うものではないものと解するのが相当である。

控訴人らは,「一見明らかに安全上の問題がある場合」には,指導等の義務がある旨主張するが,たとえ,安全に対する配慮が「一見明らかに」不足していたとしても,本来自律的に判断し行動することが予定されているパーティーのメンバーに対し,そのメンバー以外の者がたやすく不法行為責任を負うと解するのは相当ではなく,ただ,事故の発生が具体的に予見できた場合には,それを指摘するだけでメンバーにおいて事故の発生を回避する措置を講じることが予想されるから,そのように容易に事故の回避が期待されるような場合に限って,メンバー以外の関与者の法律上の注意義務を認めるのが相当である。

・・・被控訴人c及ぴ同dには,本件山行の計画について変更,修正を指導,助言すべき法律上の注意義務があったとは認められない。

2003/03/12

控訴審判決書

032 2003.03.30 弘前大学医学部山岳部遭難訴訟 上告申し立て 控訴審判決を不服

2003年3月24日、弘前大学医学部山岳部遭難訴訟の控訴審判決を不服として、控訴人は最高裁判所に上告を申し立てた。よって、今回の控訴審判決はまだ確定してはいないということになる。

2003/3/24

中日

033 2003.04.09 司法制度改革推進本部 「裁判員制度」のたたき台を公表

2003年3月11日、司法制度改革推進本部は、無作為に選出された市民が裁判官と対等の立ち場で重大な刑事裁判の審理に参加して評決を下す「裁判員制度」のたたき台を公表した。

気になるのは、裁判員選ばれた場合、質問手続きや公判への出席は義務となり、出頭しなければ行政罰である過料を科せられる。また、秘密を漏らしたり、裁判所の質問に虚偽回答をすれば懲役・罰金など刑事罰も科せられる、という点である。つまり、選ばれてしまったら裁判のある日は山に行ったりできなくなるし、ついつい誰かにしゃべったら刑事責任を問われるということだ。政府は今年夏をめどに原案を決定し、来年の通常国会に関連法案を提出するようだ。

やがては登山事故裁判を登山者自身が法廷で裁く日がやってくるのだろうか。

2003/3/11

共同通信

毎日

034 2003.04.09 中学ハイキング落石事故 昨年3月に業務上過失致死傷で書類送検の校長ら 不起訴処分

2003年3月31日、岐阜地検は、中学生が学校行事のハイキング中に落石で死傷した事故について、昨年3月に業務上過失致死傷容疑で書類送検されていた校長ら教諭7人を嫌疑不十分で不起訴とした。岐阜地検は「引率した教諭らが岩盤が崩落する危険性を予見できたかどうかは疑わしく、過失を認めることは困難」と不起訴の理由を説明したが、遺族は「納得いかない」として、近く岐阜検察審査会に審査を申し立てるようだ。

事故は2001年6月に岐阜県板取村で発生し学校行事のハイキング中に中学生の列を落石が直撃し、中学生6人が死傷した。県警は、事故前日に村の森林組合から「雨天は野外活動は中止」と告げられたにかかわらず、事故当日朝の学校側判断で雨中にハイキングを実施したことは、安全注意義務違反の可能性があり、刑事責任を問えるとの判断で、引率教諭3名、学年主任1名、およびハイキングの実行に同意した校長の計5名を、業務上過失致死傷の疑いで書類送検していた。

2003/3/31

共同通信

035 2003.04.09 重大医療ミス 事故の報告義務化案 厚生労働省 免責を与えるか否かは継続論議に

2003年3月11日、厚生労働省の検討部会は明白なミスによる患者の死亡など重大事故の報告を、国から独立した第三者機関に対して行なうことを、高度な医療を行う「特定機能病院」などに義務化することを明記した報告書案を了承した。厚生労働省は医療機関から寄せられた報告は行政処分の事実認定や民事訴訟の証拠には利用できないようにする考えだが、「極めて重大な事故や故意とみられるケース」などへの対応については検討課題とされたようだ。

登山事故についても、事故報告を第三者機関に一元化して集積して公開し、かつ、科学的で系統的な分析を行なうというシステムを確立できれば良いと思う。ただし、この時も作成した事故報告書をリーダーや関係者の法的責任を追求する民事裁判や刑事裁判の証拠として採用できるか、否かは極めて悩ましい論議の対象となるだろう。

2003/3/12

共同通信

036 2003.05.02 危険な投球フォームに学校の指導なし 打球が当たって死亡した高校生投手の両親 学校を提訴

2003年4月23日、練習試合中に相手チームの打球が頭に当たり死亡した高校生投手の両親が、「投球後に視線が正面からそれる危険なフォームだったのに、学校側は何の指導もしなかった」として、9700万円の損害賠償を高校に求める訴訟を大阪地裁におこした。
死亡した高校生(当時16才)の母親は「安全と信じていた学校でなぜ息子が命を奪われたのか、原因を究明したい」と訴えた。

2003/4/23

共同通信

037 2003.05.02 授業中に教室を離れた先生の法的責任認定 小学生の失明事故控訴審

2003年3月6日、大阪高裁は、小学2年生の右目に同級生が持っていた鉛筆が刺さり失明した事故で、「低学年の児童には何が発生するかわからず、授業中に教室を離れた担任教諭に過失があった」として、市側に約4000万円の支払いを命じた。裁判長は「教室を離れた行為は正当化されない。在室していれば、事故は防げた」として、「事故は偶発的で予見不可能だった」という被告の主張を退け、第1審の判断を指示した。

2003/03/06

読売

038 2003.05.12 大日岳事故訴訟 第4回口頭弁論開かれる 原告第3準備書面を陳述

2003年4月23日、富山地方裁判所で、大日岳事故訴訟の第4回口頭弁論が行なわれた。原告は、第3準備書面を提出した。これに対する被告側の回答は6月中に文書で提出されるようだ。7月11日には裁判官、原告、被告の3者で電話会議が実施される予定。第5回口頭弁論期日は9月10日午後2時より富山地裁1号法廷である。

なお、ご家族と支援者はJR富山駅前などで「早期の公正判決を求める要請署名」のお願いとチラシを配布し、呼びかけをおこなった。すでに集まった署名約35000人分は、同日、富山地裁へ提出へ提出された。2次提出(九月以降)にむかって署名運動を続ける予定とのことである。

2003/05/12

大日岳遭難事故を考える

039 2003.05.12 大日岳事故訴訟 引率講師の不起訴処分を求める嘆願書署名活動も実施中

大日岳事故訴訟に関して、原告側による署名活動が実施中であることはすでに本ページでも報告した。詳細は大日岳遭難事故を考えるへ。一方、業務上過失致死傷の疑いで書類送検された引率講師については、登山者の間で、講師の不起訴処分の嘆願書を提出する署名活動が実施中である。詳細はAACK Members Pageへ。

我が国では、裁判に係わることをできるだけ避ける傾向が強いように、少なくとも私には、感じられる。しかしながら、今後は裁判員制度の導入や訴訟の増加によって、いやおうなく裁判にかかわる人が増加してゆくだろう。よって、登山者も裁判に積極的に関与して、自らの意見を述べることを検討すべきであろう。実際、裁判官も、法的判断を下すにあたっては、必ず登山の実情とそのルールについて登山者の意見を求めることになるのである。したがって、ある意味では、登山事故の法的責任についてのルールを決めるのは他の誰でもない登山者自身なのであるといわざるをえない。

もちろん、公開の場や法廷で登山者が持論を述べる場合には、それなりの道義的責任 ( 場合によっては法的責任も ) が発生することを覚悟しなければならないことは言うまでもない。

2003/05/12

AACK Members Page

大日岳遭難事故を考える

040 2003.05.12 岩場の取付き付近に落石 女性を直撃 徳島「慈眼寺の岩場」登攀禁止へ  

2003年4月29日、徳島県「慈眼寺の岩場」で、岩場の取り付きにいた女性に落石が直撃した。落石は、長さ約二十四センチ、幅約十センチ、重さ約五キロだったようだ。女性は死亡した。岩場の地主は、今後はクライミングを禁止にするとコメントしたようだ。

2003/04/3

神戸新聞

041 2003.05.12 飲酒ひき逃げ死亡事故 運転を止めなかった同乗者の法的責任認定 東京地裁

2003年05月08日、東京地裁八王子支部(中山幾次郎裁判官)は、飲酒ひき逃げ事故訴訟における判決で、運転者だけではなく同乗の男性2人の責任も認めて、3人に約5170万円の支払いを命じた。この裁判は、飲酒ひき逃げ事故で家族を亡くした遺族が、運転者だけではなく「同乗者にも責任がある」として約9480万円の損害賠償を請求した訴訟だった。

同乗者の2人は「運転を代わる、と申し出た」などと主張したが、判決は「正常に運転できないことを十分認識できた。酒酔い運転のほう助の責任がある」と判断した。

2003/05/08

毎日新聞

042 2003.05.28 5歳児の池への転落事故 国は防護柵設置を怠ったと 法的責任認定 控訴審判決

2003年05月22日、福岡高裁那覇支部は、5才児が池に転落したのは国と県が安全対策を怠ったためとして損害賠償を求めた訴訟で、国に対して3123万円の賠償を命じた(1審は国と県への請求をすべて棄却)。ただし、県の責任については、池に幼児が近づいて事故に遭ったことと県道の安全性との関連を認めず1審と同様に否定した。請求額は約1億3600万円だった。

渡邊等裁判長は、1.県道の拡幅工事に伴い、池は付近から簡単に見通せた、2.県道からの傾斜がゆるやかで、幼児でも容易に近づけた、3.幼児宅から約40メートルしか離れていなかった、との事実認定の上で「幼児には好奇心と冒険心がある一方、判断能力が未熟で、幼児が池に近づくことは予想されない事態とはいえない」とし、「土地所有者として、幼児らの転落防止のための防護さくを設置しなかった責任がある」と判断した。

林野庁沖縄森林管理署関係者は、毎日新聞の取材に対して「広大な国有林を管理しており、すべての危険を把握するには限界がある。上告するかどうかは今後、検討したい。」とコメントしたようだ。

2003/05/22

毎日新聞

043 2003.05.28 登山遭難事故の遺族と保険会社 捜索費用などの保険金支払いに関して対立

『山と渓谷』2003年6月号の記事「山岳保険の落とし穴」(羽根田治著)によれば、悪天候の登山中に「低体温症&脳硬塞」で遭難死亡した登山者の遺族が、遭難者が加入していたハイキング保険での捜索費用・救援者費用・死亡保険金などの支払いを求めたが、保険会社は保険金支払いの対象外と判断して保険金の支払いに応じず、両者は合意に達していないようだ。

今回の問題は、死亡原因が普通傷害保険支払いが可能となる「急激かつ偶然な外来の事故」に当てはまるか、当てはまらないか、と言う点にあるようだ。つまり、遺族は、死亡原因は、天候悪化による「急激かつ偶然な外来の事故」であるとして、捜索費用・救援者費用・死亡保険金を請求したのだが、保険会社は、死因が「脳硬塞」あるいは「低体温症に起因する脳硬塞」と公的書類に記載されていたために、「急激かつ偶然な外来の事故」ではなく、「疾病」つまり病気による死亡と判断して、普通傷害保険金支払いの対象外とみなした、ということである。

いわゆる『山岳保険』と呼ばれるものには何種類かのタイプがある。今回の商品は、普通傷害保険に幾つかの契約をオプションとして加えることによって成立している。例えば、捜索費用は「遭難捜索費用担保特約」を加えて、はじめて支払いが可能になる。また、救援者費用の支払いは「救援者費用等担保条項」の規定に従って支払われる。なお、普通傷害保険では、ロッククライミングなどの山岳登攀中の事故の場合は、免責条項(保険金を支払わない規定)にあてはまるので、割り増し保険料を支払わないと、捜索費用・死亡・後遺障害保険金は支払われない。

もし、登山中の持病や病気やそれらに起因する遭難についても、確実な保険金支払いを望む場合は、例えば、東京都山岳連盟の都岳連遭難共済や日本勤労者山岳連盟(労山)の「労山遭難対策基金」への加入が必要のようである。

Caution: 保険の詳細については必ず直接にご確認下さい。

2003/05/15

『山と渓谷』2003年6月号

044 2003.05.30 ラフティング死亡事故 業務上過失致死罪で在宅起訴 日本では初めて

2003年05年29日、前橋地検は、ラフティングボートが転覆して1人が死亡した事故で、ラフティングツアーを企画した会社の元経営者の男性を業務上過失致死罪で在宅起訴した。

元経営者の男性は、2000年8月に他の1人とともにガイドとして乗客6人を乗せて急流を下った際に注意義務を怠り、ボートを岩に衝突させた。ボートが転覆し、乗客の男性一人が川に投げ出され死亡した、とのことのようである。ラフティング事故での起訴は日本ではじめてのケースのようだ。なお、日本では起訴された刑事事件の有罪確率は99パーセント以上となっているらしい。

2003/05/29

河北新報社

2003/05/30

時事通信

045 2003.05.30 道路管理者の京都市に120万円の賠償命令 歩道の鉄筋で骨折した観光客へ

2003年05月29日、新潟地裁で、京都市内を観光中に歩道に突き出た鉄筋につまずいて転倒して膝を骨折した女性が、事故は道路管理者の京都市の責任として、約250万円の損害賠償を求めた訴訟の判決があった。片野悟好裁判官は「市は鉄筋が露出しているのを知りながら、補修工事をしなかった。道路管理に過失があったのは明らか」として、約120万円の支払いを命じた。

2003/05/29

共同通信

046 2003.06.06 女性焼死事件 刑事裁判で無罪判決下る 民事では元交際相手の殺人認定で賠償命令確定ずみ

2003年6月2日、横浜地方裁判所で、93年冬に焼死した女性の死因について元交際相手による殺人であったとする刑事事件の判決があり、矢村宏裁判長は元交際相手の男性に対して、「女性に自殺の動機は乏しく、被告が女性の首を刺し、放火した蓋然(がいぜん)性が認められる」ものの、検察側が提出した鑑定結果には「信用性に合理的な疑いを入れる余地があり、犯罪の証明がない」と判断し、「被告人の供述は信用性が低いが、被告人を放火殺人の犯人と認めるには合理的疑いが残る」として、無罪を言い渡した。この事件は、刑事事件としては、一旦、不起訴になったものの、元交際相手の男性が女性を殺害したとして遺族が損害賠償を求めた民事裁判で「殺人」との判決が下されたのを受けて起訴されたものであった。

なお、民事訴訟では、横浜地裁、東京高裁ともに「殺人・放火」を認定し、最高裁も「女性に動機は乏しい」と自殺を否定して、元交際相手の男性に賠償を命じる民事判決は確定している。

元交際相手の男性は一貫して無罪を訴え、2003年6月2日付の読売新聞などによれば、「女性が心中をもちかけて自ら灯油をまいて火をつけ、自分の首を刺した。自分(男性)も死のうとして手首を切ったが死にきれず、火の熱さで逃げた。煙にまかれてしまい、飯島さんを助けられなかった」とのことである。一方、女性の両親や友人は「女性は、被告から暴力を受け、一緒に死のうと包丁で手首を切るよう命じられるなどしていた」「死にたくない、自由になりたいと彼女は言っていた。自殺するはずがない」とのことである。

2003年6月2日付の毎日新聞によれば、今回の無罪判決について両親は控訴を望んでおり、「何年かかっても、女性が(自殺を)していないことを証明したい。」とコメントした。一方、被告人弁護人は今回の刑事判決を当然の判決と評価し、「刑事は(民事より)厳格な証拠能力に従って判断される。結論に差があることはやむを得ない。刑事ではより詳細な審理がなされた。」「被告が殺したという前提に立って鑑定書が組み立てられている。裁判は鑑定書の信用性を巡る争いだった。一度不起訴にした事件を再捜査する場合、少なくとも人為的なものを証拠にするのはやめていただきたい。これは冤罪(えんざい)の構造だ。」とコメントしたようだ。

2003/6/2

読売新聞

毎日新聞

047 2003.06.06 屈斜路湖 カヌー転覆死亡事故 業務上過失致死傷容疑も視野に入れて捜査

2003年6月4日午後、北海道の屈斜路湖で、カヌー2隻が転覆して乗っていた男女4人が湖に転落し、女性1名と男性1名が死亡し、男性1名が意識不明の重体となった。男性1名(ユースホステル経営・カヌー観光も営業)は軽傷だった。弟子屈署は業務上過失致死傷容疑も視野に入れて捜査する意向のようだ。

2003/6/5

毎日新聞

048 2003.06.06 青森 捜索費用は遭難者側に負担をとの声 たび重なる遭難

東奥日報によれば、青森県では、捜索についてのコスト増加について、農作業を中断して捜索に当たる地元消防団員や消防団への日当を払う市町村などの関係者から、たび重なる出動にたいして、「遭難者側に負担を求めるべき」という悲鳴が上がっているようだ。県山岳遭難防止対策協議会黒石支部は(1)遭難が発生した自治体の消防団は初日のみの捜索とする(2)二日目以降の捜索は遭難者の地元の消防団と家族にお願いする-という措置に踏み切った。

2003/5/31

東奥日報

049 2003.07.09 水難事故が多発しているビーチの危険を知らせなかったのが事故の原因と提訴 両親と夫

2003年6月26日、ツアーに参加した成人女性が、タイのプーケット島で水死した事故は、「水難事故が多発しているのに、参加者に危険情報を伝えなかった」ことが原因であるとして、女性の両親と配偶者は、ツアーを主催した会社に1億4200万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。

2003/06/26

時事通信

050 2003.07.09 危険な投球フォームへの指導をすべきだった、として学校を提訴 打球で死亡した高校生投手の両親

2003年6月26日、野球部の投手だった高校生が練習試合中に、打球に当たって死亡したのは「投球後に視線が正面からそれる危険なフォームだったのに、学校側は何の指導もしなかった」など、行うべき安全対策を怠ったためとして、遺族は学校に約9700万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。

共同通信によれば、提訴後の記者会見で、母親は「安全と信じていた学校でなぜ息子が命を奪われたのか、原因を究明したい」とのべた。

2003/04/23

共同通信

051 2003.07.09 トランポリンの練習中の事故で大ケガ 高校生と両親が京都市を提訴

2003年7月7日、トランポリンで宙返りの練習をして頭から床上のマットに転落して大ケガをしたのは、1. 事故当日は中間試験の最終日で生徒は心身ともに疲れていた、2. 新体操の初心者だったのに、指導教諭が立ち会わず危険の伴う練習をさせた、3. 落ちたマットも古く柔軟性がなかった、などとして、ケガをした高校生と両親は、京都市を相手取り、約1億5700万円の損害賠償を求める訴えを京都地裁に起こした。

毎日新聞によれば、被告側は「誠に残念な事故であるが、部の顧問不在時に、生徒だけでは禁じられていた内容(宙返りなど)の練習が行われ起こった事故。訴状を検討し、今後の対応を考えたい。」と述べた。

2003/07/07

毎日新聞

052 2003.07.09 学校登山中の中学生 鳥取・大山で熱中症?で遭難 同級生ら約160人と日帰り登山の途中 

2003年7月8日午後、鳥取県の大山(1729メートル)で、登山中の中学生が突然倒れて意識不明となり、救助途中に熱中症?で死亡した。毎日新聞HPによれば、この登山は学校の夏期研修登山で、同級生ら約160人と日帰り登山の途中だったようだ。

2003/07/08

毎日新聞HP

053 2003.08.05 高校ヨット部事故 被告(県と船長)と遺族和解へ 被告と教諭(訴外)による350万支払いで合意

2003年6月25日、県立高校のヨット部員らが乗った監視船のボートが遊漁船と衝突して女子高校生部員が死亡した事故で、遺族が、県と遊漁船船長に損害賠償を求めていた裁判の和解が成立したことがあきらかになった。

県教委などに取材した共同通信によれば、遊漁船船長が200万円を支払い、被告に含まれていないが監視船の船長だった同校男性教諭が150万円を支払うことで和解が成立したようである。被告とならなかった訴外の教諭が支払いに応じたのは、「道義上の問題として和解金を支払うが、責任を認めるわけではない」とのことのようだ。

共同通信によれば、この事故で、双方の船長が業務上過失致死傷などの罪に問われ、遊漁船船長が同地裁で禁固1年、執行猶予3年の判決を受け確定。教諭は罰金50万円の判決を受けたが控訴。広島高裁で係争中らしい。

2003/06/25

共同通信社

054 2003.08.05 学校登山の小学生 下山途中につまづいて? 雄山山頂から滑落遭難

2003年7月21日、北アルプスの雄山山頂付近から、学校登山中の小学生が、頂上から約三メートル下 の地点でつまずき、御前沢(ごぜんさわ)側に約百五十メートル転落、さらに雪渓上を約 五百メートル滑落した。小学生は同日午後山岳警備 隊員に発見され、県警ヘリで病院に収容されたが死亡した。一行は、校長と引率教諭十人、六年生百十四人の計百二十 五人で、同日朝に室堂に到着し、山荘に荷物を置いた後登頂して、下山にかかった直後だったようだ。

2003/07/22

富山新聞

055 2003.08.05 政府 司法ネット構想を発表 法律サービスの大幅な拡充をめざして

読売新聞によれば、2003年7月29日、国民に対する法律サービスを大幅に拡充することを目指した政府の「司法ネット」構想の内容が判明したようだ。

1.ばらばらだった法律相談などのサービスを、国が統一的に担うのが特徴で、法律相談窓口を全国各地に設置する。サービスを提供する組織(仮称・リーガルサービスセンター)として、政府は新設の独立行政法人を想定し、リーガルサービスセンターの拠点として、法律相談窓口を都道府県の地方裁判所本庁所在地に新設。

2.弁護士が1人も存在しないか、1人しかいない「ゼロワン地域」にも重点的に相談窓口を配置する窓口には、事務職員のほか弁護士が常駐。一般市民からの相談を受け付け、その内容に応じて、弁護士会や司法書士会などを紹介する。

3.同センターでは、法律相談業務のほか、経済的に苦しい人を対象に民事裁判の弁護士費用などを立て替える、民事法律扶助事業を担う。また、資力が乏しく自ら弁護士を依頼できない被疑者や被告人に対し、公費で弁護人をつける公的弁護の業務も実施する予定。

そもそも、公開の場での裁判を受けることは、憲法の保証する僕たち市民の重要な権利の一つですから、話し合いがうまく行かなかった時や納得できなかった時には、この制度を積極的に使用すべき思います。裁判制度、特に民事裁判は、紛争解決のために国が僕たちに提供してくれるサービスなのだ、という認識は必要です。もちろん、やたらと権利を乱用すれば、それは「訴権の濫用」となってしまうのですけれど。

ポイントは、どこにその境界があるのか、ということなのでしょう。

2003/07/30

読売新聞

056 2003.08.05 北アルプス剱岳で落石直撃、自主登山中の女性死亡 前剣付近?

2003年7月15日午後、北アルプス・剱岳の前剱の大岩付近 を歩いていた女性(54)が上から落ちてきた石に頭部を直撃され即死した。女性は前日に山岳会の登山仲間三人とともに立山・室 堂から入山し、二人で剱岳を目指したが、カニのタテバイとヨコバイ付近で登頂を断念して引き返す途中だった。

登山中の落石事故であっても、その原因が極めて人為的なものであった場合には、損害賠償請求の対象となるケースがあるかもしれません。経験者同士の自主登山中の落石事故でも、滝谷のC沢を下降中の落石事故・夏の白馬大雪渓での落石事故・小川山のガマスラブ懸垂下降中での落石事故、これらにおける法的責任はかなりの差があるように思いました。

2003/07/15

富山新聞

057 2003.08.05 言葉のいじめで退職に追い込まれたと訴え 賠償金約2億円の判決下る イギリス

2003年7月31日、退職に追い込まれたのは上司の言葉によるいじめが原因として元社員が損害賠償を求めた訴訟で、ロンドンの高等法院は、会社に約1億9400万円の支払いを命じる判決を言い渡したようだ。被告は控訴する方針で、この上司はいじめを否定するコメントを発表した。

2003/08/01

共同通信

058 2003.08.05 久住山での学校登山における児童遭難で 毎日新聞大分支局長 校長の発言?を批判 署名コラムで

2003年7月28日付けの毎日新聞HPで、久住山での学校登山児童遭難と救出についての『[大分つれづれ]児童の遭難に思う/大分』という題のコラムを読みました。以下はその引用です。

「・・・遭難がわかると、校長は6年生たちに「こう(行方不明)なったのはお前たちのせいだ」と、児童たちに遭難の責任を押し付けるような発言をしたという。
校長として、教育の指導現場にいるトップの言葉とはとても信じられない発言である。児童たちによると「取材にはしゃべってはいけない」と口止めされたという。しかし、児童の多くは帰宅後、校長の話を保護者にしていた。
校長は、わが社の取材に「そんなことは言っていないと思う」「はっきり覚えていない」と言を左右している。あきれてものが言えない、とはこの事。こんな指導者に子どもを託していいのだろうか。根本が間違っているような気がしてならない。
松本君が無事に救助された後、複数の児童たちからは「先生に山のことは、しゃべっちゃいけんと言われている」「全員の連帯責任と言われた」「班行動をせんお前らが悪い、とか言われた」との証言が次々と出ている。中には「校長先生は変じゃった」と言いきる児童もいたという。・・・」

読了して二つの思念が浮かびました。1)もし、校長の発言が正確な事実なら由々しきことだ。2)もし、校長の発言が不存在であるか、あるいは校長の真意が不正確に伝播したものだったとしたら、由々しきことだ。

もちろん、取材は念入りに行われ、校長本人や校長の発言を聞いた児童にも直接確認した上での記事なのだとは思うのですが、自分の事故も含めていくつかの遭難にかかわって感じることは、事故時には情報が錯綜してしまい、なかなか正確な事実が伝わらないことが多い、ということです。

よって、「必ずあらゆることをメモに残し、5W1Hをしっかりと記載しておかなければならない。」という教えは、やはり鉄則です。

もし遭難事故の当事者となってマスコミなどの取材を受けることになった場合は、将来の事故報告書作成などでの正確性を期すためにも、基本的には文書にして渡すべきと思います。もし作成が間に合わない時は、相手の許可を得た上で、取材時の会話を録音したりビデオ撮影しておくとよいでしょう。事故時には電話取材も多いのですが、「言った、言わない論争」を回避するためにも、会話を録音する慎重さが事故対策本部には必要です。この時に、相手方の名乗りや日時が録音されていればベストです。

2003/07/28

毎日新聞

大分ニュース

059 2003.08.05 水泳授業の飛び込み事故 4400万円の賠償命令 説明不十分との理由

2003年7月30日、水泳の授業中にプールに飛び込んだ際、底に頭を打って死亡した高校1年生の両親が、事故はプールの構造などに問題があったとして、都を相手取り、約1億円の損害賠償を求めた訴訟の判決があった。裁判所は、「指導教諭が飛び込みの危険性を説明していなかった」などとして指導者側の法的過失を一部認め、都に約4400万円の支払いを命じる判決を言い渡した。しかし、水深が不十分だったことなどプールの構造を事故原因とする両親の主張は退けた。

事故は、1999年6月に発生したもので、指導教諭の指示で、スタート台から飛び込んだ際、水深1メートル強のプールの底に頭をぶつけて首の骨を折り、11日後に死亡した。

2003/07/30

読売新聞

060 2003.08.05 裁判の弁護士費用を敗けた方が両者分を支払う「弁護士報酬の敗訴者負担制度」について 国民の意見募集中

政府の司法制度改革推進本部が「弁護士報酬の敗訴者負担の取扱い」についての市民の意見の募集を9月1日17時必着で、行っている。この制度の是非について、有識者における賛成者と反対者の意見はまっぷたつで調整がつかないため、国民の意見を聞いてみようと言うことになったようだ。詳細は下記へ。

「弁護士報酬の敗訴者負担の取扱い」についての御意見募集について

「弁護士報酬の敗訴者負担」とは、裁判に負けた方が、自分の弁護士費用だけではなく、相手方の弁護士費用も支払う制度のことで、現在この制度の導入をめぐって激しい議論の真最中なのである。

、賛成者は「この制度で、市民がこれまで裁判費用がなくて泣き寝入りしていた人が、弁護士費用が相手方持ちならと裁判に踏み切りやすくなるとしている」と主張し、反対側は「裁判には、医療過誤、薬害、環境訴訟など、勝つか負けるかわかならくても、やらなければならないものがある。この制度によって、このような裁判が起こせなくなる」と主張している。

この制度が導入されると、絶対に勝てる見込みがない場合はOKだが、そうでない場合は、よほど金銭的に余裕がないかぎりは、かなりのプレッシャーとなることは否めない。まだ検討が不足しているが、現在の時点では制度の導入はやめた方が良いのでは、と考えている。不当に提訴された場合は、新たに損害賠償請求裁判を起したり、反訴したりできるのであるから。

2003/07/29

毎日新聞

061 2003.09.18 ニューヨーク 「肥満はマクドナルドハンバ-ガ-のせい」訴訟 再提訴も却下 

2003年9月4日、ニューヨーク米連邦地裁は、「肥満は、ハンバーガーなどを健康な食品と消費者に誤解させたマクドナルドハンバ-ガ-の責任」として糖尿病や心臓病などの症状がある肥満児らが、マクドナルドに損害賠償を求めた2回目の訴えを却下した。

2003/09/05

共同通信

062 2003.09.18 白神山地 講習生沢に転落して遭難 ビジターセンター主催のトレッキングツアー中

2003年8月24日、県白神山地ビジターセンターが主催したトレッキングツアーに参加していた男性(63)が約三十メートル下の沢に転落した。転落した箇所の道幅は肩幅程度で、左右両側ががけとなっていたようだ。このツアーには、二人のガイドとセンター職員なども同行していた。コースは過去二回と同じで「初級から中級のレベル」。同センターは今後のツアーを中止するようだ。

2003/08/25

東奥日報

063 2003.09.18 大日岳事故訴訟 第5回口頭弁論開かれる

2003年9月10日、大日岳事故訴訟の第5回口頭弁論が富山地裁で行われた。準備書面の陳述と正確なルート選定のために大日小屋を確認すべきだったかどうかについてのやりとりなどがなされたようだ。次回は12月17日午後2時より富山地裁1号法廷の予定。遺族は人分の署名を提出した。

2003/09/11

毎日新聞

HP「大日岳遭難事故を考える」

064 2003.09.18 岳人10月号掲載の「登山における法的責任」は必読 著者はクライマー&弁護士

2003年9月発売の岳人10月号No.676に「登山事故における法的責任」という題で、広島山岳会会員の溝手康史弁護士の考察が掲載されている。内容は、まず法的責任が発生する場合を、登山形態によって7つのカテゴリーに分類して例をあげながら解説。ついで、法律上のトラブルを少しでも回避するための方策として、1.危険性の説明義務、2.責任の範囲の明確化、3.損害賠償責任保険について言及している。登山と法律の両者に精通した著者の考察は貴重である。営利型や引率型の登山の主催者はもちろんだが、自主登山をおこなうすべての登山関係者に必読と思われる。なお、あわせて、辻次郎判事の「登山事故の法的責任」(判例タイムス997,998)の通読をすすめたい。

岳人2003.10月号
065 2003.09.24 高校山岳部2教諭 書類送検 業務上過失致死の疑い 山岳部部活中の水難事故

2003年8月20日、県警は、静岡県の富士川で山岳部部活中の県立高校2年生が川で泳いでいて水死した事故で、山岳部を引率していた顧問の男性教諭2人を業務上過失致死の疑いで書類送検した。事故は昨年6月に富士川河川敷でのクライミング練習中の休憩時に発生した。共同通信によれば、同署は過去にも富士川で死亡水難事故が相次いでいることから、事故は予測可能だったと判断した。

2003/08/20

共同通信

066 2003.09.24 学校登山で引率教諭への安全講習会実施へ 来シーズンから 今夏の雄山小学生転落事故を受けて 

2003年9月19日、富山県県教委は、今年7月の雄山での学校登山で小学生転落事故を受け、来年度から引率教諭を対象に事故防止のための安全講習会を登山専門家の指導の元に実施する方針を明らかにした。

毎日新聞によれば、講習会は、文部科学省登山研究所(立山町)にも随時アドバイスを求めつつ、県山岳連盟のベテランメンバーを講師に、引率教諭全員の参加を検討。立山での現地研修も行う予定のようだ。これまでは、天候や児童・生徒の健康状態、登山道の様子について把握し、安全確保に努めるよう通知するに留まっていたようだ。なお、立山での学校登山は例年約90の小中学校が7~8月の夏休み期間中に実施している。

2003/09/20

毎日新聞

067 2003.09.24 日航709便事故 事故報告書の証拠採用をめぐって対立 事故調査委員証人尋問へ

2002年の047でも報告したが、航空機の大揺れ事故で、機長が業務上過失致死傷罪で在宅起訴されて、現在名古屋地裁で係争中の裁判で事故調査委員会の調査報告書を証拠として採用するかどうかで検察と弁護両者の対立が続いている。

弁護側の主張は、証拠採用は国際条約違反で、関係者は「個人の刑事責任が追及されるようであれば、パイロットは自己の利益を優先して、正しく証言しなくなり、再発防止策を探ることができなくなる」というものだ。2003年9月24日の中日新聞朝刊によれば事故調査委員の証人尋問が実施されるようだ。

もちろん、登山事故では「本当のことを書けば法的責任を免除する」というような免責規定はないので、登山事故報告書が裁判の証拠として使用されるケースが増加すれば、報告書作成作業に大きな影響を与えることは否定できないように思う。

2003/09/24
068 2003.09.29 大学生 窓ふき中の転落事故 国に4788万円の賠償命令 名古屋地裁

2003年9月25日、名古屋地方裁判所で、大学三年生が年末の恒例行事で大学校舎3階の窓ふき中に、ひさし部分から転落した事故で、学生の両親が国に対して約8296万円の損害賠償を求めた裁判の一審判決があった。裁判長は1)「ひさしの構造を考えれば転落は予測できた」、2)「清掃活動は年末の恒例行事で教官も参加して毎年行われており、大学の安全配慮義務が及ぶ」として、国の法的責任を認定して4788万円の支払いを命じる判決を言い渡した。国側は「清掃は学生の自主活動で、危険性もなかった」と主張していた。

20003/09/26

朝日新聞

069 2003.09.28 法制審議会・法改正の中間試案 ネットで提訴を可能に

2003年9月12日、法制審議会の民事訴訟・民事執行法部会は、提訴などの手続きがインターネットでできる制度を新設する法改正の中間試案をまとめた。来年初めにも要綱案を取りまとめ、来年の通常国会に民事訴訟法と民事執行法の改正案を提出する予定のようだ。

試案では、現在は書面による申し立てが定められている手続きのうち、提訴や保全、民事執行などの申し立てについてインターネット利用を認め、申し立ての到達時期は、電子データが裁判所が使用するコンピューターの中のファイルに記録された時点になるとのことである。

進行中の司法制度改革は、市民が裁判を紛争解決の手段として積極的に利用する社会を志向していると受け止めるべきように思われる。何年かすると「裁判」という言葉のもつネガティブな意味合いは払拭され、同時に「裁判沙汰」という言葉は死語になっているかも知れない。

2003/09/12

毎日新聞

070 2003.09.28 新入生歓迎コンパ飲酒事故 不起訴処分は「相当」 検察審査会判断 熊本大医学部漕艇部 

2003年9月24日、熊本検察審査会は、熊本大医学部漕艇部の新入生歓迎会で大学生が飲酒後に急死した事件で、漕艇部の上級生ら16人を不起訴とした熊本地検の処分を「相当」と議決した。毎日新聞によれば、死亡した大学生の家族の一人は「わずか数カ月でどれだけの審査がなされたのか。真実は民事裁判で明らかにしたい」と話した。

検察審査会の議決までの経緯は以下の通り。1)死亡した学生の家族が部長の教授と上級生ら16人全員(共に新入生歓迎会に同席)を熊本北署に告訴、2)熊本北署は保護責任者遺棄致死などの疑いで熊本地検へ書類送検、3)熊本地検は「酔いつぶして意識混濁にしようなどといった上級生らの悪意の共謀は認定できなかった。故意犯としての立証は困難」という判断の元に、嫌疑不十分として不起訴処分を決定、4)家族はこの不起訴処分に納得せず検察審査会に不服申し立て(本ニュース012&013参照)

なお、この民事裁判については「熊本大学医学部漕艇部HP」に両者の主張が掲載されている。

2003/09/27

毎日新聞

071 2003.09.28 事故原因は子供がなげ損なったボールの胸へ直撃と 遺族 両親を提訴

2003年9月28日の毎日新聞HPによれば、公園で小学生同士がキャッチボールをしていて、投げ損なった軟式野球ボールがその公園で遊んでいた他の小学生の胸を直撃し、この小学生(心臓などの持病はなかった)は意識不明となり病院に運ばれたものの治療が効を奏さなかった事故について、遺族は、事故の原因は胸に受けた衝撃が突然の死を招く心臓震盪(しんとう)だったとして、仙台地裁にボールを投げ損なった児童の両親に対して約6000万円の損害賠償請求訴訟を近く仙台地裁に提訴するようだ。

2003/09/28

毎日新聞

072 2003.10.12 ダイビングインストラクター 書類送検 ダイバー水死の業務上過失致死容疑

2003年10月1日、今年4月のスキューバダイビング中の死亡事故で、指導したインストラクターを業務上過失致死容疑で書類送検した。

これは、あくまでも根拠のない感覚的な感想ですが、営利目的のスクール中での死亡事故が、業務上過失致死容疑で書類送検される割合は増加しているのではないでしょうか・・・。

2003/10/01

時事通信

073 2003.10.12 裁判官への意見の窓口新設 意見を裁判官の人事評価に反映させる 最高裁方針発表

2003年10月3日、最高裁は、裁判官の人事評価制度見直しの一環として、裁判官への苦情や意見を、裁判の当事者や事件の被害者からも広く受け付け、裁判官の人事評価に反映させる方針を固めた。ただし、実名で情報提供してきた場合で、匿名情報は原則として評価に反映させないとのことである。早ければ来年度から実施されるようだ。

2003/10/03

読売新聞

074 2003.10.21 山岳ガイド 書類送検 登山ツアー中のツアー客凍死についての業務上過失致死容疑で

2003年10月20日、昨年7月の北海道の大雪山系トムラウシ山(2141メートル)で昨年7月、台風接近中に登山ツアー中の女性が頂上付近で凍死した事件で、元登山ガイドを業務上過失致死容疑で書類送検した。

読売新聞によればね警察が送検した理由は、1、元登山ガイドが台風の接近を知りながら上級コースの登山を始めた2、途中の沢がひざまで増水していたにもかかわらず引き返さなかった、3、ビバーク用の大型テントの用意がなかったことなどにあるようだ。

2003/10/20

時事通信

読売新聞

075 2003.10.21 名古屋地裁 飛行機事故の事故調報告書を証拠採用 報告書作成への影響は必至

2003年10月15日、名古屋地裁の石山容示裁判長は、日本航空機が乱高下し乗客乗員14人が死傷した事故で業務上過失致死傷罪に問われた機長の刑事裁判で、検察側が求めていた当時の運輸省航空事故調査委員会(現国土交通省航空・鉄道事故調査委員会)の報告書を証拠として採用することを決めた。時事通信によれば、「事故調発足以来、報告書が証拠採用されたのは初めて」とのことである。

登山事故報告書については、特に、証拠採用についてのハードルはない。しかし、もし登山事故裁判が増加して、登山事故報告書がそのつど証拠として提出され、その記載を根拠に、法的責任が追求されたり認定されるようになれば、登山事故報告書の作成自体そのものに影響を与えかねないように思う。

2003/10/15

時事通信

076 2003.10.21 肺がんはJTの法的責任との「たばこ病訴訟」 原告の請求を棄却 東京地裁

2003年10月21日、東京地裁は、がん患者らが、喫煙によって病気になったとして、国やJTに計6000万円の損害賠償とたばこ広告の差し止めなどを求めた訴訟の判決があった。浅香紀久雄裁判長は、「ニコチンの依存性は、喫煙者の自由な意思決定を奪うほど強くない」と述べ、請求を棄却した。

原告の請求は、読売新聞によれば、「たばこの有害性を知らされず、喫煙を続けたことが原因で発病したと主張。JT側には「消費者に正しい情報を提供しないまま販売を続けた」とし、国には「違法な販売を放置した」として、たばこ広告の差し止めや、「発がん性がある」と明記することなどを求めていた。」とのことで、原告側からは「アメリカなどに比べ、30年前のような判決だ」との批判が、弁護団長の伊佐山芳郎弁護士は、「国際的な知見から著しく遅れた判決で、遺憾だ」と不満をあらわにした」とのとである。

訴訟王国アメリカで、タバコの有害性についての告知が足りなかったとしてタバコ会社に何兆円もの支払いを命じる評決が行われた事例があるのは事実であるが、すべてをアメリカと共にしなければならないわけではないので、「遅れている」や「30年前の判決」との批判には疑問を感じる、もちろん判決を読まないと正確なコメントはできないが。いずれにしろ、「肥満になったのはマクドナルドに法的責任あり、と提訴する現在のアメリカ社会の方が間違っているのでは、」という視点は重要ではないだろうか。

2003/10/21

読売新聞

077 2003.11.04 学校水泳事故 市に1億7500万円支払い命令 福岡地裁

2003年11月28日、児童が水泳クラブの練習中にでおぼれて、身体障害等級1級の後遺症を負った事故で、児童と両親が市に対して、約2億3300万円の損害賠償を市に求めた訴訟の一審判決が福岡地裁小倉支部であった。川久保政徳裁判長は担当教諭2人の過失を認定し、市に約1億7500万円の支払いを命じた。なお、事故は2001年に発生した。

一方、刑事責任については、警察が2003年8月、教諭の2人を業務上過失傷害容疑で福岡地検小倉支部に書類送検している。

2003/10/28

毎日新聞

078 2003.11.04 中学生落石事故での中学教諭らの不起訴処分 不起訴は相当との議決 検察審査会

2003年10月21日、岐阜検察審査会は、学校行事で野外学習中の中学生らが雨天の林道をハイキング中に落石を受けて6人が死傷した事故(2001年6月)で、業務上過失致死容疑で岐阜地検に書類送検されていた引率教諭ら7人の不起訴処分(2003年3月)を不服とした遺族からの審査申し立て(2003年5月)について、「不起訴処分としたことは相当である」と議決した。理由については、毎日新聞によれば、岐阜検察審査会は「教諭らが現場を調査していたとしても、落石の危険を予測できたかについては疑問が残る。当時の小雨と風が落石を誘発したと推定はできるが、実際に小雨が落石を誘発したとは断定できず、教諭らの過失を問うことは困難と判断した。」と判断したとのことである。

遺族は、毎日新聞によれば「『誰も責任を問われないのは納得できない。市を相手取った民事訴訟も検討する』と話した。」とのことである。

2003/10/23

毎日新聞

079 2003.11.04 ラフティング死亡事故 ガイドに有罪判決 禁固1年6月 執行猶予3年 国内初

2003年10月29日、前橋地裁は、ラフティング中での客の死亡事故で、引率ガイドの男性の業務上過失致死罪を認定し禁固1年6月、執行猶予3年(求刑禁固1年6月)の判決を言い渡した。吉井隆平裁判官は「ガイドとして乗客を指導・引率すべき立場にあったのに操船技術を過信、安全確保を怠った。刑事責任は重いが遺族に謝罪、廃業するなど酌むべき事情もある」と述べた。 (事故の概要は本ニュースの044参照)

2003/10/29

共同通信

080 2003.11.04 女児水死は県が安全対策を怠ったことにも原因あり 県に100万円の支払い命令 控訴審1審判決を変更

2003年10月31日、高松高裁は、水遊びをしていた女児(当時11歳)が水死したのは、川を管理する県が安全対策を講じなかったためとして、両親が慰謝料など約5700万円を県に求めた損害賠償の控訴審判決があった。松本信弘裁判長は「県はえん堤の危険性や危険回避措置について、周知、徹底する義務を怠った」と、遺族の請求を棄却した1審の高知地裁判決を変更して、県に約1100万円の支払いを命じた。

ただし、「松本裁判長は、事故当時、木川は台風の通過などに伴い増水しているにもかかわらず、遊泳をしていた女児にも過失があるとした」ことから、かなり大幅な過失相殺を行って賠償額を算定したと思われる。

2003/11/01

毎日新聞

081 2003.11.04 自動車レース事故 主催者側に9000万円賠償命令 免責同意書も無効と認定 東京地裁

2003年10月29日、東京地裁は、全日本富士GTレース大会で、追突事故に巻き込まれたレーサーの男性が主催者側に約3億円の損害賠償を求めた民事訴訟で、主催者側に約9000万円を支払うよう命じた。小野剛裁判長は「先導車の急減速により事故が発生した。適切な消火救助活動を整えなかった過失もある」と指摘した。

判決は、事故は「時速60キロで走るべき先導車が約150キロで走った後、急減速した結果、後続のレーサーらが減速を強いられたため発生した」とし、事故の救助のための「人員が適正に配置されていなかった」ことにも過失がある認定とした。

なお、レーサーは「レース中の事故について損害賠償請求を行わない」とする免責同意書を提出していたが、裁判所は「過失により重大な事故が発生しても責任を負わないとする文書は著しく不当・不公平で公序良俗に反するから無効」と誓約書の有効性を否定した。

2003/10/29

毎日新聞

082 2003.12.13 検察審査会の「起訴相当」2度で起訴義務付け試案 裁判員制度・刑事検討会

2003年11月11日、政府の「裁判員制度・刑事検討会」(座長井上正仁・東大教授)は、刑事裁判で検察官が下した「不起訴処分」が妥当かどうかを判断し、「起訴相当」or 「起訴不相当」を議決する検察審査会制度の見直し試案を公表した。

ポイントは、検察審査会の議決に法的な拘束力がなかった点を改め、同じ事件で2度「起訴相当」の議決が出た場合、容疑者は必ず起訴される仕組みを構築しようとする点である。

読売新聞によると、座長案は、まず、検察側が不起訴処分とした事案を、審査会が11人の審査員のうち8人以上の賛成によって「起訴相当」しした時、検察側はまず処分を何らかの形で見直す義務を負う。次に、検察側が再捜査し、もう一度、不起訴処分or3か月以内に起訴しなかった時、審査会の再度審査で再び「起訴相当」の議決に達した時、この結果は管轄の地方裁判所に連絡される。裁判所は起訴の手続きを行う「検察官役」の弁護士を選任。この弁護士が公判への立ち会う。というもののようだ。

2003/11/12

読売新聞

083 2003.12.13 中学生机上の椅子からの転落事故 学校の責任否定 原因となった中学生の責任のみ認定 控訴審判決

2003年11月12日、名古屋高裁金沢支部は、中学校での昼休み中に、教室のカーテンのフックの外れを直そうと、机の上に椅子を重ね、その上に乗った中学生が、他の生徒がこの椅子を蹴ったために、転落して割れた窓ガラスが脚に刺さり約2カ月後に死亡した事故で、遺族が、学校を管理する町と椅子を蹴った生徒に約9300万円の損害賠償を求めていた控訴審の判決があった。

長門栄吉裁判長は、男子生徒に約4170万円の支払いを命じた。しかし、町などについては、町などには責任はないとした1審判決を支持して、遺族の控訴を棄却した。その根拠として、1、男子生徒が女子生徒の立っていた椅子をけるという行動に出ることを(担任の教諭が)予見することは困難だった、2.養護教諭の応急処置は原則に従った相当な方法だった、3.カーテンの管理に何らかの不具合があったとしても、事故との間に因果関係があるとはいえないと述べた。

毎日新聞によれば、控訴人の1人は「これでは安心して子どもを学校に行かせられない。子どもを守るのも学校ではないのか。上告は弁護士と相談するが、到底納得できない判決だ」と話したということである。なお、控訴審の主な争点は、以下のようであった。

  • 男子生徒が椅子をけったのは、級友からのいじめが高じたものだったか
  • 男子生徒に死亡事故を予測できたか
  • 学校はカーテン管理について注意義務があったか
  • 養護教諭らの応急処置が適切だったか
2003/11/13

毎日新聞

084 2003.12.13 裁判外紛争処理(ADR) 法制化へ 司法制度改革推進本部

2003年11月17日、司法制度改革推進本部は、民事上の争いを第三者が仲裁・調停して解決を図る裁判外紛争処理制度(ADR)についての基本法を制定する方針を示した。

司法制度改革では、2年以内の判決をとの目標を掲げて、裁判の迅速化が試みられている。しかし、2年でも長いというケースでは、ADRがうまく機能すれば紛争のより迅速な解決に役立つと思われる。

なお、毎日新聞によれば、守秘義務や、申し立てによる時効中断の規定なども盛り込まれているようだ。また、弁護士以外の人の法律業務を禁じた弁護士法の適用除外対象とする意向のようだ。

2003/11/17

毎日新聞

085 2003.12.13 谷川岳遭難防止条例違反容疑で書類送検 マチガ沢に無届入山した登山者 25年ぶり

2003年12月2日、警察署は、谷川岳マチガ沢に無届けで登山したとして、男性3名を谷川岳遭難防止条例違反容疑で、書類送検した。

毎日新聞によると、男性3人は登山届を提出せずに、9月15日午前5時半ごろから、同沢の岩場コースを登山したが、男性が滑落して県防災ヘリで救助されたために無届けが発覚したとのことである。同条例違反での送検は、78年に3件5人が書類送検されて以来25年ぶりとのことである。

2003/12/03

毎日新聞

086 2003.12.13 高校ヨット部員死傷事故 ヨット部顧問&監視船船長の高校教諭に逆転無罪判決

2003年12月9日、広島高裁は、高校のヨット部員らが乗った小型船と遊漁船が衝突して女子部員2人が死傷した事故で、業務上過失致死傷罪などに問われていた同高ヨット部顧問の男性教諭(小型船の船長を務めていた)に無罪を言い渡した。久保真人裁判長は「衝突を予見し回避する可能性があったと認めるには合理的な疑いがある」と述べ、罰金50万円とした1審広島地裁判決を破棄した。なお、遊漁船船長はすでに有罪が確定しているようだ。

2003/12/09

時事通信

共同通信

087 2003.12.13 裁判の迅速のための検討会設置へ 最高裁判所

2003年12月3日、最高裁は、7月に施行された裁判の迅速化に関する法律(裁判迅速化法) 受けて、裁判が長期化する原因を調査・分析するための「裁判迅速化検討会」を発足させると発表した。

裁判の迅速化に関する法律の当該条文は以下の通りである。

第二条 裁判の迅速化は、第一審の訴訟手続については二年以内のできるだけ短い期間内にこれを終局させ、その他の裁判所における手続についてもそれぞれの手続に応じてできるだけ短い期間内にこれを終局させることを目標として、充実した手続を実施すること並びにこれを支える制度及び体制の整備を図ることにより行われるものとする。

第八条 最高裁判所は、裁判の迅速化を推進するため必要な事項を明らかにするため、裁判所における手続に要した期間の状況、その長期化の原因その他必要な事項についての調査及び分析を通じて、裁判の迅速化に係る総合的、客観的かつ多角的な検証を行い、その結果を、二年ごとに、国民に明らかにするため公表するものとする。

2003/12/03

毎日新聞

088 2003.12.13 転倒死亡原因はバス発車にあり 市に1000万円賠償命令 京都地裁

2003年11月14日、京都地裁は、市営バスから降車した男性が、転倒し、その後死亡した事故について、「男性は歩行障害でつえを突いており、転倒は予測できた」し、バスが止まっていれば「男性はもたれかかっていたはず」として、バスの発車と転倒との因果関係を認め、市に計約一千万円の支払いを命じた。

2003/11/14

時事通信

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